音もなく街は静まりかえっています。
街には誰も何も存在しないかのように…。
雪は何もかも覆いつくしてしまいます。
色をなくし、それぞれの主張をなくしてしまいます。
過去も現在も、そしてここにいると未来をもなくしてしまう気すらします。
東京には本当の雪がありません。雪が降ってもすぐに溶けてしまいます。
東京の喧騒は雪が降り続くことを許さないのかもしれません。常に活動し熱く何かといつも闘う街だから…。
しかし、闘いのなかで自分を見失うことがあります。
自分は何のために生きているのか、何をしていこうとしているのか。
闘うことに疲れ、消えていく過去や現在、未来はたくさんあると思います。
東京は街自体が、雪であることがわかります。
この街でも、雪の積もるのをじっとみていると、自分の存在が消えていくような気持ちになります。
どこにいても自分が生き抜いていかなければ、自分を見失うのかもしれません。
しかし、一つドアを開けると、この街の人はしっかりと建物のなかにいて、自らを大きく主張し、そして楽しく人生を生きていることが解ります。
この店の名はリバティ。
雪のなかの自由。
病院のスタッフと、このお店を訪れた私は、この見ず知らずの2人の唄のうまい壮年達と、マイクを奪い合い、雪の降り積もるなか、まるで自らの存在を確認し合うように、声がかれるまで、雪の名の付く唄を、競って歌ったのでした…。