よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

組織の形と各階層の傾向(くせ)

f:id:itomoji2002:20220212101245j:plain

組織には形があります。どのような形を採用するのかにより仕事の進め方や働く者の役割、機能が決まります。一般的な形にはピラミッド型組織、文鎮型組織、マトリックス組織などがあります。

 

ピラミッド型組織は最上位の一層に経営者(トップマネジメント)を設置し、下位の二層に中間管理職である部長、課長、係長、主任、そして三層に一般職が配置されピラミッドの形で権限の構造を表現する組織です。多くの組織がこの形態を採用しています。指揮命令系統が1つであり運営がシンプルに行えます。

 

文鎮型組織はトップマネジメント以外は全員が同等の立場にある組織でフラットな組織です。平らであるものの経営者の位置が持ち手になる文鎮に似ていることからそう呼ばれています。中間管理職を置かずチームやチーム間で仕事を進めます。自立した専門職のスタッフが多いとうまくいく印象があります。

 

マトリックス組織は、職能や事業部の2つの系列を縦・横に組み合わせて網の目(マトリックス)のようにした形態の組織です。マトリックス組織では、スタッフは職種により職能別の組織に所属だけでなく、別途他のラインやプロジェクトにも所属しており、職能別、プロジェクト別、地域別等柔軟に行動します。指揮命令系統は2つありルールが整備されていなかったりリーダー同士のコミュニケーションがとれていないと業務の優先順位が混乱するデメリットがあります。

 

このような形式はとらないまでも実務上では、ラインで仕事をしながらプロジェクトに参加するときに同様の課題は起こることがあります。イメージしやすいですね。

 

組織運営の考え方により組織の形は変わります。環境や業務遂行に合わない形の組織を運営することでさまざまな問題が生じます。

 

なので組織は内外ニーズに合わせて変化するものであり、今までも時代の移り変わりのなかで多くの組織の形が提案されてきました。

 

最近でいえばフレデリック・ラルーが2014年にReinventing Organizations(進化した組織)で紹介した経営モデルであるティール組織があります。ラルーは組織の変革フェーズをred(赤)、amber(琥珀)、orange(橙)、green(緑)、tealの色別に区分しティール(青緑)がよいと説明します。

 

ティール組織はトップマネジメントや中間管理職が部下の管理を行わなくても、専門家や経験者の支援を受けながらスタッフが主体的に目的達成のための行動を起こす組織です。興味があれば調べて下さいね。

 

このような組織は「スタッフに自立を促す」考え方や一部の仕組みを取り入れたとしても、特殊な業種で成立するものであり、一般的には導入や運営が困難だと容易に想像できます。

 

さて、前述したように多くの組織がピラミッド型組織を運営しているので、ここでは同組織の傾向(課題)について議論します。

 

ピラミッド型組織では、各部署には自己利益優先、やセクショナリズムがあり、部署間には原則衝突があります。これは上司の思考や組織の文化に影響を受けるものですが、職員一人ひとりも同じ傾向をもっています。

f:id:itomoji2002:20220211121301j:plain組織に対する忠誠心というよりは人間のもつ身内を大事にするという考え方から来ています。周りの仲間を大切にする村社会や、日本の文化に影響を与えた儒教の思想が根底にあるのかもしれません(儒教では徳治主義をとり法律よりも徳を優先するため、論語のなかでは仮に父親が悪事を働いたとしてもそれを隠すのが立派な人間の行いと教えています)。

 

各部署に自己利益優先やセクショナリズムがあるため、結果として悪い情報は下から上に上がらず、有用な情報は上から下に降りづらいという傾向があります。

 

ただ単に報告や連絡を懈怠しているだけではなく、組織にとり悪いことを上司に報告して不利益を得たくない、また、トップからの中間管理職への話や指示は部下には一度に伝えず小出しにして自分の立場を優位に活用しようといった心理があります。そのことで迅速で間違いなく合理的な組織運営が行われづらくなります。

 

また、部署間には原則衝突があるために、仕事が部署間のどこかで止まり、その調整に手間取り仕事が蛇行しながら行われる傾向にあります。部署のリーダーやスタッフ間の好き嫌いや思い込み、人員配置やスタッフの対応や行動に課題があるなどの理由によるものです。

 

組織として上記の状況に介入し問題解決を行うとともに、何よりも組織一体となれるビジョンや戦略、決めたことを必ず行えるガバナンス、トップマネジメントのリーダシップによる、仕事の仕組みの見直しや評価・教育制度の整備が必要です。どの部署も協力してこのミッションを達成しよう、そのためには些末な感情や障害を乗り越え各部署が連携して成果を挙げようという勢いが生まれるからです。

 

自組織の形を振り返り、その各層にはどのような傾向(くせ)や課題があるのか考え、果たして現状の組織の形やマネジメントのあり方はこれでよいのかを見直してみる機会を持ちたいものです。