よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

未来をつくる中間管理職

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組織運営を一言で語ることはできません。

 

組織運営はこうあるべきだ、こう運営すると良いという枠組みは、様々な教科書により明確になっているのに、実務となると組織運営には、あまりにも多くの要素があり複雑だからです。

 

同じ業種でも、うまくいく組織とそうでもない組織、うまくいかない組織があります。

 

組織運営は難しいからこそ、そこに試行錯誤があり、工夫や創造が生まれ新しい価値がつくられます。マネジメントが面白い所以です。

 

ただ、組織の規模や業種の特性から管理職や監督職(以下中間管理職)の守備範囲を特定するのは困難であるとしても、一般論としての中間管理職の役割は意外とどの組織でも同じではないかと考えています。

 

組織運営はいくつかの要素により大きく影響を受けるものの、「中間管理職の役割とは何か」をしっかり押さえれば、中間管理職として機能を果たしているのか果たす者であるのかを判断することが可能です。

 

なので経営幹部であっても、中間管理職自身であっても、そして一般職すなわち、中間管理職の部下であっても、これからを考えるとき中間管理職の役割を理解することには意味があります。

 

まず、中間管理職とは誰を差すのかを明らかにしましょう。

 

組織の階層は、管理職(経営幹部を含めた管理職、そうではない管理職)そして監督職、一般職に区分されます。

 

ビジョン・政策立案、戦略立案、リーダーシップによる戦略実行が経営幹部の役割であるとすれば、管理職の役割は、リーダーシップによる事業推進、問題発見・解決能力部下の管理・育成です。そして、監督職は一定の守備範囲のなかで人材育成を行い、現場で問題解決を行いつつ業務推進を行うことが役割です。

 

もちろん、規模の大小により経営幹部が現場に入り陣頭指揮を執る組織も多く、経験では上場規模であってもトップセールスによる事業推進が必要な企業もあるし、管理職が経営幹部として機能している組織もあります。

 

さらに、監督職が機能せず、管理職が現場の仔細な管理を行いながらプレイングマネージャーとして活動する組織も多いと考えています。

 

なので、例えば部長など役員になり得る管理職の一部は経営幹部に含め、部長の一部、そして課長と監督職である係長を中間管理職として定義して、彼らの役割、すなわち「地位や職務に応じて期待される働き」を確認していきたいと考えます。

 

ということで、現場のリーダーである中間管理職の役割は以下のものです。

  1. 情報を伝達する役割
  2. チームをまとめる役割
  3. メンバーを育てる役割
  4. 業務を遂行し目標を達成する役割

1は、トップの情報を部下に、また現場の情報をトップに正確に伝えること、2は、チームが一体となり行動できるようチーム内の調整を行うことをいいます。

 

組織には上からの情報を小出しにして現場をコントロールしたり、伝わり易く噛み砕いたうえで適切に伝えない中間管理職が多く存在します。また、現場で発生した自分が不利になる情報を上にあげないことを常態にしている者もいます。

 

また、チーム一体になれるかどうかはフォロワーの信頼に依存するので、チーム一体への取り組みも重要ですね。

 

そして大事なこととして、3の個々のメンバーの課題を把握し、課題解決のために教育を行うことを挙げています。

 

結果として4の毎月どう行動すればよいかを考え行動し目標達成をする、が誘導されます。4が中間管理職の成果を問われ評価されるポイントになります。

 

ただし、4ができればすべてよしではなく、1から3のクリヤーを以て4が完結するというながれが求められています。フロックではなく、チームの実力を蓄積しながら継続的に成果を挙げるためには、チームメンバーの育成やチームとしての活動に成熟度が問われるのはいうまでもありません。

 

なお、この4つの役割はミッション、使命ともいえるもので、できるだけやってねという代物ではなく、「役目を負ったものとしてやらなければならない事柄」であるとしています。ある組織で、役割のことを任務、うまり責任をもって果たすべきつとめといっていましたが、とても重要なことだと理解しています。

 

ところで、組織目標を達成するためには、組織のくせを認識し、個人のくせを知る必要があります。組織のくせは文化や風土であり、チームの活動にも影響します。

 

たとえば一つのことが続かない、準備できない、その日暮らしでも咎められないといった文化があれば、それを修正するよう、チームのみならず、組織全体を変えていく努力を怠ってはなりません。

 

また、個人のくせで組織活動にそぐわないものも変えていかなければなりません。一人ひとりへの属性に合わせた指導や、当人と目標達成における役割への約束(コミットメント)を行うことで解決していきます。

 

さらに組織には、どうしても各部署には自分の組織の利益が一番という自己利益優先や、自分達の都合でものごとを捉えたり俺たちだけはうまくやろうというセクショナリズムがあります。これは、部署間衝突(コンフリクト)です。

 

どこでも人が集まり、いくつかの塊ができると多かれ少なかれどの組織でも起こりうる現象です。組織や人間のもつ本源的なくせともいえるかもしれません。

 

コンフリクトの解決のため、各部署が協力して共通の目標を達成するという一体感をもてる経営幹部のリーダーシップが必要ですが、中間管理職同士がしっかりと連携意識をもち、例えばシステムや人員、人の好き嫌い、意識の相違など、仕事が円滑に進むのを阻害するコンフリクトの発生原因を一つひとつ解決するために行動することが求められています。

 

自分のチームの目標達成のために、部署全体や組織におけるコンフリクト解消への取り組みが必要です。

 

いずれにしても中間管理職は、平易にいえば、自分が楽しく仕事をすれば人はついてくる、という思考をもつことが有効です。

  • 人は一人では仕事はできない。
  • 組織目標を達成するためには皆の協力必要
  • 上司や仲間、部下の協力があってはじめて成果が挙がる
  • 自分はこの組織で何をしたいのかを常に考えて行動する
  • 楽しいという感情は自分のやりたいことができていることから
  • 達成感を感じたいと思い達成感をイメージして行動する
  • 組織の目指すところ(パーパス)に共感し、組織目標と自分のやりたいことをすり合わせながら組織目標を達成することが、自分の達成感につながるよう行動する

 

そのために、中間管理職は、

  • どんな仕事がしたいのか、
  • 誰と仕事をしたいのか、
  • どんな自分になりたいのか、
  • どのような仕事に精通したいのか

等を整理する必要があります。

 

自分で整理できていないときには、上司が本人の性格や得意分野を分析し、このような仕事が向いていると自分で確認することで、スタートすることもよいかもしれません。

 

過去実績を積み上げてきたように、目標を持ち行動しているうちに、あれができた、これができるようになったというように徐々に自信がつき、これを自分のパープルカウ(比較優位)にしようというものが出てくる筈です。

 

既に組織内で注目される存在になっているのであれば、その評価を基礎として主観達成感を得られる目標を設定し活動することになります。

 

厳しい環境を迎え、多くの組織は未来のはっきりした姿を思いあぐねています。

 

未来がうまく描けない今こそ、将来の飛躍に備えるために、中間管理職は上記を受容し、課題を解決するための内部改革による足固めを行う必要があります。

 

今のうちに腰を屈め現場で未来につながる準備ができるのは、各組織における中間管理職であることは間違いありません。彼らに大いに期待しています。