よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

勝ち残る5段階で進めるDPC戦略(4)

〔第3段階 質を向上させるための利益プールからのコスト配分〕
ところが、この段階にくると医師は少し不満がでてきます。なんでもかんでも削減しろ、収益をあげろという動きはスタッフや医師のモチベーションを下げてしまうことになりかねません。

よい医療をしたい、患者さんのためにというメンタリティが維持できなくなることがあるからです。そこで、第3段階があります。第3段階では、医師のモチベーションを上げるため、一定のコストをかける段階です。第2段階で病院全体の損益構造や、診療毎の原価が把握され、利益をコントロールすることができるようになります。

いくらの利益を得るためには、このような診療活動をしていこうといったおおよその利益計画をもつととともに、この治療をすれば、これだけの利益があがるという情報を確保することができるようになるのです。

この段階からは、ではこの利益は診療のため患者さんに返そう。もっとよい医療を行うための原資にしようという戦略をとることができます。すなわちこれだけの使っていい利益をプールしました。医師の皆さんの裁量で、患者さんのために、この資金を使ってください。というアナウンスメントやサポートを行うことになります。

検査をしたい、撮影をしたい、ジェネリックを使いたくない、抗生剤はもう少し投与したい、この治療をしてあげたいといったことについて、医師の医学的な要請や、医師のやりたい医療をしたいとう思いをこのプールから捻出することになります。

その場合には、病院の考えとして医師毎に裁量の枠を決めるというやり方や、治療毎にパスを変えていくという普遍的な利用の仕方を採用することもあるでしょう。いずれにしても、いったんコストを低減する方向に進んだものを、揺り戻しをかけ、コストを患者さんのために使うといったながれをつくりだすのです。

もっとも、利益プールは当初つくりあげた利益のうちのどの程度とするのかについては、病院の政策ですから、最終的にどれだけの利益があればこの病院が運営できるといった事業計画や資金計画により、判断をしていくことになります。

当たりまではありますが全部使ってしまうということは意味がなく、医療の質を向上させ、病院のブランドを高めていくために、本当に良い医療をしたいという病院の姿勢を示していく部分としてブーリングされた利益を患者さんのために使うということが第3段階のテーマとなります(続く)。



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