思想的には医療従事者には人を助けたいという思いがあるか、少なくとも自分の仕事は人を助けるためにとても有益な仕事である、といった誇りをもって仕事をしていることが多いと思います。本来であれば、医事で受付をしている者であっても、病院機能の一翼を担っているという思いをもって仕事をしている筈だと信じています。
病院はその建物自体が地域の救いであり、人々の安心と信頼を集める存在であると思います。そのようななかで経営を語ることはとても重要です。資本主義社会においてあらゆる組織体は金銭の対価を得て役務を提供しています。
たとえば競争市場にない公的病院であったとしても自治体の歳入により一部を賄われつつサービスを提供しています。この歳入はまさに経済活動の帰結として自治体にもたらされたキャッシュフローであり、医療サービスの対価として自治体の住民が負担している部分なのです。
したがって、仮に経済が不活性になり税収が減れば病院に廻るキャッシュも低減することは明らかです。常に税収に頼らない運営を志向しなければ、組織を維持することができなくなります。
民間病院は誰も助けてくれませんから言うに及ばずというところですが、いずれにしても、病院が病院のもつ思いや人々の思いを実現していくためには組織が維持できなければ意味がなくなることを理解しなければなりません。
そこには正しいマネジメントが必要となります。
人が心から懸命に与えられた責務を果たし、他者に喜んでもらう医療を提供するときに、それは一定の制約のなかで最大の成果をあげるものである必要があります。いまある経営資源を最大活用し、成果をあげる。ここでいう成果は医療的にも、財務的にもであることはいうまでもありません。
まずは施設を満杯にすることで、患者さんの支援を行う。次に自院の質をさらに磨きをかけてより多くの患者さんに来院していただくためのブランドを高めていく。そのなかで、自分たちが得意な疾患はこれであるというものを探す。そうした治療を行っているとどんどん経験が積まれ、医師やスタッフのスキルは向上する。
リーダーが限られた資源のなかで最大の成果をあげようと号令をかければかけるほど、彼らは学び、努力し、工夫し、創造し、新しい価値を生み出します。
経済的にも累積的に治療が進めば、経験曲線は下がり、単位当たり原価は低下します。多くの患者さんが短期間で退院できるようになり、病床稼働率を維持しながら平均在院日数は短縮されます。
外来では逆紹介が円滑に行われ、結果として地域からは当該病院を必要としている患者さんが搬送されてくることになります。入院比率は高く、手術比率は高く、そしてプロセスにおいて医療の質は向上し、利益がでるようになります。
医療と財政のバランスをとる、ということはこういうことなのです。もうけ主義で病院を運営すれば患者は離れ、益々財務的にタイトになります。また博愛主義で医療を無秩序に提供すれば、コスト倒れになり、結果としてキャッシュが廻らず、病院は存続することができません。
医療と財政のバランスをとる。マネジメントの巧拙が病院の存続に大きく影響していることを絶対に忘れないで下さい。
その病院の役割と使命をヴィジョンとして掲げ、具体的なツールを開発、仕組みを見直し、個人のスキルを向上させる。結果、地域貢献することができる。
常に職員が努力し、またそれを市民も支え(多くの国民は、医療に対する考え方を再度考え直す必要がある)、いまある資源で最適な医療を提供する。そのなかにこそ、病院が繁栄し、地域が守られる図式が生まれます。
病院経営がいかに重要であるのかがわかります。