よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

4つの先回りの徹底

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「相手よりも先に物事をしたり、考えたりすること」を先回りといいます。今回は先回りについて考えます。

 

ここで、先回りの検討を行うとき、「先回り」を広めに定義します。「相手」は、人や組織のみならず時代や環境と捉えること、そして「物事をしたり、考えたりする」だけではなく、想像する、予測することも含めます。「考える」のなかに、想像する、予測するの意味も含まれますが、敢えて別に定義することで、現状と未来の時制への取組みを区別したいと思います。

 

さて「先回り」することは、仕事のあらゆる場面に組み込まれています。

 

組織はビジョンを設定しますが、ビジョンはこうしたい、こんな世界をつくりたいという想像ですし、マーケティングでは、世の中はどうなるのかを予測しながらテーマをもって調査をします。

 

戦略策定においても現状をどのように乗り越えて未来に向かうかや、市場や競合の動きを先回りし予想して闘いに勝つための計画を立てます。

 

中期経営計画、事業計画(投資計画や人員計画を含む)、予算編成、行動計画、目標設定はすべて、現状を分析したうえで先回りして計画し、近い未来に成果を得るための計画ですね。

 

また、BCP(Business continuity plan=事業継続計画)の対応にみられるように、リスクやクレームについても発生してから対応するのではなく、先回りして事前に何が起こるのかを予測し行動したり、先にクレームになりそうなことを捜して手を打つことが適当です。これらも先回りの行動です。

 

日々、社内外において相手の立場や思いを慮ることや思いやることも、事前に相手の気持ちを考えて話す、動く、という先回りの表れです。

 

さらに報連相の相談も、目標をクリヤーするために自分の役割や責任を果たす場面で上司に指示を仰いだり意見をもらうための行動であり、先回りの意識がなければ、なかなかできるものではありません。

 

なお、相談の中に「どうしたら良いでしょうか」、という相談があるとすれば、ナンセンスです。

 

自分がミッションを果たすのに思いをもち、どうしたらその思いが実現できるか、ミッションとの間に齟齬はないかを確認する、修正するといった思いがないのであれば、相談は相手に対する単なる依存にしかすぎません。先回りではありません。

 

この気付きはとても大事です。

 

多くの企業で、説明した、ビジョン、マーケティング、戦略策定、中期経営計画、事業計画、予算編成、行動計画、目標設定が、先回りの意識をもち、また先回りにおける「想像、予想、考え、行動」の条件を適切に満たしているか、について疑義があるからです。

 

ビジョンのためのビジョン、型通りのマーケティング、議論を尽くさない戦略策定、思い込みによる中期経営計画、根拠のない事業計画、分析なしの予算編成、5W1Hになっていない行動計画、定量化されない、されても網羅性のない目標設定など先回りができていないなどの現実があります。

 

私も含めて、先回りの程度が低く、目の前の事柄に拘泥し、いや振り回され、想像、予想、考え、行動への思いは脳裏の片隅にあるものの、十分な準備なしに物事に手をつけてしまうことや、進めてしまうことがあるのです。

 

個々の業務においてはできるだけ相手の行動を予測する、慮るといった対応を心掛けてはいるものの、多くの場面で先回りが不足していると、後で臍を噛むのは必須です。

 

日本の現状、時代の趨勢、消費の変化、業界の動向等について一般的な情報を入手し、理解してはいるものの網羅的ではありません。また、時代や環境変化を読んで、自分が次に何をすべきかのアイデアはあっても具体的な行動に結びつけて行動できていないのは致命的です。

 

私には物理的な時間や、そもそも能力がないことで、現実に「先回りして仕事をし続けるのがいかに難しいか」に気付きます。

 

もちろん、組織も人も全知全能ではなく、時代や環境変化も不確実であることからすれば、長期の先回りは無理かもしれません。

 

しかし、何か変化の兆候に気付き、先んじて手を打つ、先回りし続けなければ、得られる成果を得られずに終わることを強く認識しなければならないと思います。

 

こうして考えると生活も同様です。健康や人間関係、自分の人生や家族も含め、すべて先回りの意識を持って行動しなければならないことが分ります。

 

再度「先回り」を生活や仕事の基本的な行動の一つとして捉え直し、想像、予測、考え、行動の4つの視点による先回りの意識を、具体的な活動に結び付け、成果をあげていきたいと考えています。