よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

すべての仕事の源泉とは

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どのような仕事でも、目的を達成するための方法や手順があります。 

 

人が道具をつくり、機械装置をつくり。システム開発により生産活動を行い、改善を重ねながら量を増やしコストを引き下げ、質をあげる積み重ねてきたことにより、経済が成り立っています。

 

先達が長い時間をかけて、発明し、開発し、改善し、進化させてきたことにより、現代に生活する人類は便利で豊かな生活を送ることができています。私たちにとれば所与であっても、振り返るとすごいことだと考えています。

 

医療においても同じことがいえます。医療は血のにじむ多くの基礎研究や臨床エビデンスにより裏打ちされているし、医療機器や薬剤、医療材料や医療消耗品も日々な献身的な研究開発により生まれています。

 

医療は積み重ねられてきた知見や道具、システムにより成立しているのです。しかし、これらを利用して成果をあげるのは人です。

 

医療機関の職員が現場で一定の情報にもとづき、時間を管理しながら、合理的にカネを使い最適なモノを得て、医療を提供することで治療が行われます。

 

医師、薬剤師、看護師、検査技師、放射線技師、ME、テクニシャン、事務職等々さまざまな職種のプロフェッションが日々業務を行っています。

 

そこで必要なのが、業務のながれを明確にすることです。どのようなエビデンス、そして方法や手順により医療が行われているのかをしっかりと整理して標準化することが必要です。

 

標準化されていない業務があると、大まかには同じであっても、職員によりやり方が微妙に異なることもありえます。

 

ある人は早くうまく業務を行うことができるけれども、ある人はできるけれどもうまくいくのに時間がかかる、ということがあれば、医療の質を担保することは困難です。

 

リスクマネジメントは業務をできるだけ標準化することが着眼にあるし、クリティカルパス(治療の工程表)も業務を医療のエビデンスに沿って、もっともよいやり方で標準化することを目的としてつくられています。

 

また、看護の提供も観察、診断、計画、実施、記録、退院要約のプロセス(看護過程)で合理的に管理されています。個々の業務についてはマニュアルが整備されているので、安心して看護を行えると理解しています。

 

人材育成についても仕組みがあります。

 

職能等級制度を軸として考課方法が標準化され、職務基準がありマニュアルがあるために、また、目標管理があり業績の正しい掌握と考課を行う仕組みがあります。さらに整備された賃金テーブルがあるために、公平公正で平等な処遇を行うことができるのです。

 

業務フローが確立していない病院は、いつも曖昧な、そして納得できないことの積み重ねのなかで人のスキルに強く依存し、目にはみえないかもしれませんが、蛇行するように運営されています。

 

人の関係や、仕事のやり方、患者や家族からのクレームへの対応に多くの時間を割かなければなりません。

 

再度自院の業務が正しく管理されているのか、道具が整備されているのかについて病院トップは反芻する必要があります。

 

人材育成や改善活動も含んだ医療における網羅的な業務フローがあるべき形になることで、人が育ち、仕組みが見直され、より高いレベルでよい医療を提供することができるようになるからです。

 

なお、これらの考え方は全ての業種においても同じことが言えますが、医療はより安全に提供されることを仕事の原点とするため、他の業種よりも些細な手順を踏むことがあります。その意味で学ぶところも多くあります。

 

すべての事業のリーダーは、一度自組織の現状を見直し、課題を整理してみると良いでしょう。