よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

大漁だ、大漁だ~ぃ

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 今日は、恵比寿で開業する天神クリニックの辻先生を囲む会がありました。そのお店の天井は高く、このような提灯と、大漁旗が掲げてありました。

 ふと、目をつぶると、博多港がうっすらみえてきます。

 荒れ狂う波のまにまに漂う船で、漁師が懸命に闘い、釣果(ちょうか)は大きく、大漁旗を掲げて港に戻る。それを女たちが迎え、男は誇らしげに胸をはる。

 まだ生きの良い魚がびちぴちはねがら大量に荷降ろしされ、港に活気を与えている。
港は行き来する仲買人で賑わい、大漁旗を掲げた船が集まるにつけ、その喧騒さはより高まり、ワ~ン、ワ~ンといった大きなうねりとなって海にこだまする。

 船の上の男たちは、魚をおろし、網の片づけを行い、額に汗して甲板をデッキブラシでシャコシャコ磨き、ふうと、タオルで首の周りや顔のしずくをふき取ると、ほんのちょっとだけタバコに火をつける。

 紫煙をふぅ~と吐き出し、仲買人が魚の箱に群がるのをみる。心のなかで、俺の仕事はどぎゃんと、すごかね~と、満足して成果と自信に心を満たす。
 
 近所のおばさんが通りかかると、甲板に置いておいた家族への土産のバケツのなかから、大きな魚の尾部分をひらっと2ひき指に挟みとり、向こうに大きく投げ渡す。
 そして、タバコをくわえたまま、よく開かない口でおばさんに叫ぶ。

 『さかなば みてんない しんせんかろ~ もってかえって にない くいない』
 
 おばさんがとんできた魚を大事そうに拾い、何かをいいながら軽く手を横にいやいやとふると、

 『よかよかぁ~。今日は、大漁やけん~』と誇らしげに胸を片手でたたき、男を見せる。(よくみると唇にタバコを張り付かせ、話しているのにタバコは落ちない…不思議な光景)。

 おばさんは、大事そうになげてもらった魚を胸に抱え、なんどもこちらを振り返り会釈しながら笑顔で、向こうに小走りに歩いていく(なんてばり美しい光景やろもん)。

 みんなが働き、満足し、誇りをもって明日に向かい、助け合って生きている…。

 いつから日本はそんな風景を忘れてしまったのか。男は去勢され、働くよりも女の尻を追いかける。夢を果たすより、早く帰らなければといって家庭でごろごろしながらテレビをみて時を過ごす。日本を変えることには興味もなく、政治や経済には自分の考えをもたない。

 そして、結局会社は業績を落とし、リストラや破綻。やっと気がつくけれども、自分が過去何をしてきたのかを忘れ、社会や人のせいにして自分は悪くないと心底思い、世の中をうらむ。

 『燃料高騰につき、全国一斉休業』

 そんな船が桟橋に抜け殻のように停泊し、小さな波が港に入って大きくなるなか、ぎしぎしと揺られ、自分ではどうすることもできない。

 今の日本や国民の姿をみて、大漁旗は何を思っているのだろうか。

 みると提灯や、提灯の下に文字が書かれていて、「昇給丸」とある…。これは皮肉か、はたまたレトリック(巧言=口先だけでうまく言うこと)なのか。

 ほんの数十秒、そんな思いが脳裏を駆け巡りました。

 ふと振り返ると志をもった、博多出身の豪放磊落な辻先生の勢いのある東京への進出がとても、素晴らしい力強いものに感じられ、先生の背中に大きく大漁旗がたなびいているのが瞬間見えた気がしました。

 よし、俺も先生と一緒に働くばい。またまた強い決意を私はしたのでした。



(ちなみに私の出身は新宿歌舞伎町です〔これほんと〕。中州ではありません。博多弁については、単純明快博多弁辞典から引用させていただきました)。