権限とは、組織における個人がその立場でもつ権利・権力の範囲をいいます。権限には責任が付随します。ここで責任とは、立場上、当然負わなければならない任務や義務をいいます。
組織で使われる権限は、起案、審査、承認、(実施)、報告という行為に区分されます(権限行使の4形態)。
「起案」は何かを提案すること、お伺いを立てること、そして「審査」はそれが組織のルールや目的に合致したものかどうかをチェックすること、さらに「承認」は、審査を経て上程された事案の実施を許可することをいいます。
組織におけるすべての業務はこの3つの段階を経て実行されます。さらにその結果がどうであったのかを、最終権限者に「報告」するということで、ある業務が完結します(報告権限=報告を受ける権限)。
組織においては権限の行使をこのフロー以外で行うことはありません。特定事項において上記の何れかの権限を有するものが責任をもち、それぞれの行為を行い、業務を遂行します。
これらを整理し取り決めた規程を権限規程といいます。権限規程がなければ、誰が何を行うのか、責任をもつのかが不明瞭になり、業務が円滑に進みません。
公的病院には、権限規程が整備されていますが、民間中小病院では、それらを見ることは多くはありません。
多くの病院では、それぞれの階層における役割意識をもてない、役職に対する役割が不明瞭、権限を委譲されていないので役職が付されていても権限を行使できない責任はとらされる、といった状況になっています。仕事の生産性があがらない要因の一つです。
ここに、権限規程がないことにより、最終的に
(1)職位に付随する権限が不明瞭
(2)皆が行ったり、誰も行わなかったりすることが起こり不効率
(3)組織の指揮命令系統がうまく生かせない
(4)誰も責任をとれないのである領域の業務が進まない
(5)権限を委譲されていない、本来は権限をもつ者の不満が決断できない上司に集中してしまう
といったことが発生します。
もちろん、権限規程が明確ではなくても、決裁におけるルールが暗黙のうちに決まっていて、最低限の業務が進んでおり、支障が明らかになっていない病院もあります。
しかし、その場合であっても権限規程があれば発生しないムダなやりとりが、好業績の陰に隠れていることや、組織の優れたリーダーの負担に依存して事が運ばれている、といったことが起こっています。
うまくいっているように見えても、実際には生産性の低下を生んでいることに気付かなければなりません。
組織は、今は行えていない業務も含め、必要なすべての仕事の棚卸を行い、責任者を明確にするなかで権限を誰がどのように、行使するのか決定される必要があります。
組織は、権限の行使の形体を権限規程に取りまとめ、組織に開示することで権限(=責任)を明確にしなければなりません(なお、規程を作りさえすれば良いのではないのは明らかです)。
別途の仕組みにより役割を付与され権限を得て、やりがいを待ち、事に当たる中間管理職を育成することで、組織に発生する様々な問題を排除し、的確な組織運営を行うことが期待されています。