よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

ホワイトボックスがテーマとするアイテム(1)

 ホワイトボックスが病院の支援をさせていただくときに、テーマとして留意するポイントは以下のものです。
 
1.ガバナンス体制が整備されているか
2.モニタリング体制が整備されているか
3.優れた経営企画スタッフがいるか
4.優れた医事スタッフ、あるいは診療情報管理スタッフが存在するか
5.専門部署やリスクマネジメント、パス、提案制度等を通じた業務改善が継続的に実施される仕組みがあるか
6.教育及び評価制度が整備されているか
7.公平公正な処遇システムが存在するか
8.医師のモチベーションを高める組織、仕組みがあるか
 
今回は1について、説明します。
 ガバナンスは病院統治をいいます。明確な3~5年の事業計画、その前提となるビジョン、戦略が明確になり、あるいは方向が決定していて経営方針化していることや、それが具体的に目標管理やBSCを通じて現場に落とし込みが行われていること。
 もちろん委員会の活動も、病院の経営方針のなかで計画され、各委員会はリンクしており、全体として方向を一定とした活動がそれぞれの領域で進捗していることも重要です。経営会議的な会議、そして運営会議が毎月展開され、次に述べるモニタリングの結果を受けて正しく修正される仕組みがあることが柱になります。
 
 経営方針のなかには、制度対応、設備関係、生産性向上、コストリダクション(コスト低減)といったテーマが盛り込まれ、職員全員が関与できるかたちで、毎月各部署のテーマが確認され、さらには修正されるといった役割を果たすものである必要があります。
 
 形式的な組織運営だけで行われ、ガバナンスがエンドまで効いていないので、結局、経営陣がシャウトしても、成果がなかなかあがらない、ということが散見されますが、そうではなくて、末端までのガバナンスが効くシステムとマネジメントが行われる必要があります。
 リーダー受容論によれば、リーダーは部下から尊敬され受容されてはじめて部下がリーダーをりーダーとして認めるのであり、リーダーそのものの自己改革が行われなければならないこともあります。
 
 先が見えない、わからないので不安という職員の声を一蹴し、良い医療をすればよいという考え方では職員はついていけません。明確な道筋とそのための役割を提示し、ともに組織改革を行いながら、結果としてガバナンスが実施されたという意味での統治がもっとも有効であり、実質的な成果をあげることができると考えています。
 
 したがって内的戦略を立案するときには、院内でいったい何が起こっているのかをつぶさに把握し、それを解決することがテーマとして織り込まれた戦略を作り上げる必要がありますし、また、経営方針も明確に問題となる事項を排除(課題解決)するためのものでなければなりません。そもそも経営方針が出されていない、目標管理等のシステムがない、あるいは目標管理はあるが形式的である、目標管理は実質的に行われているが評価につながらず部署や個人の課題がみえてこない、見えているけれどもそれが教育につながっていない、などの問題がある病院が多くあります。
 
 ガバナンスといえば、経営会議があり運営会議があるということでそれが到達されたと勘違いするのではなく、細部にわたり繊細なシステムをつくりあげ、その実効性が担保されて初めてガバナンスといえるのだという認識をもつことがトップマネジメントサイドに求められています(続く)。