よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

必ず宝物を捜すことができる(医療の原点回帰への道)

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 一次パスを懸命に作成している病院の委員会に出した資料です。最近はDPCが議論されるなかで、パスが最も重要なツールであるといわれながら、検査の外来化、ジェネリック化、セット化といったようなことでDPCへ突入しようとしている病院が多くあります。2年しばりで昨年手上げしたところはDPCを採用できない、といわれていますが、そもそも体制整備をせずにただDPCを適用したら、22年以前に調整係数なきあと大赤になります。

 ということから、やはり医療の原点回帰、医療の質を高めるための周辺業務が完成しなければ、DPCへの移行は手控えるべきでしょう。まずは今の段階で、勿論DPCは睨みながら必要とされることは行うものの、目標管理制度化における業務改革や、職務基準を利用したスタッフの技術技能向上のための活動を行うなかで、パスを高度利用できる体制をつくりあげることが急務です。優先事項です。あとでわかると思います。DPCに踊らされることなく、本質論で実質的な体質強化。診療報酬請求のための仕組みであるDPCは医療の質を変えると考えていたら、私は間違いであると考えているのです。

 厚労省も言っていますが、DPCに在院日数を短縮する直接的誘因はないということです。増患できる戦略や体制があり、そのうえで実質的に質の高い医療を実施し(手術件数は増加)、在院日数を短縮する、ということが基本です。外来はできるだけ他病院や診療所で管理し、紹介入院がベッドを埋めるまでになればよりOKということで、地域医療支援病院的な生き方が最も急性期病院らしい急性期病院ということになるのでしょう。
 
 とまれ、医療の原点回帰ということであれば、まず仕組みづくり。マニュアルやリスクマネジメント、
そして教育、パスには執着せざるを得ないということです。


1.はじめに
 クリティカルパスは、そもそも、ある必要性に応じて整備、運用されます。したがって、単にパスを作成するのではなく、その成り立ちを理解したうえでパスに向かい合わなければ、本来のパスが生かされないことになります。
 以下、その説明を行います。

2.内容
(1)検査、診療手順の提示

(2)検査や診療内容の理解
 
(3)標準化・体系化 
 
(4)チーム意思疎通
 
(5)業務改革
 
(6)在院日数短縮
 
 というのが本来的なパスを作成する目的であるということを理解していると思いますが、それらを根拠とするかたちで、次のものが議論されなければなりません。

(7)外来パス
 DPCに向けた対応を行なうため、外来パスを作成する必要があります。外来パス
はDPC下においては検査を入院してから行うのではなく、外来で検査をしたのち診断を行い直ちに手術に入る、といった体制を整備するための対応をパス化したものです。コスト削減(包括では収益化されない)、在院日数の短縮といったダブルでのメリットが病院にあります。

(8)アウトカム評価
 アウトカム=ゴールの評価を行う必要があります。ゴールが曖昧であれば退院指示が正しく行えません。したがってアウトカムを定量化し、客観的な視点から評価をしていくことで、患者さんも病院、双方が納得できる体制をつくりあげることが求められます。来年から回復期の患者さんのADLについての評価が行われるようになるという話もあり、パスの役割がより大きなものとなる、といわれています。

(9)地域連携パス
 在院日数短縮をした結果、治療が完了しないまま退院ということになる可能性があります。治癒ではなく快癒といったながれのなかで、どうしても、早期に退院してもらうことになりますが、そのための連携パスが必要となります。現在では頚部骨折パスが点数化されていますが、脳や心臓についての連携パスが点数化されるという話もあり、また、他の疾患についても明らかにこれからは連携パス化が進むものと想定されます。
一つのパスを半分に割り、前半は急性期病院で、後半は回復期病院で、といった区分けができるよう、連携パスを活用してくことが期待されています。

(10)患者別疾病別原価計算 
 パスは治療行為を明確にした道具であり、したがって当該患者さんに対するあらゆる治療行為を表した資料の一つです。それらを使うことで患者さんの治療原価を計算することができます。治療原価を計算することが患者別疾病別原価計算ということになります。パスを作成しなければ、原価計算もできないということになります。

 しかし、パスには記載している行為はすべて請求できるという類のものであり、実際には請求できない行為、例えば清拭や、シーツ変え、消耗品の利用などについてはパスに記載されていません。したがって、それらを別紙に記載し、パス行為とともに、コスト集計することができれば、より詳細な対応ができるようになります。

3.まとめ
 クリティカルパスを作成することの意味をよく理解したうえで、いまあるパスを貴院のかたちに変えていく、また新たに貴院のパスを作成するという作業を継続していただきたいと考えています。
 いずれにしても、まずパスを作成し続けることが大切です。
60点でもよいので、パスを多数作成し、運用し、それから問題点を発見し、さらに修正するというながれをつくりあげることが必要です。


 といったことでクリヤーしています。で、着実に目標を設定して仕事をすれば、必ずあっというものが見つかります。先日食事をしているときに、とてもすてきな茶碗蒸しから発見された色鮮やかな銀杏です。しばし、この宝物に目を奪われました。外からはみえない。しかし、中には必ず、すてきなものが眠っている。これをどう掘り起こすのか、それが医療原点回帰の思想であるとそのとき思いました。
 この話は、ちょっと無理があるような気がしないでもありませんが、
本当です…。