よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

闇のなかをその飛行機は、飛び続けて…

イメージ 1

イメージ 2

 飛行機はこれから起こることに備え、入念な準備をしています。しばらくするとアナウンスがあり、私は機上の人となり、前から3番目の左の窓の席に腰を下ろしました。

 飛行機は函館空港を滑るように離陸すると、あっという間に海上にでていきます。
綿をちぎって撒き散らしたような雲が広くかかり、その隙間から海がときおり見え隠れする景色が飛び込んできました。

 あっという間に下北半島が左の眼下に見え、下北半島に沿って飛行機は南下していきます。下北半島が切れるころになると、遠くに陸奥湾が広がります。ちょうど10分程度で、青森市の上空に差し掛かるはずだと、記憶の奥で思い出していると、厚くかかった雲の下に、小さな光が垣間見えるようになります。

 その斜めに雲から顔を出している山は八甲田山です。八甲田山といえば、雪中行軍の映画のシーンが思い出されますが、空からみるとあの恐ろしい雪の山の全体がこんなに小さく見えるものかと思います。
しかし、雲の渦がまるでその高さを誇るように、山を支えていて、遠目にみても、辺りでひときわ存在感があることには間違いありません。

 このころになると飛行機は闇の空気のなかに吸い込まれるように進み、いつしか窓の外の景色を消していきます。真紺の宙(そら)から少し薄い色になり、広がる雲の色がかろうじて灰色にみえるだけの闇のなかをさらに飛行機は進んでいきます。

 どこに着陸するのかが分からない医療制度改革や介護制度の行方に思いを馳せながら、闇のなかを高速で飛び続け、私達は後世に何を残していくのか。
少し立ち止まり考える暇(いとま)もなく、日々を過ごす自分をみているような、そんな思いに耽りながら、私は窓の外を眺めていました。そのときふと、暗くなり、よく見えなくなった外から、窓に映る自分に視点が移りました。

 そして、そのとき窓の中の自分の心のなかに、この飛行機は目的地に到着することができるのだろうかと、少しだけ不安がみえ、慌てて窓から私は目をそらしました…。

 飛行機は気流の悪いなか、ひどく揺れながらそれでも前に進みます。
「気流の関係で揺れますが、飛行に影響はありませんので、ご安心下さい。お客様は危険ですからお立ちにならないようにお願いいたします…」とアナウンスがありました。

 もうこの場所から逃げられないと覚悟を決めせざるを得ないのでしょう…。
 飛行機はガタガタと大きく揺れ続けていましたが、そのとき、私の心はなぜかすっかりと落ち着きを取り戻していたような気がします。