よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

あるべき組織と人の関係性

目的を達成し易くするために人が組織をつくります。業種や仕事の内容にもよりますが、事業を始めた人が仕事を進めるとき、自分一人で目的や目標を達成することが難しいとき、その都度に必要と思われるスキルをもつ人を確保します。

 

当初からの必要があり、メーン業務において仕事の質を高めたり、量をこなすために人が採用されます。さらに、当初はメーンの業務でスタートしても、事業規模に合わせてメーン業務を支援する業務充実への要求が高まり、システム化や外注化の選択肢とともに人員増が図られることも通常です。経年により組織が成長していく過程です。

 

そうして拡大する組織においては、ボード、マネージャー、スタッフ(以下メンバー。自立はあらゆる階層に求められています)問わず経験を積み知見を得てスキルを向上させていきます。周りを見たり過去を振り返ると修羅場を経験したことが多い人ほど力を付けている印象があります。

 

彼らは個として自立し、環境変化に柔軟に対応できる人が単に同じ組織でやり取りしながら一緒に働く(形式的連携)だけではなく、各々の分野における高いスキルを持ち、役割や機能を果たすとともに、連携し、相互学習や不足を補い合うことで改革や新たな価値創造(実質的連携)を行います。

 

ここで自立とは、他からの支配や助力を受けず存在していることをいいます。常に向上心をもち、必要な技術を身に着けるとともに、常に改善や改革を進め生産性向上や価値創造を行ない、他から求められる人、が自立の要件を満たしています。

 

支配や助力を受けずに自立し組織とフラットな相互関係をつくる力のあるメンバーを数多く生み出し、メンバー間、社外間の実質的な連携を誘導することで組織はどのような環境においても成長し続けることができると考えているのです。

 

メンバーによる自立と(実質的な)連携の帰結として、事業の質が向上し、さらに量の拡大が起こるという循環が生まれます。組織に帰属する人が自立し協働がうまくいけばいくほど高い成果は得られ、組織成長の速度は高まり、組織も人も多くのベネフィットを享受できます。

 

組織の自立したメンバー相互の連携で得られる成果は、組織がないときと比較すると大きなものがあります。

なお、組織があっても

  • 自立したメンバーが少ない組織
  • 自立したメンバーがいなくても連携はとれている組織や
  • 自立したメンバーがそこそこいても連携が生まれづらい組織

があり、自立や連携を促すマネジメントが重要です。

 

自立したメンバーが少なく、連携もとれないときには、限られたメンバーによる成果により組織が牽引される傾向にあり、自立したメンバーの属性に経営の動向が大きく影響を受けます。

 

また、自立したメンバーがいなくても連携はとれている組織では、自立していないメンバーでも連携という形式はとれ一定の決められた範囲内で一緒に仕事はできるものの、自立していないメンバーからは感化や啓発や鼓舞もされず、ひらめきや刺激も与えられません。連携によるルーチンはうまく進んだとしても、決まったことの繰り返しを行う現状から脱却できず、環境変化への対応が難しく事業の持続性への確率が低下します。

 

さらに、自立したメンバーがそこそこいても連携が生まれづらい組織では、数多くあるエンジンが大きな成果を生む可能性は高くなるものの、エンジンコントロールに多大な労力を消費するとともに、彼らからのシナジーや相互支援による価値創造や革新を生みづらい傾向にあります。

 

自立のためのマネジメントや連携を促すマネジメントが必要な所以です。

 

  • 組織あり方や目的をミッションやビジョン、バリューにより内部に明らかにするとともに、外部にも自社の戦略をパーパスとして示し共感を得ること
  • 業務フローの見直しや生産性向上の取組みを継続すること
  • 明確な組織目標を設定、フィードバックを前提としたガバナンスを怠らず、組織目標達成のプロセスでコミットメント(約束)により掘り起こされた「一人ひとりのやりたいこと」の達成支援を行うこと
  • 各リーダーは率先して信頼と協調を生む組織文化を醸成すること

といったマネジメントが必要です。

 

人は一人で事業を行うこともできますが、組織に帰属することで多くのことを学び成長できます。

  • まずは自分が何をしたいのか、そのためにはどのような経験やスキルが必要なのかを想定し、組織で活動しながら依存せず、自立できる自分をつくる
  • 信頼を得て実質的な連携を行い成果を得る
  • そのプロセスにおいて得たすべてを以て組織に還元する

ことが人として成長できる最も効果的な方法であると考えています。

 

組織と人の関わりには、一つの組織でステージを高めながら成長することや、また、力をつけて求めるもののためにあるときには組織を移り、さらに自立し人から求められて他の組織で活躍する、といったステップを踏んでキャリアを積み自分の目的を達成すること、そして起業の道を選択することなどさまざまなバリエーションがあります。人にとり、組織が如何に大切な存在かがよく理解できます。

 

そこで必要なことは、組織にいながら面従腹背したり、漫然と組織に従属し何もしなかったり、またはできる範囲で仕事に関わり楽をして時を浪費するのではなく、どのような仕事も厭わず率先して実践し、常に自立して実質的に連携しながら組織や社会に貢献しつつ、自分の思いを達成していくこと。これからも挑戦を続けていきたいと考えています。