特急カムイは12分遅れで旭川駅に到着しました。
19時32分です。それから改札を脱兎のごとく通りすぎ、タクシー乗り場に走りました。私の前には多分同じ理由によりタクシーに乗らなければならない人たちが何組か、改札で手間取っていて、彼らを追い越して、旭川駅のコンコースというか駅前広場を斜めに横切り、タクシーが並んでいるところに一目散に走り抜けたのでした。
その間に何人かの人に触れましたが、その後どうなったのかについては振り返る暇(いとま)もなく、分かりません…。そして斜めになりながらタクシーになだれ込み、「く、くうこう」と、息も絶え絶えにつぶやきました。運転手さんは「空港ですね。もう無理じゃないですか~」というなさけない言葉、よくみると沢田さん、少し気が弱そうかなとか思ったりしました。
運が悪いことにタクシー乗り場は、一部駐車場にもなっていて、入口をふさぐように一台の車が前をさえぎりました。
突然のことで、それは意図的なのか、偶然なのかは図りかねていると(偶然に決まっていますが…)、その間になんと、な、な、なんと、後から3台のタクシーが、陰謀により私を阻止している車に手こずっている間に、私のそばを、まるで、「バイバイ~、ほなね~ぇ」といっているような感じで通りすぎていったのです。
「運転手さん、おねげいしますだ~、抜かれだでねぇかよ~」みたいな不満をあらわにすると、運転手さんはやっと火がついたように、「先に行った車と一体になって空港にいけばたいして変わりはないですぜ」とか言っちゃったりして。それからというものびゅんびゅんに車を飛ばし始めました。
私は旭川地域は実はめっぽう慣れています。旭川から士別、名寄、そして稚内と続く路線には私のクライアントがあったのです。
かれこれ10年以上、当初は銀行のお客さんとして、そして私が銀行を辞めてからは私のコンサルティング会社の、そして公開準備をはじめてからは、私がパートナーをする監査法人のクライアント。そんな長い間、毎月旭川に来ていたのです。
したがって、旭川駅からタクシーでびゅんびゅん、は慣れていて、はやくはやく~ぅ的な叱咤は当たり前でした。
ですから、「あ~ぁ、抜かれただよ~」と志村けん的にいうと、「なぬ~」みたいな状況になることも、おさっしでした。個人タクシーの沢田さんも、頭にねじり鉢巻き、腕まくり状態で、前傾姿勢になり、ガーみたいな状態だったのです。さて私は無事に戻ることができたのでしょうか。そこには意外な、誰も想像できない出来事が…ありました…(続く)。