よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

4つの先回りの徹底

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「相手よりも先に物事をしたり、考えたりすること」を先回りといいます。今回は先回りについて考えます。

 

ここで、先回りの検討を行うとき、「先回り」を広めに定義します。「相手」は、人や組織のみならず時代や環境と捉えること、そして「物事をしたり、考えたりする」だけではなく、想像する、予測することも含めます。「考える」のなかに、想像する、予測するの意味も含まれますが、敢えて別に定義することで、現状と未来の時制への取組みを区別したいと思います。

 

さて「先回り」することは、仕事のあらゆる場面に組み込まれています。

 

組織はビジョンを設定しますが、ビジョンはこうしたい、こんな世界をつくりたいという想像ですし、マーケティングでは、世の中はどうなるのかを予測しながらテーマをもって調査をします。

 

戦略策定においても現状をどのように乗り越えて未来に向かうかや、市場や競合の動きを先回りし予想して闘いに勝つための計画を立てます。

 

中期経営計画、事業計画(投資計画や人員計画を含む)、予算編成、行動計画、目標設定はすべて、現状を分析したうえで先回りして計画し、近い未来に成果を得るための計画ですね。

 

また、BCP(Business continuity plan=事業継続計画)の対応にみられるように、リスクやクレームについても発生してから対応するのではなく、先回りして事前に何が起こるのかを予測し行動したり、先にクレームになりそうなことを捜して手を打つことが適当です。これらも先回りの行動です。

 

日々、社内外において相手の立場や思いを慮ることや思いやることも、事前に相手の気持ちを考えて話す、動く、という先回りの表れです。

 

さらに報連相の相談も、目標をクリヤーするために自分の役割や責任を果たす場面で上司に指示を仰いだり意見をもらうための行動であり、先回りの意識がなければ、なかなかできるものではありません。

 

なお、相談の中に「どうしたら良いでしょうか」、という相談があるとすれば、ナンセンスです。

 

自分がミッションを果たすのに思いをもち、どうしたらその思いが実現できるか、ミッションとの間に齟齬はないかを確認する、修正するといった思いがないのであれば、相談は相手に対する単なる依存にしかすぎません。先回りではありません。

 

この気付きはとても大事です。

 

多くの企業で、説明した、ビジョン、マーケティング、戦略策定、中期経営計画、事業計画、予算編成、行動計画、目標設定が、先回りの意識をもち、また先回りにおける「想像、予想、考え、行動」の条件を適切に満たしているか、について疑義があるからです。

 

ビジョンのためのビジョン、型通りのマーケティング、議論を尽くさない戦略策定、思い込みによる中期経営計画、根拠のない事業計画、分析なしの予算編成、5W1Hになっていない行動計画、定量化されない、されても網羅性のない目標設定など先回りができていないなどの現実があります。

 

私も含めて、先回りの程度が低く、目の前の事柄に拘泥し、いや振り回され、想像、予想、考え、行動への思いは脳裏の片隅にあるものの、十分な準備なしに物事に手をつけてしまうことや、進めてしまうことがあるのです。

 

個々の業務においてはできるだけ相手の行動を予測する、慮るといった対応を心掛けてはいるものの、多くの場面で先回りが不足していると、後で臍を噛むのは必須です。

 

日本の現状、時代の趨勢、消費の変化、業界の動向等について一般的な情報を入手し、理解してはいるものの網羅的ではありません。また、時代や環境変化を読んで、自分が次に何をすべきかのアイデアはあっても具体的な行動に結びつけて行動できていないのは致命的です。

 

私には物理的な時間や、そもそも能力がないことで、現実に「先回りして仕事をし続けるのがいかに難しいか」に気付きます。

 

もちろん、組織も人も全知全能ではなく、時代や環境変化も不確実であることからすれば、長期の先回りは無理かもしれません。

 

しかし、何か変化の兆候に気付き、先んじて手を打つ、先回りし続けなければ、得られる成果を得られずに終わることを強く認識しなければならないと思います。

 

こうして考えると生活も同様です。健康や人間関係、自分の人生や家族も含め、すべて先回りの意識を持って行動しなければならないことが分ります。

 

再度「先回り」を生活や仕事の基本的な行動の一つとして捉え直し、想像、予測、考え、行動の4つの視点による先回りの意識を、具体的な活動に結び付け、成果をあげていきたいと考えています。

原因と結果の循環

f:id:itomoji2002:20210607230313j:plain物事には原因があって結果がある、というのは誰でも理解できます。

 

ところが不都合なことが起こると、それは自分のせいではなく、他人や環境のせいである、とする人がいます。自分に不利益なことは、他人や環境のせい(原因)にして自分の責任を逃れることは楽ですよね。

 

しかし、そうした姿勢でいる人は、たびたび自分の思うようにいかないことが起こり、いつも社会や環境に不満をもち、やりたいこともできない、成果の挙がらない人生を送るはめになります。

 

なので、「身の回りに起こったことはすべて自分が原因」とするのが適当です。いつ起こるか予測出来ない災害ですら、何かが起こる前に不足の事態を予測し先回りして準備をすれば、リスクは最小限に押さえられる、と考えなければなりません。

 

生活や仕事で何かが起こるのは自責であり、ほぼ自分のせいである、という帰結です。

 

もちろん現界はありますが、すべては自分のせいで自分に原因がある、起こりうることを予測し、どうすれば抑止できるのか出来る限りの準備を怠らない、という態度が物事をうまく行うポイントなのです。

 

他人や環境のせいにして、ぐちぐちしているより、常に自己責任、どうすれば良いかを考える方が良い結果がでます。また、成長出来るし爽やかに生きられます。

 

 ジェームズ・アレンは、心のなかで生まれた「思い」は現実となって現れる、として1902年「原因と結果の法則」を書きました。

 

同書では、「環境が人を創る」のではなく、「人が環境を創る」と定義し、人間は環境に左右される存在でなく、自己犠牲を払って(あることにフォーカスし、他は我慢することで)獲得した自己コントロール力によって、いつでも現状を打破できる、と説明します。

 

多くのことは自分のコントロールにより管理できるという趣旨で、環境や他人のせいにしてはならないという読み方ができます。

 

行動が結果を生むという前提で「思いをもって行動すれば、どのような環境であれ、自分の思い通りに進む」という考え方は多くの人々の支持を受けています。

 

ここで、結果を出すために必要なことは、思いと行動ですが、思いが自然に行動、そして結果につながるためには、いくつかの条件があると考えています。

  • 思いを強く持つこと
  • 信念に変えること
  • 行動内容の明確化
  • 計画的な行動

がそれらです。

 

思いがなくても、思いが弱くても行動に結びつきません。また、強い思いは信念により具現化するし、間違った行動であれば間違った結果を生みます。

 

信念に裏付けられた行動であったとしても、適切かつ具体的なものであることや計画的なものでなければならないからです。なので行動内容の明確化が不可欠です。

 

例えば仕事で結果を出すために必要なのは、まずは自分のスキルを鍛えること自分がどのような職種に就き、どのような仕事をするのか、どのような技術や技能を身に着け、結果を出そうとしているのかを考えなければなりません。

 

さらに何をするにしても人間としての魅力、すなわち豊かな人間性(人としての感情、倫理、知性)や、人間力(自立した人として力強く生きる総合的な力)を身に着ける必要があります。

 

また一人で結果を出せないことを考えれば、他者の支援をしたり受けたりが大事です。他者との関係性を良好にすることが必須であるところ、他者とのコミュニケーション力が求められます。

 

可能な限り、自分の思い、スキルを伝え、人間力を以て他者と情報をやりとりしながら、やりたいことをやり続けることで結果を得られます。

 

そして、上記は「計画的な行動」である必要があります。やみくもに頑張るのではなく、目的を達成するための具体的な行動を5W2Hに落とし込み、行動をPDCAによりコントロールしながら成果を挙げなければならないのです。

 

思いがあり、思いを信念に高め、技術や豊かな人間性を身に着け、コミュニケーションをとりながら徐々に成果を挙げて満足し結果を出す、という結論です。

 

これは、思い、信念、技術力、人間力、コミュニケーション力、達成感より正六面体(キューブ)をつくることが成功の6要件だ、とする拙著「サクセスキューブ(幻冬舎)」の考え方に符合します。

 

なお、ある原因により生まれた結果が思い通りであったのかを検証し、課題を出し修正することや、次の原因をつくるために、思いをもち行動をしなければなりません。それが次の結果を生むからです。

 

思い→行動→結果→思い→行動→結果…という循環のなかで、いま何をすればよいのか、何をしたいのかの思いを信念に昇華させ、そこにフォーカスし自己犠牲のもと自己コントロールすることで、思い通りの人生を歩む、と整理できました。

 

原因と結果、そしてその循環を念頭に、過去を一度反芻してみる必要がありそうです。

ビジネスはアートだ

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ビジネスとアートをテーマとした書籍が数多く出版され、また両者の関係がさまざまなところで議論されています。「アートをビジネスに活かそう」という文脈です。今回のテーマです。

 

たまに美術館に行きますが、門外漢の私がアートについて深く語ることはおこがましいし、難しいことです。しかし、素人としてアートとりわけ美術品(書画・彫刻・工芸作品≒ここでは絵画とします)を、どのようにビジネスに活かせると感じているのか、について私見を述べることはできそうです。

 

さて、ビジネスとアートについて考えるときには、

  1. アートをどのようにビジネスに乗せるか
  2. ビジネスにアートをどう活かすか
  3. ビジネスパーソンがビジネスの中でどのようにアートを扱うのか

の視点があります。

 

もっとも大事なのは3の、「ビジネスパーソンがビジネスの中でどのようにアートを扱うのか」だと思いますが、まずは、1から簡単に検証したいと思います。

 

海外の美術品マーケットは、欧米を中心としてつくりあげられてきた経緯があります。アートの歴史は無視できません。

 

もちろん、古くから日本の文化や葛飾北斎などが海外のアーティストに大きな影響を与えたことはつとに有名です。

 

しかし、近代日本には海外で高い評価を得ているアーティストはいても、世界トップクラスの高額で美術品が売買されるアーティストはいないといわれています(そうはいってもロンドンの画商の香港ブランチのスタッフから、村上隆の作品がイギリスで数億単位で売れていると聞きました。凄いですね)。

 

アートをビジネスにどう乗せるかについては、「アートのマーケティングが必要で、それはアーティストでも画廊でもなくキュレーター(博物館や美術館等において鑑定や研究を行い、学術的専門知識をもって業務の管理監督を行う専門職、管理職)の活躍の場だ」という意見があります。

 

ただ、キュレーターが企画を行い市場に活気がでるとしても、欧米がそうしてきたように日本では子供のときからアートに対する教育や環境づくりをしてこなかったので国内マーケットは限られた人々の楽しみの場になっているだけ、とも言われており、根深い課題がありそうです。

 

なので、日本では美術品をどう販売し普及させるのかではなく、人々ができるだけ多くの作品に触れて啓発を受け、感動し、後にそれを人生に活かせる場づくりが大切だ、と言う方向での議論が必要です。

 

すなわち、資金や心に余裕のある日本人が美術品を購入するだけではなく、そのときどきで海外との連携や公的・民間資金で取得した著名な絵画等の展示会、新人のアーティストの展覧会を頻回に開く仕組みづくりを行い、広く国民が感性を磨く機会を増やす。そのために何をすべきなのかという議論を積み上げることが有益です。まさにキュレーターの腕の見せ所ですね。

 

なお、日本のアーティストの作品を海外に広める、という意味でのビジネスは、確かにマーケティングに依存するところもあるので、その領域でも頑張って欲しいです。

 

次に、ビジネスにアートをどう活かすか、と言うダイレクトなテーマについてです。

 

スティーブジョブスのアップルが有名ですが、デザインにより機能が担保されたり、カラーリングにより生活が豊かになるというテーマは、自分のこととして実感できます。

 

コンセプトや機能がデザインに反映されて商品価値を高めるという意味で、デザインやデザイナーの重要性が益々高まってくると思います。

 

戦略やプロダクト全体をデザインできる企業が成長するなど、これからも新規事業や商品開発におけるデザインの必要性が高まることは容易に想像できます。

 

ところで、「ビジネスの限界はアートで超えろ」(増村岳史著)で著者は、絵画には予め設計された構図があり、俯瞰と凝視により脳の機能を使いロジカルに、つまり図形的にもの事を捉える論理的思考により描かれている、絵画を描くには右脳のみではなく、左脳の機能が必要だ、という趣旨の説明をしています(「特徴的な色遣いをするゴッホの絵具のつくり方は論理的。また、作画のプロセスはPDCAにより行われた」というくだりは目から鱗でした)。

 

そして、絵画を見ることは感性を司る右脳に訴えかけますが、観ることは考えることを促し論理を司る左脳に作用する、としています。確かにそうですね。

 

ここまでくると、「ビジネスパーソンがビジネスの中でどのようにアート思考を扱うのか」についての解は明らかです。

 

絵画に触れることで、まずは単純に目の前の絵画の美の世界に入り込み、感動に包まれて癒され感性を磨く。一方でその絵のどこが素晴らしいのか、何を気に入ったのか自分なりに分析します。

 

それが描かれた時代背景や歴史を学び、作者の意図に想いを馳せ、そこから生まれる感性や論理から、直感力や美しいものや善への憧憬、そして相手の心を慮る意識や平和に対する思いを培うことができます。

 

そうして人間性を磨き自分を高め続ければ、いざビジネスに直面したとき、心に深く刻まれた感性や論理性から思考をつくり、まさに俯瞰と凝視のスクリーンを通して事象を捉え、簡潔かつ機能的に解答を出せたり、何かを伝えたりができるようになるのです。

 

仔細なことですが、それができるようになるとプレゼンでも自分の意図やイメージを、論理的な図形やデザインで瞬間に理解してもらえるようにもなりますね。

 

日々のビジネスや生活は、アートにより影響を受け、良い成果を得続けられると考えています。

 

補足すると、欧米でも良くあるようですが、私が社会人に成り立ての頃、著名な経営者の皆さんが、横山はどうの、東山の、平山が、伊東は、と会話をし打ち解けた後にビジネスの話に入るといった現場に居合わせたことがあります。

 

必要な教養ですが頻繁に機会があるわけではなく、また今の時代はそのようなのんびりした時代でもないのだろうとは思います。

 

ここに、

 1.  美術品に触れる機会を増やす

    2.  物事を俯瞰し凝視する

    3.  右脳と左脳で物事を捉える

    4.  デザインについて造詣を深める

    5.  思考法やセンスを磨きビジネスに活かす

というビジネスパーソンのアート扱いの必要性が見えてきます。

 

まさに、ビジネスパーソンのビジネスとアートの関係性を創り上げるアプローチです。

 

私の中で今回のテーマはまだ充分に掘下げられていないため内容に深みがありません。

 

これからも美術品にできるだけ多く出会い、また周りの造形や色遣いにも意識をもち、右脳と左脳でアートを楽しみ、さまざまな豊かさを得て、ビジネスに活かしながら人生を謳歌していきたいと考えています。

 

 

業務改善を行う4つの意味

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クライアントで業務改善のレクチャーを行いました。概要を紹介します。

 

改善とは、より好ましい・望ましいものへ改めること、およびそのための創意工夫の取組みをいいます。

 

それは、業務を見直し、現状の業務をよりうまく、より早く、より合理的に(安く)できる業務に変えていくことを意味しています。仕事を行う人の立場も考慮して改善を行うことが大事です。

 

なお、業務改善を行うことにより、ムリ、ムダ、ムラをとることができます。分り易くするために、もっとうまく、もっと早く、もっと合理的に(安く)というキーワードを使っていますが、それはムリ、ムダ、ムラをとる、ということとほぼ同じ意味だからです。

 

改善は、業務(仕事)を見直し、仕事のやり方を

  1. 標準化によりムダをなくす
  2. 不必要な業務を止める
  3. 簡素化する、
  4. システムを入れることで手間を省く
  5. 集中化や移管を行いムラをなくす

ことで自部署の業務を効果的にする等が対象となります。因みに評価・教育を並行して上記を実施すればムリは根絶されます。

 

また、改善提案制度は、

  1. 何のために改善を行うのか、
  2. どのように行うのか、
  3. それはどのように評価されるのか、
  4. どのように報奨するのか、

という事項の検討の上に成立する制度です。これらの一つが欠けても制度は成立しません。

 

「何のために」を納得してもらうことがとても大切です。そもそも「従業員の働き易い職場をつくることは組織の方針でもあるし、従業員にとっても望ましいことです。業務改善により常に仕事を見直し、仕事の質を向上させ成長する。そのことで仕事はやり易く、やりがいのあるものに変ります。なので、業務改善は仕事の一部として捉え、自らも環境を変えるため、業務改善を活用しましょう」といった説明が必要です。

 

なお、他人や他部署が実施した改善提案をデータ化することで、

  1. それをヒントとして自部署で改善を行い、成果を広げることができる
  2. また、改善したことが表に出ることで提案者の評価にもつなげられる

ため、「提案はしていないけれど、常に改善しています」という主張は、実際に成果があったとしてもナレッジ化されていないという点で十分ではない、と言わざるを得ません。

 

常に身の回りにあることを疑い、もっとうまく、はやく、合理的に(安く)できるのではないかと考え、アイデアを出し、実験しなければなりません。

 

うまくいくこともいかないこともありますが、それを自分や他の人に評価してもらい、成長するきっかけにする。そしてまたアイデアを出して実験し、と繰り返すことで力をつけていきます。

 

ところで、提案者は自らの提案が仕事の仕組みや環境改善に貢献することを達成感として感じられる従業員になることが期待されています。

 

社会人としての喜びは、自分が決めたことを実行する過程で満足し、成し遂げて達成感を得たときに最大化すると考えています。

 

例えば月に1件以上の提案を行うと決め、実行し改善による成果を挙げて達成感を得る、そのことこそがもっとも大きな自分への報奨だと考えています。

 

ただ、そうは言っても報奨は「組織評価の一表現」との期待も多くあるので、

 

組織は、

  1. 改善提案の重要性や効果を基礎に提案者を評価し、
  2. 年間で報奨する

必要があります。

 

報奨には金銭的報奨と非金銭的報奨がありますが、徐々に制度が成熟すれば評価・報奨のルールが明確になってきます。金銭的報奨と非金銭的報奨の双方を取り入れた評価をするとよいでしょう。

 

なお、業務改善を行った結果はマニュアルに記載しなければなりません。マニュアルを通じて、改善された項目が組織に周知され、徹底されるからです。

 

常に改訂されるマニュアルの活用により、仕事や組織の質をさらに向上させることができます。マニュアルに記載されている手順を見て業務改善のアイデアを出すこともあります。

 

  1. マニュアルを作成する(業務の可視化=標準化)
  2. 皆がマニュアル+創造的に行動する
  3. マニュアルが陳腐化する
  4. 業務改善を行う
  5. マニュアルを改訂する
  6. 2.に戻る

というサイクルにより、業務改善を通じて仕事がより精度の高いものに変ります。

 

トヨタやユニクロを始め多くの企業が標準化や改善により成果をあげる中、無印良品がMUJIGRAMと名付けたマニュアルと業務改善でV字回復しましたが、業務改善はマニュアルとの連関がとても深いことが分ります。

 

結果、業務改善を行うことで、

  1. 日々の創意工夫により達成感を得る
  2. 評価される機会を増やす
  3. よりよい仕事環境をつくる
  4. 力をつけて成長する

を得ることができます。業務改善を行う4つの意味です。 

 

すべての管理職やスタッフの毎日が常に創意工夫により業務改善を行う日々であるよう、心から期待しています。

うまくいく4つの手順

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事業経営をうまく行うためには、うまくいく道理(物事の正しいすじみち)、や原理原則(基本的な決まり)を知ることが大事です。

 

ビジネスでいえば、どんな事業であっても、収益をあげ費用をかけないことで利益やキャッシュフロー(以下CF)を得ることが必要です。

 

ビジネスの目的がビジョンを達成することだとしても、当該ビジネスが顧客から評価されて利益やCFが生まれなければ事業は継続できないし、結果としてビジョンも達成できないからです。

 

収益=顧客数×単価です。費用には変動費と固定費があります。どうすれば到達点に辿りつけるのかを考え、実行することが事業成功のポイントです。

 

まったく市場にない商製品・サービスであれば、ターゲットを明確にしたうえで、いくつかのツールを使い、その価値を測定するための市場調査を綿密に行います。

 

既存のものであれば、ターゲティングのあと多くの成功事例を検証し研究をしつくしたうえで市場調査、SWOTやポジショニングによる到達点を決めます。

 

市場分析やターゲティング、ポジショニングにはさまざまな手法やアプローチがあるので必要と考えるものを都度活用するとよいでしょう。

 

もちろん、漏れなくダブりなく(MECE=ミーシー)行ったつもりでも、人は全知全能ではなく、実務では始めから絶対にうまくいく到達点を決められるわけではありません。できるだけ保守的に、そのときのベストはこれだと決めて始めていくことが必要ですね。

 

次に、現状の把握→到達点と現状の乖離分析→解決策の検討→計画立案(以上ASCS=アスクス)→PDCAでの展開を行います。ここで重要なことはガバナンスです。「決めたことは必ず行う」と決め、予算編成を行ったのち、月次での予算(月次決算・KPI)管理をしっかり行います。

 

予算管理を行うということは、計画通りに物事を進めるという事を意味しています。目標管理や日々のリーダーシップが求められる所以です。社員の評価や教育、組織内外連携、タイムマネジメントが適切に実行されなければなりません。

 

もちろん、決めた通りに成果があがらないことも多く、日々工夫をしながら行動を修正し、どうしたら目標に辿りつけるのか挑戦することが仕事です。

 

多くの組織でみられらように勢いだけで必要十分なPがなく、Dのみで(場合によればDさえ中途半端で)CもAもないという事態は絶対に避けなければなりません。

 

さて、「PDCAは古い・遅い」といった批判があります。代替例として、ハーバードビジネススクールのリンダ・ヒルが提唱したPDR(PはPrep[準備]、Dはdo[準備]、RはReview[評価])や、ジョン・ボイドのOODAループ(Observe[観察]、Orient[状況判断、方針決定]、Decide[意思決定]、Act[行動])が挙げられます。

 

何を言っているのか詳しく知りたい方はネットで検索してみて下さいね。

 

結局、これらはPDCAサイクルの長さや、それぞれのアイテムの意味、使う観点を変えることによる主張です。

 

フレームワークが機能する、しないの分かれ目は、当たり前のことですが、「事業成功のポイントを押さえ、やるべき事項や具体的方法・手段等を適切な計画に落とし込み、日々、超短期(1ヶ月)、短期(1年)において、個々人が役割を果たす」こと。

 

基本的な考えかたはPDCAで充分であり、やるべきことを具体的に決め、可視化しながら(修正も含め)日々行動することが重要です。フレームワーク(道具)の定義や意味は大切ですが、本質を忘れてはなりません。

 

なぜを明確にした上で、最低限、誰が何を、何時までに、どのように、いくらでやるのかを決めてその通りに行動できるかどうか(自分や組織を律することができるかどうか)が大事です。

 

PRPもOODAも、もちらんPDCAも打ち出の小槌ではありません。提唱者が何を伝えたかったのかを理解し、PDCAサイクルの大筋のなかで思いを反映していけば良いのです。 

 

道具を使いこなし、成果を挙げるのかの主体は「言わずものがな」ですが、使う側にあることを忘れてはなりません。

 

ということで、何かをうまく行うためには、

 

  1. 情報を集めて分析し決める
  2. 具体的な計画に落とす(P)
  3. 一人一人の役割を決め決定事項を絶対達成するという意識で行動する(D)
  4. ガバナンスの仕組みの中で日々の柔軟な管理(C・A)を行う

の4つの手順が必要と整理できました。

 

事業は複雑でどうすれば成功するのかという質問に王道はありません。時代や環境、競合、選択した事業、ビジネスモデル、経営資源、リーダーシップに大きく影響を受けるからです。

 

しかし、少なくともここで説明した「うまくやるための4つの手順」をしっかり理解し、自身に当てはめ活用していくことが有効です。

 

厳しい時代4つの手順を再確認し、前に進んでいきたいと思います。

漏れなくダブりなく

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仕事をしていくときに、大切な考え方はたくさんあります。

何かを分析したり、何かの行動をとるときの「生産を実現するための効率的な考え方」をビジネスフレームワークといいます。フレームワーク(framework)、枠組みです。

ご存知のPDCA、SWOT、ロジックツリー、5W2H、AIDMA(アイドマ)、STP分析などがよく使われています。

更にとても重要なMECE(ミーシー)があります。

MECE(Mutually [お互いに]Exclusive [重複せず]and Collectively[全体に] Exhaustive[漏れがない]=お互いに重複せず、全体に漏れがない)という意味です。言いやすいので漏れなく、ダブりなく、と言われています。何かを整理したり実行する時に、ある事項が重複したり抜けることがないようにするためのルールがMECEです。

MECEは事業のあらゆる場面で取り入れられる考えかたで、その対象は多岐にわたります。戦略、事業計画、予算編成、予算統制、目標管理、権限規程、業務フローチャート、マニュアル、日々の業務すべてなど、記載すればきりがありません。

戦略を立てるときにも、マーケティングを行い顧客や市場、業界や競合、自社の分析を行ったうえで行うべきことを決めていきます。ここに漏れやダブりがあれば、組織の進む方向に誤りが生じます。なので、戦略立案上必要な項目を列挙し、そこでMECEを検討します。

ターゲットにする業界の括りに漏れがあれば、見出すべき課題を発見できなくなるし、競合も見逃すことになります。

例えば飲食で、とんかつを展開する会社は、一定の仮説を立て、飲食業界のみならず、コンビニやデリバリー、ファストフード、インバウンド、アミューズメント、酪農、農業、小売り業、通販などさまざまな業界のトレンドや消費者の嗜好の分析を行い、マーケットボリュームを推定しつつ、商品開発、価格、流通、プロモーションを考える必要があります。

ここで網羅性が担保できなければ、チャンスロスや熾烈なレッドオーシャンの世界に足を踏み入れることになります。

また、消費者の性差が「かつ類」の消費に影響すると考え、男女の分析を行ったところ、年齢層による消費行動に強い傾向があり男女の分析はダブりになる、という結果もあるかもしれません。当初立てた仮説通りに進み、余計な労力をかけないよう、慎重に仮説を立てる必要があります。

もちろん、当初年齢層による動きを見ていたら男女差による行動偏差があり、これはやっぱり年齢層だけじゃまずかったよね、といった結論になり、漏れてたね、ということになるかもしれません。留意したいですね。

さて、元に戻ります。このようにありとあらゆることにMECEが役立ちます。最近のクライアントの事例で、権限の行使に漏れがあったことを思い出します。

権限規程がないために、起案、審査、承認、(実施)、報告において誰の責任なのかわからず、これは俺の仕事?のようなことがある組織があります。慣行により誰かが決裁しているけれど、審査せず押印して事故が発生したり、承認せず事故が起こったケースです。

事故が起こらない限り露見しませんが、起こってから始めて「ルールないじゃないか」、のような状況になるのです。権限規程運用においても、新しい業務が増えるつど、MECEを応用し正確な作成と権限行使を行わなければなりません。

上記にあげた戦略、権限過程以外の、事業計画、予算編成、予算統制、目標管理、業務フローチャート、マニュアル、日々の業務すべてについても、クライアントの現場でMECEの有用性を常に感じています。

個人行動も含め自分の身の周りを、MECEの眼で再確認してみるとよいと思います。

漏れなくダブりなく。片時も、忘れてはなりません。

 

働く5つの理由

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各職位において職務として求められる成果を挙げ組織目標を達成することが、組織構成員の義務であり責任です。

 

ここで仕事を進めるうえでどのような価値感が、自分を支配しているのを客観視することが重要です。価値観のバランスが偏れば求める成果を挙げることが困難だからです。

仕事と個人の価値観について考えます。

 

人は自分の善・悪、好ましいこと・好ましくないことに対する思いにより判断を行い、生き、仕事をしています。この思いを価値観といいます。

何のために働くかの判断を行うときの価値観には少なくとも、次の5つがあります。

  1. 自分のため
  2. 家族のため
  3. 他人のため
  4. 組織のため
  5. 社会のため

「自分のために」には、個人の感情は多様で一律に表現はできませんが、主に健康でいたい、経験を積みたい、技術・技能を身に着けたい、成長したい、地位や権力を得たい、目立ちたい、金銭を得たいといった思いがあります。

 

マズローのいう人間が根源的にもっている組織に帰属したいという「帰属の欲求」や、認めてもらいたいとの「尊厳の欲求」、成し遂げたいという「自己実現の欲求」もここに含まれます。

また、「家族のため」には、妻子、親族へのすべての対応が含まれています。

「他人のため」には、上司、先輩、仲間、部下、顧客、取引先、株主、債権者といった職場や利害関係者が該当します。

「組織のため」には、ミッション、ビジョン、ゴール、目標の達成や成果への執着があります。

そして「社会のため」には、人類、技術革新、変革、経済への貢献等が該当するでしょう。

ある人の価値観は、ここにあげた分類の組み合わせによりつくられています。

1、2のパーソナル・バリューや、3、4、5のオフィシャル・バリューは、生まれ育った環境、個人の持って生まれた、また後発的に身に付けた才能、思考・哲学、経験、友人、組織・労働環境、時代、時期により、また職種、年代、役職、家族関係により変化し、ある人の思いをつくり判断に影響させます。

 

個々人により多様な組み合わせがあり、またどうしても譲れないという価値観もありますが、本人でさえその変遷に気づかないうちに変化しているものもあり、どこに重点を置いているのかは時々により変化し、つかみどころはありません。        

 

ただ、端から見ていると傾向が見えることがあります。Aさんは仲間を大事にする、Bさんは家庭重視、Cさんはいつも正義感があるよね、Dさんは研究で世の中を変えようと本気で思っている、といったことで、その人の評価につながります(全てが真実とは限らないところがミソですが)。

 

なので、少なくともパーソナル・バリューだけに固執してオフィシャル・バリューとのバランスが悪い人は、どこかで見透かされ孤立してしまうことや、心底で信頼されないこともあります。

仕事は人生の学びの場であり、成長して達成感を得るための場面の一つです。したがって一義的には仕事は自分や家族のために行うことを曲げようがありません。

ただ、人は一人では生きられず、他者と協働して成果を挙げる生き物であるとすれば、多くの人に頼り、またその前提として多くの人を支援しなければ、集団活動を行えないことも事実です。

いくら自分が優秀であったとしても一人では生きられないことを基礎においた行動が求められているのです。さらに日々の行動の到達点に組織目標や、自分のやりたい事があり、そのことにより社会に貢献するという志があり、多くの仲間とその達成に取り組むことができれば、日々の行動に弾みがつき、やる気も出てきます。

 

毎日を楽しみ躍動して生きるために、他者、組織、社会への貢献を掲げ、日々工夫や創造を怠らないと決めなければなりません。

 

健康を害したときや、家族のイベント、他人や組織の危機、景気の悪化や社会の新しい動き等に直面したときなど価値観の重みづけの調整はあるものの、「パーソナル・バリューのなかにオフィシャル・バリューを取り込み、すべてが自分の主体的に関わるものである」という価値観の位置づけのなかで、その時々の状況により価値観相互のバランスをとる、という在り方で仕事をすることが適切だと考えています。

 

バランスの良い価値観を基礎として、目指す自分づくりのために日々研鑽し、必ず社会に貢献できているという確信をもった組織活動を通じ、他者と協働しながら成果を挙げ達成感を得て成長する、という働き方がベストだという整理ができました。

自分の日々を再度見直してみたいと思います。