よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

小さいけれどビジョンがあること

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 人は、ビジョンで動くところがあります。

ビジョン(Vision=将来の構想、展望)は戦略の前提となる、あるいは戦略を包含する概念です。ただの夢とは異なります。ここで戦略とは闘いに勝つ計画のことをいいます。

 

 こうしたい、ああしたい、ということはただの夢となりがちですが、ビジョンは、ある程度の実現性を以て語られる必要があります。

 

 よく、ビジョンは職員にとれば夢であり、経営者にとれば戦略の方向であると言われます。しかし、社会活動において夢でも達成可能なものでなければ誰も執着しません。

 

 また、ビジョンは戦略により具体的な成果にならなければ設定した意味がありません。

 

 ビジョンは戦略や成果と影響し合い、ここに行けたね、という場所に収斂(しゅうれん)するという考えが適当です。

 ビジョン通りにはいかないとしても、ビジョンにより計画を立てて行動している間に、ある程度のところには到達できます。

 「こうしたい」→マーケティングやSWOT分析により現状把握→実効性のある計画立案→目標化(アクションプラン化)→行動、というプロセスを経て「こうしたい」ということが「できる範囲でこうなればよい(ある時点では、できた範囲で納得する)」という領域に落ち着くという考えです。

 

 それでも、ビジョンがないときと比較すれば成果は雲泥の差です。

明らかに達成できない夢をもたせて日々の活動の基礎とするのではなく、現実に近い、実施可能性の高い領域で職員にビジョンを伝え、行動を通じて具体化していかなければなりません。

 職員が「自分のやりたいこと」と擦り合わせたうえで、ビジョンや戦略を受容れ、計画的行動をとることで戦略、そしてビジョンが達成されます。

 

 より具体的にいえば、日々の多くのル―チンにより成り立つ組織自体が常に方向をもち、進化しようと努力することで組織は変革します。

 しかし、病院トップや病院幹部にこれをやるんだという強い思い(ビジョン)がなければ、本当の意味で職員は能動的に行動できず、成果を最大化できません。

 患者に対する職員の使命感だけに依存し続けることはトップマネジメントの役割を放棄することと同義です。

 

 なお、大きなビジョンは、組織を大きく飛躍させる可能性があります。しかし、日本の医療制度からすると、医療機関に海外のような成長戦略は描けないこともあります。

 なので、病院トップや幹部はまずは小さくてもいい、これをやりたい、これをやっていこうという思いをもち、具体化できる範囲で計画し、それらを徹底的に実行していくなかで、組織の活力を増加させ成果をあげる、というシステムをつくりあげなければなりません。100%でなくても80%達成できれば大成功と考え、未来が不確実な日本だからこそビジョンを掲げ続けることが必要です。

 

 医療だけではなく、多くの事業において、対峙している環境を乗り越えるために、いまこそトップは職員(社員)に受容されるビジョンを掲げ、果敢に前に進んでいかなければなりません。