よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院のサステナビリティ

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組織であれば、それが医療を生業(なりわい)としていたとしても運営における経済合理性を考えなければなりません。

 

平均的なトップは、適切な倫理観をもち病院を経営しつつ利益を出さなければ、キャッシュを得ることもできず、結果職員を雇用し続けることや設備投資ができないことを理解しています。

 

良い医療を行っていれば利益もついてくるという古典的な考え方で病院運営を行っているトップもいますが、それではうまくいきません。

 

もちろん利益は患者評価の証といえるので、病院は地域や患者から評価される、総合的な医療の質向上への取組みを欠かすことはできません。

 

構造的に利益を出す仕組みをつくりつつ、同時に医療の質を上げるというながれ、そして補足的に医療の質向上により生産性向上を得て利益を出す、というながれをつくりだす必要があります。

 

常に医療の質と財政のバランスをとる運営が求められる所以です。

 

病院を訪問して、つくづく思うのは現場の思いと経営サイドの考えの相違です。

 

現場にはときに想像を絶する忙しさがあり、時間がない、手当てが欲しい、人を増やして欲しい、システムや機器が古いので更新して欲しい、職場環境の整備をして欲しい等、といった現場の強い思いがあるのはよく分かります。

 

ただ本来は、職員は現状を所与として、職員がどうスキルを磨くのか、どのように改善による生産性向上を図れるのかを考え、また投資を行うときにはその必要性について十分検討し、採算分析を行うことで結論を出し、経営に提案しなければなりません。

 

多くの場合、職員にはその発想がありません。経営サイドは、現場の声に耳を傾けて客観的かつ合理的に状況を分析し、現場への適切なアドバイスを行い、現場にある本質的課題解決を行う必要があります。

 

もちろん、経営サイドにマネジメントの発想がなく、やみくもな経費削減を行うだけでは、現場は不信を募らせ持てる力を発揮できません。

 

必要なのは、現場の納得できる、しっかりした考え方や合理的な発想に従い病院経営を行うことです。そのことにより職員も経営サイドを信用し、信頼して仕事ができるようになります。

 

職員がやる気になるためには、次の要因への取り組みが必要です。

  • 前向きな組織文化
  • 自分が受容できる夢のあるビジョン
  • (自分と無関係に)成長する組織
  • 自ら成長できる機会の提供
  • (自分と関わり)成長する組織
  • 達成感を得られる組織
  • 尊敬できる上司の存在
  • 前向きで相手の立場に立つ仲間
  • 成果に高い評価を得て感謝されること
  • 自らの成長に応じた処遇

 

そして何よりもそうした環境をつくるガバンスの仕組み

  • ビジョン
  • 中期経営計画
  • 事業計画
  • 経営方針
  • 予算統制制度
  • 目標管理

といった体制のマネジメントのなかで、あらゆる制度整備が適切に行われるとともに、PDCAが継続され、「決めたことが必ず行える」文化がつくられる必要があります。

 

これらは当たり前のマネジメントのフレームワークではありますが、なかなかできていないところが多いのも事実です。

 

先ほどの職員の「時間がない、手当てが欲しい、人を増やして欲しい、システムや機器が古いので更新して欲しい」という思いも、上記の仕組みや文化のスクリーニングが行われたのであれば、より現実味のあるニーズとして捉えることができると考えています。

 

良い医療を行うことは病院の使命であり、徹底的に追及すべきものです。一つでも比較優位性をつくり、価値を高めていくことが必要です。しかし病院の利益、財政を同時に考えたうえでの、良い医療であることを忘れてはなりません。

 

益々厳しくなる医療環境において、経営サイドはいうまでもなく、職員においても冷静かつ合目的的に議論を行い、常に「医療と財政のバランス」を念頭に行動しつづけ、持続可能性、すなわち継続的に社会貢献できる状況をつくりあげなければなりません。