よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

リスクマネジメントの体系的変革

いつもリスクマネジメント委員会やリスクの資料(レポート類)をいただき、ここで話たいことが沢山ありますが、守秘義務にかかることが多く事例で説明できません。

数年前、私の講演会に大学の脳外の教授がきていただき、少し話していただいたことがあります。
「事故は絶対なくならない、だから常になくすように努力する」というお話をされていました。そのときは、絶対に撲滅してやるっという決意をした記憶があります。しかし、その先生のおっしゃることは間違いなく、その後リスクマネジメントの仕組みをつくル仕事をしてきたなかから、やはり結論はなくならないということでした。

課業分析、マニュアル作成、本来の接遇(痛みをなるべく感じさせない、恐怖心をなるべく感じさせない、羞恥心をなるべく感じさせない…という8つの項目からなる医療技術そのものの質を医療の本来のセ接遇といっています)の開発、展開による積極的な事故抑止、事故防止ソフトの開発販売によるシステムアプローチでの対応、巡視活動の推進、院内セミナー勉強会の推進、平均在院日数短縮からの事故予防、入院診療計画書の予実対比からの原因分析における事故発見…等々、もういくら挙げても挙げきれないほどリスクマネジメントについては企画をつくり、作業をしてきました。

それは医師の起こすインシデントやアクシデントに対して無力だからです。手術室のなかでの仕事は医師の技術技能を中心としたチーム医療ではありますが、結局はオーベン、ネーベンの総体としての技術技能
を前提とした力量に依存してしまうからです。

しかし、医療の質が個人の技術技能の向上と仕事の仕組みの見直しであるとすれば、医師を除外しても、看護師さんやコメディカル他、医療スタッフの医療の質を高めていくことで、医師が働き易い環境をつくることができたら、間接的には医師に関与することができるとも思います。

また、もちろん医師の指示がでたときに的確に答えていけるスタッフがいることが、実は医師のスキルを高め、あるいは最大限発揮することになるという仮説もあります。

この範囲で、これからも小さくとも継続的に、最後にはドクター領域を除くすべての領域でのリスクマネジメントの実効性を高めるために仕事をしていきたいと考えています。

理念や意識のうえで優れたトップ(医師)が、医師を鼓舞し、動機づけ正確かつ円滑に医療を推進していくときに、使命感と慈悲心に裏付けられたプライドをもった医療ができるよう、医療スタッフを動機づける仕掛けをもつことが期待されます。
仕掛けとしては、人事管理マターを前提として、単にDPCに向けた単なる財務や管理会計的な仮説ではなく、現場医療だけの仮説ではなく、それら融合した新しい全体としての経営手法を採用することが必要です。

アクシデントを背中を丸めてつぶすのではなく、高い医療の質を求めることによって自然とアクシデント
が予防できる、といった考えを採用するための検討の余地はあります。