よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

DPC及び後期高齢者医療を前提とした仕組みづくり(1)

 今日は関東のある病院でミーティングをしました。そのときの資料です。何回も説明していることではありますが、さらに整理をしていただきたく、掲載します。

1.はじめに
   DPC及び後期高齢者医療について徹底した検討を行う必要があります。

2.内容
 (1)DPCについて
 DPCに向けた取り組みを貴院では行っておりません。10:1の看護基準をもつ53万床の病院のうち29万床が昨年までに、そして今年は10万床の病院がDPCの手上げをして準備病院になろうとしています。
 40万床しか急性期病院としては残さないという厚労省の方針のもとで、病院としてのDPCへの取り組みをしていない貴院では、22年にDPCが全適されたときに
制度に対応することができず、結果として業績を落としてしまうことになります。※
 今後DPCに対する取り組みをしない、あるいは出来ない病院は、回復期病院として亜急性期を担うことになります。貴院としてどのような方向に進んでいくのかを十分検討し、急性期病院として活動していくことを決定するのであれば、イコールDPCへの取り組みを早急に開始する必要があるでしょう。
   
DPCシミュレーション
 DPCが採用されれば、いまの出来高と比較して何がどう変化し、いくらのロスがあるのかを検証。また、DPCは主疾患として何をとるのかにより点数が異なりますし、また入院期間におけるDPCの組み合わせによっても点数が異なります。これらについて研究を重ね、自院の診療体制における最適な医療をどう行うのかについての方針を決定する必要があります。

 ②増患対策
 DPCにおいては、在院日数をかなり短縮することになりますので、ベッドを埋めるためには、増患を行う必要があります。
 ⅰ)現在の標榜科による治療をより推進する
 ⅱ)プロモーションを行う
 ⅲ)新たな診療科を標榜し、従来来院していなかった患者をとる
 といったことが必要となります。後に説明するように後期高齢者医療制度において、
75歳以上の患者が外来受診を抑制されるようになれば、外来依存体質は瓦解します。いまのうちに増患のための対策を立案することが必要です。

 ③在院日数短縮
 DPCにおいては、クリティカルパスを多用し、科学的な管理を行うことが求められています。リスクマネジメントの徹底により事故やインシデントを起こさないことや、一人ひとりがスキルをあげ、生産性を高めていける仕組みづくり、そのためのマニュアル作成や教育制度の徹底といったことが求められているのです。クリティカルパスについても、より精度を増し、常に改定が行われる体制整備が望まれます。
 勿論、地域連携パスや、外来パスにより、より一層の在院日数短縮を行うことになります。
  
 ④コスト削減
 DPCは毎年さがりつづけます。なぜならば、どこかの病院が過小診療を行い、計算上の原価を引き下げると、それに応じて点数を改定するということが繰り返されるからです。
それは、自院が利益を出そうとすると、ひきづられるようにDPCの点数が下がるということが繰り返される結果、アメリカのように(アメリカはDRG)、20万円の盲腸手術が外来での5万円になるといったことが平気で行われるようになることを意味しています。

 したがって病院側は常に業務改革を行い、全体のながれについていける体制をつくりあげていく必要があります。業務改革を継続することが必要です。

 ※DPCにおいては、現在の出来高と比較して明らかに点数が下がる仕組みとなっています。また、病院全体の平均在院日数という視点での入院基本料は原則としてなくなり、一疾患当り在院日数が決定されていますから、どこかで調整するということがあまり意味をもたなくなります。一人ひとりの治療に対し、どのような成果をあげるのかが今後の医療の基本的事項となります(続く)。

「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」