よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

DPC及び後期高齢者医療を前提とした仕組みづくり(2)

(2)後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度が平成20年4月から施行されます。4月21日に発表されたように、公的な資格として総合診療医が認定され、かかりつけ医として後期高齢者の看取りまで行うこととなりました。

後期高齢者医療においては、外来の診療報酬包括化と、75歳以上の高齢者は、まずかかりつけ医である診療所へ受診し、のちに紹介状をもたなかれば病院へ行けないという、公的かかりつけ医制度が導入されることになっています。

老人保健制度の見直しを行ない、保険料の負担構造を変更することと、フリーアクセスを制限し、高齢者のサロン化や複数医療機関への受診を排除することにより医療費の削減を行うことが制度導入の目的となっています。
   
したがって、外来依存している病院のなかには、制度が機能すると、業績を悪化させるところがでてきますが、逆に手術を軸として活動している急性期病院にとっては、紹介による効率よい治療や入院が誘導されます。診療所にとっても、増患ができるチャンスではあります。しかし、制度自体にはさまざまな課題があり、議論をする必要がありそうです。

制度はまだまだできたばかりであり、医師への点数が高いということは、届出をしていない医師が往診した場合と、在宅療養支援診療所の医師が訪問したときで差がつくことについて理由がわからないなかで、地域住民は診療を受けなければなりません。
後期高齢者医療制度に付随して、公的かかりつけ医制度が導入されるということであり、在宅療養支援診療所とどのように違うのか、同じなのかを見極める必要があります。

うがった見方をすれば、在宅療養支援診療所の数が思ったように増加しない現状において、義務的に、公的かかりつけ医制度を導入し、標榜している科によっては、患者からの申し出があれば高齢者の登録を受けて患者を看る、ということが開業していることの条件であるということになる可能性もあるといわれています。

さらに、厚労省は、2008年度診療報酬改定で、夜間・休日の急患診療に携わる開業医を優遇する報酬体系とする方針をだしました。現場で厳しい労働を強いられているといわれている勤務医の負担を軽減するという主張は、ある意味正しいという思いはありますが、他方でもこれまで以上に多くの患者さんを診なければならない開業医の負担は大きくなります。
何れにしても、急性期は要件が厳しく、療養型についてもベッド数が制限されるなかで、医療機関の構造変革が行われている現状において、外来機能や療養支援の機能をもつ診療所の役割は益々大きな物となることは間違いありません。開業にあたって、あるいは診療所を継続、拡大していくためには、在宅医療に無頓着ではいられないのも事実です。
なお、厚労省は19年4月17日、「第2回医療構造改革にかかわる都道府県会議」を開催し、医療構造改革案を公表しました。
その内容は、複数の開業医を地域でチーム化し、必要な患者さんが24時間診療を受けられるように、休日や夜間診療を当番制で担当します。また、ケアマネジャーと連携して高齢者のかかりつけ医として介護サービスにあたることなどが骨子です。

 これらも一連のながれのなかで、後期高齢者医療に先立つ環境づくりであるといことができます。貴院にとって外来患者のうち75歳以上の患者がどれだけ減少するのか、それ以前に外来診療が定額制になったときにどのような影響があるのかについてシミュレーションをしてみる必要がありそうです。
 さらに、今後、後期高齢者の外来が包括になったときの対策や、どのように連携を強化して外来患者を確保するのかどうかについての検討を早急に行わなければなりません(続く)。

「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」