よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

アジアと日本の医療

 

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日本は国民階保険制度のなかで医療を提供し、多くの病院を抱える一大医療立国になりました。だからといって日本だけが優れた医療を提供しているわけではありません。

 

アジア各国の医療を見ていると、その思いをとても強くします。日本の医師や大学教授とともに北京の複数の病院を訪問し、ミーティングをした経験からすれば、医療水準は日本にほぼ追いつき、まだ日本が優れた領域もあるものの診療科によっては日本を超える状況にあります。

 

また、実際に現地を訪れた経験から、シンガポールは言うに及ばず、マレーシアやインドネシア、タイ、フィリピンの病院も、医療水準が日本より劣るという印象はありません。

 

「日本人は大きな勘違いをしている。アジアの国の医療は驚くほどレベルが高い」とクアラルンプールで診療をする日本のE医師から数年前に聞いた話はとても印象的でした(最近では大学病院のT教授から日本の優位なのは内視鏡。そのほかは海外の技術が高いと言われました)。

 

日本には大きな医療市場があったために、海外、とりわけアジアとの交流を積極的に行ってこなかった過去があります。語学の問題や日本の医師免許が直接使える国が少ないこともその理由です。

  

何れにしても、少なくとも自分達はアジアで1番と考えている間に、少子高齢化が進み1人当たりGDPは世界20位以下になり、医療制度改革が遅れ、さまざまな面でアジア各国に追い越されています。

  

アジア各国のターゲットは中国であり、タイやシンガポール、マレーシア、インドネシアなど医療が比較的進んでいるASEANの病院内勉強会などでベンチマーク指標に日本がでてこないことに驚きます。日本を見ていません。

 

彼らは欧米で学び、多くの患者を前に奮闘しスキルを身に着けている段階を越え、高いレベルで他国からの患者を治療できるシステムや技術をもった病院に変貌しています。

 

医療格差はありますが、JCI(Joint Commission International=医療標準審査)の認証を受けた病院も数多くあり、JCIがすべてではないものの、高い医療管理の(JCIは、絶対的な医療のレベルを担保するものではありません)レベルが伺えます。

 

ちなみに日本でJCI認証を受けているのは順天堂大学病院、国際医療福祉大学三田病院、赤十字足利病院、聖路加病院(順不同)等30機関です。アジアの状況は中国85、タイ61、インドネシア30、マレーシア16、台湾13、韓国12、ベトナム5(2020年5月現在)となっており、日本は健闘しています。

 

ただ、診療現場における対応や前述した言語の問題は根深く残っており、多くの日本の病院は、決して世界標準ではありません。日本だけで医療が成り立ってきたことの帰結なのでしょう。

 

すべての医療の質がアジア各国に比して絶対的に優れているとは言えないのです。

 

もちろん私は日本の医療の方が、全体として高い質の医療を提供していると確信してはいるし、全体としては国民皆保険制度や国民の行動により、平均的な医療にはかなりの優位性があるのは事実です。

 

ただ、イノベーションにより海外に目に物見せる医療を提供する環境を作れる余地はまだまだあると考えています。

 

事実、ASEANでの日本との医療のコラボについてのニーズが、引きも切らないことを、私は知っています。一般の方々との会話のなかでの印象ではありますが、ベトナムやミャンマー、カンボジアやラオスはその際たるものです

 

今はコロナでどの国も大変な状況に置かれ、ただちにインバウンド復活というわけにはいきませんが、国内での課題解決や、アウトバウンドの活用も含め、多くの公的・民間病院が活動を始めている海外との関係を強化しながら、これからの日本の医療をどのように変革させるのか、早急な取組みが必要です。