よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

介護サービスの制約

 介護サービスの根本的なネックは、介護従事者です。
 どう考えても、高齢者数は増加する、介護サービスを提供する従事者となる年齢層の人口は減少するという図式があります。すなわち、介護サービスを受けなければならない高齢者は増加しており、実際に介護サービスに従事する人口がそれに併せたかちで増加することがなければ、介護事業が成り立たないことは明らかです。
 
 普通に考えれば(1)働く人が増えるか、(2)他の事業から介護事業に身を投じるという層が増加しなければ、介護従事者が相対的に不足することは当たりまえです。
 
  ちなみに、私が役員をしているココチケアという会社は既に従業員が400名を超えていますが、施設をどんどん開設しているために、地域によっては採用が思うように進まず、人員不足気味であるとミーティングで説明を受けました。賃金を高くしたり、条件をよくして採用をかけていますし、東京の高級住宅地においては2000円以上の時給を出してもパートが集まらない状況になっています。働く層が少なく(1)がうまくいかないエリアです。
 
 私が支援にはいらせていただいている地方の病院敷設介護事業者においては、既に上記でいえばの(2)の状況になっており、新しい施設ができると古い施設から雪崩を打って介護職員が移動するため、いつも賃金をあげることや、待遇をよくすることを継続している状況があります。
 
 いずれにしても、地域で働き手がいなければ、結局は彼らの奪い合いになり、人件費率は益々あがっていくことになります。
 
 マクロ的にいって500万人の介護を受給している利用者がいるわけですが、3000万人の高齢者を前にして、介護サービスを利用する方々は増加の一途をたどります。したがって、介護保険自体が成り立つのかということにもなっています。2025年には現在の8兆円が約20兆円になるとも言われています。
  介護保険の保険者を20歳としたり、介護保険の自己負担を2割にするといった話、さらには介護給付を介護度3以上にといった内容の対策が議論されるようになる現状があります。
 コストはあがるは収益は小さくなるという環境のなかで介護サービスを提供しなければなりません。
 
 なお、他の産業や事業から転職し、介護職員が着実に増加しても、さらに制約があります。スキルをもっていない主婦が介護の担い手として就業するようになり、生産性が落ちるといわれているからです。さらに、働き手自身の高齢化が進むことや、高い報酬を得ることができないパート労働者増加することも制約の一つです。
 
 そのようななかでハードで献身的なサービスを提供しなければなりません。やる気もなくなりせっかく介護を仕事とした者がフェイドアウトすることも多くあります。
 
 確かに国がそうしようとしているように、教育訓練をあまねく行っていくことや、資格試験を取得する対象者の門戸を開き、多くの介護従事者が力をつけて業務にまい進することができるよう各事業者が支援を行っていくことが必要です。
 さらに介護事業を介護事業だけでとらえるのではなく、さまざまな事業とのコラボレーションのなかで、利益のとれる事業をからめた事業を行うなかで、自然に介護サービスが提供できる状況をつくりだし、報酬を上げたり、将来ヴィジョンをもって動機を喚起していくことが望まれています。
 
 やりがいのある、創造的な仕事をつくりだすなかで、教育された介護職員により、給付を受ける高齢者に安楽で、満足できる介護サービスが提供できるようになればよいと考えています。
 
 まだまだ人的、あるいは属人的要素に影響を受けやすい介護事業において、暖かい心の触れ合いを残しながら、あるいは利用者の立場に全面的に立ちながらも、より質が高く、生産性のたかい、そして現状のリソースでより多くの利用者が満足できる介護サービスを提供できる仕組みができればよいと思います。
 
 業務プロセスの分析を行ったのち科学的管理を行い、そしてそれらをしっかりと統治できるシステムの開発が望まれます。
 
(1)介護従事者(職員)が不足してくる
(2)スキルがあがらない
(3)報酬が上がらない(高い報酬を出せない)
(3)モチベーションがあがらない
 
といった介護サービスの制約に対し、上記を考慮した戦略を採用し、成果をあげていくことが望まれています。強いリーダーシップのもとで精度整備や組織体制整備、事業統治が必要です。まだまだ改革の余地のある分野だであると思います。