よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

旭川基地攻略作戦(2)

【先週までのあらすじ】
『組織から追われた私は、失意のうちに自ら命を断とうとするが、旭川基地を思い出し、その場所を捜しあてる。
基地まで時間までに辿りつかなければ、私の人生は破滅だ。旭川基地の30km前線で、私は、ある人物に出会う。
その名はボルボサーティーン(自家用車はボルボに13年間乗っているから…)。又の名を沢田(裏ではSと呼ぶ)は元秘密諜報部隊の技官として、東亜戦争での中国瀋陽攻略にあたり、人力車の使い手として地域に潜入し大きな戦果をあげた人物である。
組織から記憶を消された後も旭川に潜伏し、昔を忘れられずに今も個人タクシーの運転手として、有事に備えた生活を送っている。
Sに出会った私は、旭川基地を攻略するために、ある戦略を立てた。その戦略とは…。私が基地を攻略できるかどうかはSの意欲と技術にかかっているが…』


大体の道も知っている私は、「いまどのくらいですか」を連発し、ムチを入れ始めます。
最初、私が車に乗り込んだときには、「お客さん~、無理っす」的な言い方だったのが「なんとか8時(20時)5分にはつくと思います」という意見になり、「お~ぃ、そんじゃ足りないんです」みたいなムチにより、「んじゃ8時」みたいな勢いになってきました。

ただ、既に車のメーターは80kmから90kmを指していて、車は雪でぼこぼこになっている農道やら、交差点やら、橋やらを通りすぎていて、急にS(ここで頭文字を使う必要はないけど…)さんも怖気(おじけ)ずいてしまったようで、「いや本当はいくらお金をもらっても命はかけたくないんですよね~」と弱虫な発言になってきました。

私はすかさず「そうそう、そうですよね。なんかあったら運転手さんは助かるかもしれないけど、私はいっちゃう。運転手さんハンドルあるけど、俺のとこなんか何にもないからガラスに頭をつっこんでさ」というと、「いやいやお客さんが逝って私が残るんだったら、私も一緒に行きますよ」、みたいな連帯間。

なんか変な感じになってきて「運転手さん、そんなことをいったらおしめいだぜ(とらさん風)。命は大事にしなきゃ、エアバックあるし…」とかいうと「いやこれは標準装備の車なんだけど、とっちゃうんですよね」みたいな悲しい話になり。「はぁ~まじすか。じゃ~しょうがないか」。みたいなことになりました。ここでSさんとは家族のような気持ちになり、同じ連隊の同士としての思いができたのでした。はっ。

とはいうものの、早く行かなければならない私としては、また、「あ~ぁ運転手さん、前の前の車がみえなくなっちゃったぁ~」とかムチをいれます。

「いや真ん中に民間の車がはいてるんですよ(民間って、君はなに)」。「あっそっか~ぁ。でもさ、テールランプが見えないしぃ」的なムチがまた入り、Sさんは、アクセル、ガーみたいな。「大丈夫ですよダンナ。いざとなったらあのコーナーで駐車場抜けちゃいますから、っていうか他人の会社の駐車場ですけどね。あっは」みたいないい雰囲気になりました。

「Sさ~ん。そのちょうしそのちょうし、すごいね。すごい技術だし」「いやこのくらいの吹雪はあっしたちは慣れっこなんですぜ。こっちに住んでいたらなんてことはありやせん」「でもさ、こんなかんじで雪がバンバン窓ガラスにぶつかるほどふっちゃうと、道のハジがわからないじゃん」「いや電柱があればダイジョウブイ」みたいなことにもなってきたのです。

そして第三コーナーから第四コーナーに入るころには、ムチがビシバシはいるようになり「運転手さん、8時まであと7分だけど大丈夫だよね」「このコーナーは少しあぶないと思うけど運転手さんなら、なんなくだよね」などと勢いが付いてきました。

これは8時に間に合うかな~と思ったとき、無線で、「では空港がえりの○○タクシーさんがいくからそれで折り返し…ザー…よろし…ザー」といった声と音が聞こえてきました。「それで…ザー…します。すみません…ザーピー」みたいな。

「Sさんどうしたんですか、ぶつかった?」「いや~なんかやっちゃったんじゃないですか?みんな急いでいるから」という様相を呈してきて、見えない敵も車を走らせているんだ系のストーリーになってきました。

当たりは真っ暗で、ゆきが私の車をめがけて、どんどん攻撃をしかけてきます。車のなかは妙な緊張感で満ち溢れ、次に何がおこるのか。

攻撃に備えて匍匐前進(ほふくぜんしん)的な状態になってきました。スルスルスル~みたいな勢いで、しかし、雪道なので、前後左右に身体は揺れています。戦いはこれからだ!お~みたいな状態で後少しになりました。


そのときです。
また「ザー…、了解しました。飛行機には8時10分に着くといってありますから…ザー…、ザー」「え~、それって飛行機とめたんすかぁ~」「ダンナもう大丈夫ですぜ、止めてますから」って、まじかよ。旭川ではタクシー会社が飛行機とめちゃうの、みたいな。
で、やっと8時2分に基地のエントランスに装甲車はたどりついたのでした。

あと200mというときに、「運転手さん、ありがとうございました。本当に助かりました。すみませんでしたね、急がせて。命までかけさせて」と申し上げると「いや~、私の仕事はお客さんのご希望に応えることですから…。かっかっかっか!」って、最初はネガティブだったじゃん、とか思ったりしたのです。

「でも本当に沢田さんのおかげで助かりました、ありがとうございました」と、4010円の料金を支払い空港に入りカウンターに走りまくりました(たった10mの距離ですが…)。そして叫びました「飛行機とめて下さいぃぃぃぃぃ~」。
はたして私は基地を攻略することができるのか。まだまだ話は続きます(続く)。