よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

医療の原点は思いやりの心

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 昨日、私はある地方の病院にいました。9月1日の改革キックオフに向けたミーティングが主な目的です。朝、H事務長に受付まで迎えにきていただき、いつもの会議室に案内されました。

 この会議室というか、利用しないベッドや什器が置いてあるこの部屋は、病院のなかでも最上階にあり、またベランダから日差しがもろに入るため、とても蒸し暑く、耐られない室温になります。クーラーをつけても、少しはましになりますが、なかなかその状況は緩和されません。

 しかし、今回部屋のドアを開けると、部屋の奥にあるドアに、このようなガムテープを使ったシールドが貼ってあり、簾(すだれ)がかけられていました。

 事務長は「暑いのでかくしておきました」となにげなくお話されましたが、感動しました。

 カーテンを閉め、そしてガムテープで何重にもシールドをはり、どこからか探してきた簾でさらに日よけをつくってくれています。忙しいなか時間をかけて、仕掛けをつくっておいていただいたのです。

 ❶普段はこの部屋はほとんど会議には使わない
 
 ❷他の用途にも使うことがあり他の予定も入っているがレアである
 
 ❸何回も会議があり人は集まるが、会議室で朝から夕方まで仕事をしているのは石井である

 ❹しかし石井の来院頻度はそれほど高くない
 
 
 本来であれば、このようなことをしなくても済むはずです。
 
 事務長の人に対する思いを感じることができました。

 できるかぎり、誰かがだれかのために何かをする。ということをポリシーとしてもっている病院である
といつも感じていましたが、さらに思いを強くすることができました。

 自然にそうした行動をとることができる人こそが医療に従事すべきであると思います。
 
 打算や計算ではなく、格好をつけたり媚びるのではなく、自然にそうした行為に自分を向けていける人こそが医療や介護のなかであるべきかたちを作り出していくことができると考えるのです。

 医療のスキル向上や仕事の仕組みの見直しが医療の質を向上させるとしても、その背景にある医療従事者の精神性が慈悲心から生まれていなければ、それらはうまく機能しないのではないかと思います。

 高い慈悲心が、医療を根底から支えるのだと考えています。

 人の気持ちは外部環境に影響を受けることは間違いなく、相互のやり取りで自分の気持ちを高めていくものであるということは理解できます。しかし、医療従事者は、まずは主観的に強い慈悲レベルを維持することができるのかどうかを自らに問う必要があります。

 人を慈しめるのか、人のことを自分のことのように大切に思えるのか、人のために何かをするときに躊躇していないか。とても難しい課題です。

 一歩踏み出し行動できるよう、自分を見つめ直してみたいと思います。事務長ありがとうございました。