よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

DPC5段階説。分かりやすい整理

ホワイトボックス社は、DPC5段階進化説を唱えています。まず第一段階は、出来高DPCの比較やベンチマークにより、点数を合わせる行為、すなわち何をやめたら収益をDPCに合わせることができるのかといった作業です。

まさに、医療行為を止めたり、検査・撮影を止めたり、投薬をしないようにお薬をもって入院してもらうといったことや、ゾロを使うといったことがそれです。

これはどちらかというと、DPCの求めている医療の質を維持しながら効率をあげる線を狙う作業です。この段階で危機感をもって、パスの日数をⅠ、Ⅱ期間に合わせたりする時期でもあります。

そして第二段階は、そうはいっても、病院の損益構造は病院によって異なるため、自院の原価を把握し、そして現状を認識することや、原価のどこを低減する可能性があるのかについて行為そのものをなくすだけではなく、より精緻に原価側から理解をしていく段階です。

部門別損益で一次集計をすることで間接部門や補助部門の予算を確定したり、配賦前の原価自体を引き下げる活動を行う段階です。そもそも、ここでは増患をすれば、固定費の患者一人当たりのコストは低減するため、増患を真剣に考えるフェーズでもあります。

前後連携や、介護領域との連携、プロモーションや、本来の戦略を明確にして病院の特徴を出し、患者を呼ぶ特徴ある治療について議論する段階でもあります。

ブリーフィング制度を導入し、医師に管理指標情報や原価情報を提供し、何をしたいのか、どうすれば自分の治療を外部に伝えていけるのかといったことを決定することや、スタッフにおいては、医療看護、医療周辺行為のスキルをあげ、生産性を向上させる段階でもあります。

さらに第三段階は、そのようにして管理した利益の目標額を決定し、それを充足した余剰分をどのように医師のやりたい医療に投入していくのかということをシステム化するフェーズです。

すなわち、病院全体の損益分岐点を引き下げ、そして個々の治療の原価管理をしたうえで、増患する。利益をコントロールしたうえで、病院全体の利益をプールし、そこからどれだけ各科の先生が利益を使ってよい医療や自分が医師として求める医療をしていくときに病院として支援をしていく段階です。

第一段階でやりたいことを絞り、行為を外来化、あるいは止めてしまったものがあるとすれば、それを第二段階で検証し、利益が出るように増患するとともに原価企画したうえで、利益をプールし、第三段階でおもいっきりその一部を投資や医療行為のコストアップに振り向けることで、医師のイニシアティブをより強いものとしていくことを言っています。そして、第四段階に入ります。

第一から第三まで来たことにより、結果として強みがグンと増し、病院の特徴をより強くする。そして経験曲線を下方に伸ばし利益をさらに出す。ここでは本来の医療が行える体制が整備され、DPCを単なるコスト削減の道具としてではなく、医師の主導のもと、医師の力を120%引き出すことができるフェーズとなります。

このあたりにくると第二段階での必要性からはじまったスタッフの教育や業務改革といったものが定着し、接遇についてもクレームについてもある程度の領域を担保できることから、患者さんからはスタッフも医師も合目的<患者さん本位>に仕事をしているとの評価をいただき、信頼、信用、安心の医療、すなわちブランドが生まれることになります。

第五段階は、さらに病院の強みを発揮するため、ある程度治療の内容が絞られ、ポートフォリオが組まれることになります。すなわち、いわゆる一般企業でいえばPPM<プロダクトポートフォリオマネジメント>医療でいえば、PCM<ペイシャントケアマネジメント>が採用され、その病院の経営資源を最適化する治療の組み合わせが決定してくることになります。

どの治療をすれば、利益も上がるし、治療効果も高い、そして患者さんも安楽であるといった診療科や治療の組み合わせが当該病院で決定される段階です。国はある病院があれもこれも医療を提供するのではなく、地域で役割分担をしながら強みをつくり、それぞれがある分野や領域で特化できるようになることが全体として医療の全体最適を得る方法であるという仮定でDPCを組み立てていると我々は考えています。

であれば帰結はそうしたPCMということになるわけですが、プロセスを経てそこまでこないで、第一段階からいきなり第五段階にくると、間違った方向に進んでしまうという懸念があります。

もちろん、地域的にそうしたロジックが成り立たない病院が地方にはあるのですから、二次救急をどのようにするのかという意味では、PCMを超えた国からの支援が必要になるという議論は排除できません。最大限努力したうえで、すなわちすくなくともすべての急性期は第一段階から第四段階まではすべてクリヤーしたうえで、第五まで進める病院と進むべきではない病院、進んではいけない病院に峻別されることになると考えています。

ただ、原則は第一段階から第五段階までジュンを踏んで進化していくなかで、医療の質は向上し、結果として効率はあがり、コストを引き下げ、その分、多くの患者さんを救うことができる医療体制が整備されるという考え方に立つことが必要であると思います。

今の医療費を増加せず、少ない人員で、多くの治療をしていくためには、誤解を恐れずにいって病院数を集約し、大規模化し、高度施設化し、教育を徹底し、ある程度の領域で専門化していくことが適当であるとしているのです。この仮説の検証をこれから日本全体でしていくことが適当であるとホワイトボックス社は考えています。



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