よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

本当の地域連携(2)

 地域連携について究極の方法はなんでしょう。

 昨日お会いした私どものクライアント(私の監査法人で監査をしている会社です)で、建築関係の会社の社長は、『売上倍増計画ができました』と嬉しそうにお話されていました。その会社が社長が30代のときに設立して10年ほど経過していますが、この7年程度私のクライアントになっています。
 その会社は熱海に研修所があり、そこで営業マンのトレーニングをしています。全然売れない営業マンがあっという間に売れる研修を社内でしていました。それはその社長がいろいろなセミナーで体験し、自らが頑張り、あらゆる仕事を通じて今の仕事を成功した体験や方法を他の幹部とともに体系化し、研修所で教えているものです。もとからいつも明るく、心に曇りなく、そして創造的な仕事をしてきていますが、その社長でさえ、環境変化や競合、あるいは社内の幹部の離脱といったことが続き、増収ではあるものの減益というありさまになっていたなかで、社長が始めたことでした。しかしさらにそのうえで、社長が新たな人を数人紹介され、彼らにさらに啓発されたということが今回のお話だったのです。社長は、『これはある保険会社の○○さんが導入して全国一のチームをつくり、そして○○さんはさらに転勤した場所でも全国一位になった方法なんですよ』と続けました。
何人も何社も、一人の問題ではなく、チームや組織全体が変わるんですとも話をしていました。

 それはどんな方法ですかと身を乗り出して聞くと社長は、『人のために仕事をするんです』と説明されました。え…あ、当たり前ジャンと一瞬思いました。私たちも私が某銀行のコンサルティング部に所属していたとき、上司から、客のためにだけ働け、取引のことは考えるな、といわれて育ったからです。

 彼曰く『技術を磨いて取引先のために尽くすことが人生である、そうすれば成果はおのずとついてくる、金のことは心配するな』

 これは私たちコンサルタントを大いに感動させ、たくさんの人が仕事を究極までしはじめました。
いいか悪いか、家に帰らず銀行の取引先のためにコンサルティングをはじめたのです。
 多くの取引先に喜んでもらい、たくさんの成果をあげました。今多くのスタッフが銀行を巣立ち、大会社やベンチャーのトップや幹部になっていますが(いまでもコンサルティング部は50名近いスタッフを抱え大きな仕事をたくさんしています)、そんな一言が私たちを仕事に奮い立たせていたのです。

 でもその社長の話を聞いて思い返しました。本当に徹底してそれをしていただろうかと。話をしている社長はニコニコしながら、過去にも随分人のために仕事をしよう、喜んでもらおうという話をしてきた社長が、さらに『人のために仕事をできるようになれば、絶対に売上は倍になるんですよ』と自信をもっていっている姿に、本当にそうしていたのかと少し不安に思ってしまいました。

 医療は、そうした気持がなければ絶対にできない仕事であると思います。しかし、どこかに制度改正や
マネジメント、そして成果ということを重視しすぎるあまり、原点をはずしていることがないだろうか、と考えてしまったわけです。地域連携は、本来は、病院がブランドな病院となり、そこではじめて地域住民から必要な病院として認められ、患者さんが自然に集るようになる、ということの結果成り立つものだと思います。
 いま、日々の仕事を懸命に患者さんのためだけに行なうことが必要です。そのなかで、どうしても選択さぜるを得ないコストの問題や行動の課題がでてくると思います。それらについて創造的にもっともよい方法を選択する、その繰り返しのなかで経営も結果として成り立つ、そんな病院が地域連携も成功すると考えます。あるべき方向を提示する、職員全員が理解し、計画し行動する。結果として患者さんであふれるブランドな病院となり、そして当初立てた計画が達成され、病院経営が成り立つ。すぐれた職員とすぐれた医療が行われる帰結です。地域連携活動はそうしたバックグラウンドがあり、追加的に病院をもっと知ってもらう、もっと理解してもらうための活動である必要があると、ふと社長の話を聞いて思いなおした昨日でした。


「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」