よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院において必要なもの

一般の企業であれば、人が雇用されたときに彼らの役割が明確に示され、組織のなかで彼らの機能を高めつつ、組織力で仕事を進めて行くことが大半です。

スーパーにしても、工場にしても、銀行にしても、雇用された者が組織のなかで成果を出すよう訓練され、組織が組織としての仕組みをもち、その仕組みのなかで仕事が進んでいく傾向が強いということができます。

しかし、医療の場合には専門資格をもって現場に入り、医師は医療、看護師は看護、検査技師は検査、放射線技師は撮影というように一人ひとりの職業自体が何をするかを明確に表す仕事を行うことで成り立っています。

したがって極端な話、医療機器と必要な物品がある場所に置かれていれば、各職種の者が集まるだけで、患者さんの治療を始めることができる状況にあります。

他の組織のような仕組みも必要なく、最低限の対応を行うことができる業種であるということができます。組織マネジメントがなくても成果がでる、ということは、それらの必要性を認識しなくとも、個人が懸命に頑張れば成果をあげることができるということを意味しています。

一人ひとりの属人的なスキルに依存する傾向の仕事であるということができます。しかし、無駄や不効率を自動的に発見しつつ成果をあげていくことができるかといえば、自動的にこれを行うのには限界があります。

それを気付かせる部署や、仕組み、解決するための組織が必要となります。徐々に組織ができあがるにつれ、生産性があがり、質をシステムとしてあげていくことができるようになります。

現状をよしとしてこうしたことのために力を割かない病院トップと、その必要性を機敏に感じ取り、マネジメントを行い仕組みをつくり、マネジメントを徹底する病院トップでは、どんどん差がついてくると思います。

明確なデータに基づいた医師とのコミュニケーション(ブリーフィングシステム)を軸として戦略を決め、中期経営計画に落とし、年度の目標を具体的かつ部署毎に決定し、医師との毎月のミーティングを行いながら病院情報を共有し、それらが達成できるよう支援する。

人事制度やマネジメントツール、現場のツールも現場任せにせず、指標管理や部門別、患者別疾病別、さらには経営意思決定会計といった管理会計を基礎とした行動誘導を行っていく。

とりわけ部署間コンフリクトをなくし、スタッフ一人ひとりが働き易い環境をつくりだす。トップレベルといわれる病院では、こうしたことを時間をかけて構築してきています。

結局は、組織として存続することで、患者さんによい医療を提供しよう、という全職員の思いを喚起できる病院幹部の行動にすべてはかかっています。私たちホワイトボックスは、そうした思いのある経営者の元で働くことができたとき、大きな喜びを感じることができています。