よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

ガバナンスツールの一つBSC

最近、組織マネジメントとりわけガバナンスのためのフレームワークについて院長に説明する機会が増えました。懸命に組織運営しているもののガバナンスがうまくできていないために組織のポテンシャルを引き出せていないことがよくあるからです。BSCはガバナンスのためのほんの一つのツールですが、再度振り返りをしておく必要があります。

 

埋もれていた2007年に書いた記事のリライトをしてみました。かなり前の記事ですが今でも色あせていません。ある意味怖いことですね。

 

「バランストスコアカード(以下BSC)について考えます。どのような業態の病院であっても、組織が一体となって質を向上させていかなければならないときに、BSCはとてもよい道具(ツール)になるからです。目標管理制度やBSCがうまく利用できれば、病院が考えた方向を間違いなく組織全体が志向し、個人レベルにおいても意識や行動を変えることができるようになります。ただ、BSCがマネジメントツールとして機能するためには、併せて周辺制度の整備が行われなければなりません。

 

それらにも言及し私たちが現場で行っているBSCの導入、運営について説明をします。なおここでは概要のみとし教科書のようにすべてを網羅的に論じることはできていません。

 

BSCは組織をまとめるためにとてもよいツールです。BSCの仕組みを核として、組織のさまざまな改革を進めます。BSCを利用して何をしたいのかについて明確にしたうで、BSCをうまく利用しましょう。

BSCは、キャプランによって考案された組織マネジメントツールであり、手法です。

 

そもそも組織は一定の理念に基づいた戦略をもとに計画的な行動を行うことで組織目標を達成します。そのためには組織目標が組織構成員に明確に伝わらなければなりません。組織目標が組織構成員に伝わるためには、戦略がわかり易く目標化されること。目標が定量化されていることが必要です。

組織目標が判りづらければ、どの方向に進めばよいのか組織構成員が理解できす、合理的な行動がとれません。また目標が定性的ものであり、不明瞭であれば、それらを目標として捉えることが困難ですし、行動の結果としての成果を認識することができません。組織目標は理解しやすいこと、そして定量的なものでなければならないのです。

BSCは目標設定及び業績評価のツールとしても扱われています。組織の掲げる目標をまず財務と非財務目標に分け、従来の財務目標だけの目標を設定した場合の欠点をなくしています。財務と非財務の目標をバランスさせているスコア化されたという意味で、バランストといっています。スコアは、ここでは数値化されたという理解をすればよいでしょう。
BSCでは非財務目標をさらに、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点の3つに分けます。

一般的に組織は顧客に対して製商品やサービス(以下医療サービス)を提供することを目的の一つとしており、まずは顧客の満足を得るために行動目標をもつことが必要であるところ顧客(以下患者)の視点からの目標を設定することとしています。

次に、組織が医療サービスを提供するためには、組織自体の体制や仕組み・仕事の方法(業務プロセス)が確立されていることが必要です。合理的で質の高い医療を提供するために、どのような体制や仕組み、仕事の方法ができていればよいのかという観点から目標を設定することになります。

 

また組織は組織構成員(以下職員)により運営されますので、彼らが学習し成長できるように仕向けていくことが大切になります。職員が組織活動のなかでどのように学習し成長できるのかを目標としています。


このように数多くある組織目標を、4つの視点に区分に判りやすく設定することで、組織構成員に組織の目標を明確にする手法がBSCなのです。

さて、物事には定性と定量があります。定性は物事の様子または変化する様子を、数字では表す事ができない性質をいい、定量は物や人などの対象の状態を数値の変化に着目して捉えることをいいます。

 

物事を定性的に管理することだけで組織は運営できません。頑張ろう、懸命にやろう、よくやったね。こんなにできるなんて素晴らしい、といった日常交わされる会話において言葉を発する者のもつ基準と相手の基準が往々にして異なることがあります。


それぞれがもつ意識や価値観、知識や経験、意欲や熱意など、ありとあらゆる相違により主観的な意識でものごとをとらえ、行動し、会話し、説明し、感想をもったりしながら組織が運営される傾向があります。もちろん、このことを否定するものではなく、こうした定性的な捉え方を個々人が行うことで物事が成立し、進んでいくことで一定のながれや目標達成に向けた成果が生まれることは間違いがありません。

 

しかし、同時に的確な数字を組織運営のなかでとらえ、その数字のもつ意味を判り、その数字をどのようにして改善するのか客観性についても理解し行動する、といったことができなければ組織は保有する資源を最大活用することができません。

 

なお、定量の対象となる単位として、人数、時間、金額、%、回数、件数、個数、台数、枚数、重量…等を上げることができます。物事の多くは量で捉えることができます。

今日の会議はとてもうまくいったよ、と説明するのと、参加予定20名のところ全員出席で、2時間の間寝ている者は一人もいなかった。全員が発言したし、10議案に対してすべて5W2Hでの計画が来週までに立てられることで合意したんだ、と説明するほうがその内容をよく伝えることができます。

 

当たり前ですが、物事を数字で(定量的に)説明することで、あるいは管理することで、管理する側もされる側もよく内容を理解し、行動を起こし易くできるのです。

BSCでは、すべての目標(KGI=重要目標達成指標)を目標を達成するための重要成功要因(KFS)に変換しその達成のための行動尺度(PD)にのせて、指標化(KPI=重要業=成果をあげるための鍵となる指標)し、それぞれの目標として目標設定(先行指標)します。

 

先行指標をもとに、行動し結果として実績がどうであったのかを指標として捉え、その差がなぜ発生したのかをみて原因分析を行うのです。目標達成には何が必要なのかの仮説をたて、それを行動に展開し、PDCAにより評価(検証)を行いながら繰り返し行動できれば合目的的な活動ができているといえます。

 

激変する医療環境のなかで、職員が最適行動をとることが期待されていますが、トップが決めたことを短時間で達成するためには、組織が計画的に動かなければなりません。BSCはその意味でとても便利なマネジメントツールであるといえます。

 

従来、日本には似た管理手法として、方針管理や目標管理制度が存在しました。キャプランもこのような制度を参考にBSCをつくったとも言われています。目標管理制度もしたがってBSCと同じながれをもっているといえます。

 

目標管理の本来のあり方は組織目標を提示(この意味では方針管理の側面が強いと思いますが)、部門への落とし込み、考え方のすり合せ、数字での目標設定、個人の目標設定、個人での目標管理といった方法で組織目標→部門目標→個人目標と目標を落としこみ、個人が目標を達成すれば部門が目標を達成し、部門が目標を達成すれば組織目標が達成されるという考え方により組織目標を達成していくのです。

 

 BSCの優位を説く者は、目標管理とBSCが同じではない理由をいくつもあげています。しかし基本的には根底にながれている思想は、組織の方向を判りやすく開示し、職員が行動できやすい環境をつくりあげるツールである、という意味では両者は同じであると私は考えています。

 

そもそも、組織と個人を考えるとき、手法の相違はあるとしても、組織活動をしているかぎり組織のベクトルと個人のベクトルを合わせなければならないのは組織運営の基本的事項であるからです。大きな枠組みで議論することは意味がなく、それをどうやって達成するかについて相違がどうなのかという議論であるから異なることは数多くあるのは仕方ありません。

 

極端な意見かもしれませんが、何と何が同じである、異なるということに重きを置くこと自体がナンセンスです。

 

多くの病院で目標管理制度やBSCを導入してきた私たちとしては、それぞれのもつメリットやデメリットを理解しています。しかし、私たちは学者でもなく、議論をもてあそぶ時間もありません。一定の枠のなかで、それぞれの良いところを納得し、最終目標を達成するために自院がどう行動するかということが大切です。結局は感性が合う、肌が合うものを採用すれば足りるでしょう。

 

組織がもっている経験や意欲、他の制度との兼ね合いにより制度が機能するかしないかが影響されるのであって目標管理がよいとかBSCがよいといったものではないと考えます。

 

両者を折衷のように利用している法人もあるところ、結局はどのような道具であってもその道具をつかって達成しようとしていることに対し、組織が成果にどれだけ執着しているかどうかにより成果が影響される、ということなのではないでしょうか。

 

なお、BSCを運営するためには、付随してあるいは周辺としていくつかの制度が整備されなければなりません。

 

まずは、組織の進む方向です。組織が何を目指しているのか、どこにいくのか、ミッション、バリュー、ビジョンそして何よりもパーパスが必要です。職員が何かを行うとき、その目的や理由をよく理解できるとともに、達成しようとする目標に向かって一体となって行動できる体質をもっているかどうかが問われます。こうした体質をつくりあげるための道具としてBSCを捉えることもできますが、やはりBSCだけでそれを成し遂げようとするのは困難です。

 

二つ目として戦略です。例えば自院のSWOT(強みや弱み、機会や脅威)が正しく認識できておらず課題が不明確であればいくらBSCを導入しても、達成するものが本当に病院に必要なものである保証はありません。当然のことですがそのうえで戦略が正しく立案されることはBSC以前の問題です。

 

他に中間管理職のリーダーシップ醸成、それ以前の職務分掌の明確化、権限や責任の設定、職務基準の決定、業務フローの標準化等さまざまな制度を視野に入れた活動を行うことが求められます。

 

3つ目には個人レベルの教育や評価です。BSCでは、ロジック的にはそうなっているものの、手法的には個人毎に目標を落とし込むかたちには出来上がっていません。しかし目標を達成しようとすると各部門、各部署で設定した目標を個人毎の特性や属性、育成目標に合わせて目標設定することが不可欠です。

 

個人が役割や目標をもって行動できるよう、現場で指導・支援したり教育することができるかどうか、その結果として求める成果をあげたときには評価する仕組みがあるかどうかがBSC成功のポイントとなります。リーダーへの信頼醸成とともに、One on oneやコミットメントが必要となるでしょう。

 

評価制度のなかで評価するためには、業績評価の仕組みをつくり賞与に反映することになります。人事考課においては情意考課と能力考課と合わせ昇給昇格(そして昇進)の基準とします。もちろん少なくとも業績評価として賞与に反映するかたちがつくりあげられていればBSCに対する誘因ができます。

 

BSCを始める当初から、BSCで掲げた目標を達成した場合には賞与に反映することを説明することも必要です。もちろん金銭をぶら下げてのモチベーションではなく本人のやりたいことややらなならばならないことの達成がOne on Oneでコミットされていることが行動の誘因にならなけらばばならないことは言うまでもありません。

 

4つ目として部門別損益計算があれば、部門別の損益が判り財務的な評価を行うことが可能です。また、予算実績管理制度が月次でかつ部門別に行われるのであれば、BSCの目標への取組みが財務の成果につながることが確認できます。BSCにおける指標の達成は財務的な成果につながるものが多いものの(間接部門のKPIは目に見えづらい生産性向上につながるものも多いですが、できるだけ定量化しコスト削減の成果に結びつける方法を採用します)、少なくとも部門別に損益を認識できることが重要となります。

 

次にBSCを導入するための手順を説明します。

  1. BSCの前提(周辺制度の整備状況)調査①戦略・事業計画②組織の基本的事項③教育制度・評価制度④部門別損益計算
  2. 1のうちできていない事項について整備計画立案
  3. 組織課題の網羅的把握
  4. 4つの視点での目標設定
  5. 課題を達成するためのKPI=先行〔目標〕指標の設定
  6. BSC説明会開催
  7. 各部門(そして個人)への目標の落とし込み
  8. 各部門からの行動計画の収集
  9. 各部門からの行動計画検討
  10. 全病院運営開始

 

事例の提示もしておきます。

超簡単にBSCについて説明しました。冒頭に述べたように教科書のように詳細ではありませんし、具体的に進めるための現場でどのような課題があるのかについてまで些細な記述はありません。本来は一つひとつの手順において留意しなければならないことが多くあります。BSCの前提整備にも時間がかかることも間違いありません。

 

BSCを無理やりやらされていると考える職員が大半であるところ、どのようにしたら彼らのモチベーションをあげられるのかについての具体的なフローについても議論しなければなりません。トップマネジメントの医療や事業、職員に対する真摯な思いや信念が求められる所以です。

 

BSCのようなツールの活用には、トップマネジメントの根底あるいは中心にある思想や情熱が必要です。そしてそれを徹底していくリーダーシップがなければなりません。職員が受容できるよう噛み砕いて説明する場面もあるでしょう。

 

BSCを導入するために上記を行うという考えには無理があり、日頃からトップマネジメントが組織に対して納得性が高い戦略を提示し、それぞれの役割に期待すると表明し率先垂範していることが求められます。

 

それができていないのであれば、先にその部分に執着し本来の事業推進に向けたマネジメントの大きなトレンドをつくり、そのうえでBSCを導入すべきだと考えています。

 

繰り返しになりますがBSCを使えばすべてがうまくいく、というほど優れたツールではありません。トップマネジメントが自ら「自院をどうしたいのか」についてとことん考え、思いと信念をもって「どうしてもやらなければならない」と決めたことを組織に下ろし、それらを達成していくためのツールの一つとしてBSCがあることを忘れてはなりません」。

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リスクマネジメントの進め方について

2005年に書いた記事を記載します。稚拙な内容、文章ですがいくつもの病院の現場に出て支援をし始めていた18年前の記事を見るのも考え深いものがあります。

 

「病院におけるリスクマネジメントが盛んです。でも本当にリスクマネジメントができているかどうかについては疑問がある病院が数多くあります。

 

(提出時)

  • 発生したものがすべて提出されていない(取捨選択されている)
  • 積極的に高いレベルのものを隠蔽している
  • レベル(0=未実施,1=影響なし,2=経過観察,3ab=要治療,[4=後遺症,5=死亡])の判定が正しくない
  • 経過観察(レベル2)から治療(レベル3以上)に変動したときの記録がない
  • 医局はほぼ書かない
  • ヒヤリハット(レベル0から1)(インシデント)についての体系的な整理がない

 

(原因分析時)

  • 原因分析の体系的方法をもっていない
  • SHELLで分析するために原因が特定できなくなってしまう
  • 委員会の開催頻度が低く、処理しきれていない
  • 多数の人が意見を述べるため、原因が特定できない

 

リスクマネジメントの肝は原因特定と対策、その徹底です。

原因を特定するためには、原因分析を迅速に行なう必要があります。アクシデントが発生したら、本人と上司だけではなく、第三者が現場に直ちに出動し、そこでアクシデントを起こした人の目線でアクシデントを調査、なぜなのかについて徹底的にあらう、といった作業をしなければ原因分析を的確に行なうことはできません。明確な理解をして原因分析を行ったうえで、対策立案に入ることが必要です。対策立案には以下の問題があります。

 

(対策立案時)

  • 十分な調査をしていないため対策が的を得ていない
  • 時には「次には注意する」といったレベルの対策がある
  • パターンで処理してしまうため、曖昧な原因に曖昧な対策となっている
  • 原因が多数あるため(分析してしまうため)どの対策がベストであるのかが特定できない
  • 現場をみて原因分析をしていないため、不適格
  • 対策の立て方が判っていない
  • 業務を変えようとすると業務改革委員会といったものがあり、その承認を得るのに時間がかかり、対策が徹底されていないため同じアクシデントがいくつも発生する

等々です。

 

こんなことをしているので、病院からアクシデントがなくなりません。いつまでも。そしてそのうち高いレベルの大きなアクシデントが起こります。病院からアクシデントがなくならない理由はいくつもありますが、まずは対策が稚拙であればアクシデントがなくなるはずもありません。

 

原因が正しく特定できないなかで、対策は立てられないのは当然ですから原因の特定が必要ではありますが、原因が正しく特定できたとしてもやはり有効な対策は対策立案のための時間やスキルを必要とすることも事実です。

 

レポートを出すことに多くのエネルギーを割き、対策にたどりつけないとしたら、それは超ナンセンスであるということを理解しなければなりません。

 

「患者意識の変革や、医療事故に対する世論の盛り上がりのなかで、リスクマネジメントを行うということは、レポートを収集して分析し、原因を発見、対策を立案する、実行するということを中心として、マニュアルや看護プロセス、教育、評価、パスといったあらゆる制度を体系的につくりあげていくことであるという理解が必要です」「病院全体の改革活動により医療の質を高めることで、リスクマネジメントでの成果を追求することが相当です」

 

これは、ある病院のために私達が作成したレポートのコメントです。

リスクマネジメントは、発生したアクシデントについて原因を分析し、対策を立案し、それを実行し、二度と同じアクシデントが発生しないように対処することが基本です。しかし、そのためには、周辺のあらゆる制度を動員しなければ、成果をあげるリスクマネジメントはできない、ということを説明しています。

 

なお、アクシデントが発生したときに、直ちに現場に直行し、現場をつぶさに検証し、そこで本人から状況を把握し、原因を分析し、対策を立案、さらにそれをマニュアルに反映、教育システムに載せ教育する、そして事後一定期間をおいて実行できているかどうかについて評価する、といったかたちをリスクマネージャー中心に実施していくことが必要です。

 

リスクマネージャー育成のための総合的なプログラムの開発が期待されるとともに、インシデントアクシデントを排除するための人の育成を行うシステムが院内にビルトインされている必要があります。リスクマネージャーにすべて依存することは無理があり、病院にどのような制度としてのリスクを減じるための、抑止するための、予防するための仕組みがあるかとうことが問われているのです。

 

いつも考えます。

  1. 凄いスキルをもち、どのような仕組みであろうと、どのような状況であろうと目的を達成するために、その場をすべて正確にクリヤーし、アクシデントは発生しない
  2. 仕組みがある程度きちっとしているため、スキルはそこそこであるが、アクシデントは発生しない
  3. 仕組みが完全であるので、誰がやってもアクシデントは発生しない

 

といった、仕組みと個人のスキル(その場での)の組み合わせが基本となりアクシデントを発生させないかたちをつくりあげることが病院のリスクマネジメントである、ということについてです。

 

完璧な仕組みをつくることは困難ですし、完全に高いスキルをもった職員を大量に育成することも難しいことでしょう。したがって少なくとも2の状態を満足水準としてつくりあげることが必要です。その後3に向けた対応をしていくことになりますが、多分、それは無理でしょう。少なくとも1の状態はこれまた困難ですから、結局2の状態をいつまでにつくれるか、そのうえで3に近づけるように努力するかが当面の目標であるかなと思います。

 

そのためには、冒頭に記載したように、通常のリスクマネジメントを軸として、対策のマニュアルへの反映、マニュアルの遵守、そのための評価、あるべきかたちと評価された現状のギャップを埋めるための教育制度、さらにはそれらを補完する道具として看護プロセスの確立(PDCA)や、パスによるチーム医療といったことが対象となります。

 

ここで重要な要素はマニュアルです。マニュアルにロジックが必要です。単なるマニュアルではなく、高度に利用されるマニュアルが必要です。私達はウェブ上でマニュアルを作成、管理、運用するソフトを開発し、ご支持をいただいていますが、マニュアルの質をあげる、マニュアルに執着する、マニュアルを習得する、といった活動を誘導する制度づくりが必要になると考えています」。

 

この後、マニュアルの機能や役割についての記事につなげていくのですが、この記事を見て、これからも現場に出て理解を深める姿勢をもち、何事も現場の方々と共に懸命に解決できるよう取り組んでいきたいと、密かに決意をしました。

 

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健康で豊かな生活を送るために

私たちの生活には医療を欠かすことはできません。

 

コロナ渦になり医療がより身近に感じられるようになったのはこの数年ですが、メタボリックシンドロームがきっかけになり、国民が健康に目を向けるようになったと考えています。

 

内臓脂肪が過剰に蓄積され、血圧上昇、空腹時の高血糖、脂質の異常値がみられる状態をメタボリックシンドロームといいます。メタボリックシンドロームは広義でいえば病気であり脳梗塞、心筋梗塞となる動脈硬化のリスクを高めます。

 

世界中で過栄養と運動不足を背景にした動脈硬化疾患が急増してきたことを基礎として、2002年に世界保健機構(WHO)が動脈硬化を起因とする心臓血管系の病気の予防を重視すべきと宣言し、2004年に日本でも栄養過多を原因として増加した心臓血管系疾患を予防するためいくつかの学会が合同で診断基準を作成しました。

 

多くの国民がメタボを意識し、健診や食事や運動への興味を持ち行動を開始した歴史です。このイベントを経て健康や医療に対する関心が生まれ、健康であることに対するムーブメントが起こりました。しかし、医療にはまだまだ健康をサポートする、より多くの潜在能力があります。

 

先日お会いした大学病院の著名な医師は「病気にならないときの医者は役に立たない。自分で健康管理をしている。毎朝(拡張期血圧)90を切れと念じながら血圧を測り記録する。また、鏡を見て顔がむくんでいるか、全身をみて、飲みすぎたかな、運動できてないかなとか考えながら、むくんでいるかを確認する」と話され、「血栓をつくらない、血流がよくなるように痛むところやむくんでいるところをマッサージする。届かないところは誰かにやってもらえばいい」「歩くだけでも随分と違うよ」と教えていただきました。何気ない会話ですがとても重要な話です。自らの日々にセンシティブに向かい合い自分で健康管理をすることがいかに大切なのかを理解できました。

 

話していただいたのは専門的な医療の知識や知恵がある彼の、多分ほんの一つの行動についてだけだと思いますが、医療が生活のなかに浸透することの必要性を感じた一瞬でした。

 

心臓血管系疾患だけではなく、多くの病気に対峙するために人は医療と生活の距離をもっと縮めることが有益です。医療=健康にいい食事や食事の取り方、医療=健康にいい衣料、医療=健康にいい住宅、医療=健康にいい運動、医療=健康にいい余暇の探し方、医療=健康にいい教育、医療=健康に関する金融など、医療と事業の間にはまだまだ隔たりがあります。

 

但し医療が前面に出ると堅苦しく、ストイックな生活を強いられるという意識が行動を躊躇させらかもしれません。そうではなくて自然に人が健康で豊かな生活を送るために、生活のなかに医療の思いや知識や知恵が無意識に沁み込み、知らず知らずの間に心身ともに「健康で豊かな生活」を送れるようになることが理想です。

 

ここで「豊かな」とは経済的な意味だけではないことは明らかであり、その人らしく豊かな気持ちをもって、ということに視点があります。

 

事業の側から医療に近づき、健康で豊かな生活を支援する食品の提案、食事の提案を行うことには萌芽が見えますが、まだまだやれることはあります。衣料はどうか、住宅はどうか、運動はどうか、余暇はどうか、金融はどうかというと医療の視点からのアプローチはまだまだ一部の領域に留まっているのではないかという思いがあります。

 

スーパーや商業施設、レストラン、メーカー、アパレル、スポーツ店、ハウジングメーカー、興行会社、旅行会社、教育機関、銀行などが、人々がより健康で豊かな生活を送れるようマーチャンダイジング(販売政策)やマーケティングを行えれば、国民の効用はより一層高まります。

 

そもそも心身ともに健康であれば、人はどのようにでも行動できます。また、家族が健康であれば経済活動も疎外されることはありません。

 

もちろん疾患のある人々には医療そのものによる最善のケアや治療は必要だし、介護による包括的な支援もいままで以上に充実させなければなりません。きめの細かい政治や政策による支援や未来に夢のもてる国造りも求められます。

 

患者や利用者が安心してそれぞれの思いや希望に合ったケアを受け安定的な社会生活を受けられる環境づくりを前提としたうえで、医療をより生活に浸透させ、大きな意味での疾病予防や健康でいられるメリットを享受できるよう働きかけていくことが、厳しい環境のなか少子高齢化の進む日本にとり有益なビジネスモデルになると考えているのです。

 

自分は健康だ、と思っても不健康な人や隠れた疾患をもつ人は数多くいます。調子が悪くなってから慌てることや健康診断や人間ドックに免罪符を与えることもナンセンスです。日々の何気ない健康管理がとても大切です。

 

地域住民の健康で豊かな生活を守るために、診診連携や診療所のユニット化(複数の診療所で一人の患者を診る体制)によるプライマリケア(初期医療=身近にあって何でも相談にのってくれる総合的な医療)の提供機会を充実させるとともに、医療と事業との融合により医療の潜在能力をもっと生活に活かす工夫や取り組みが多角度的に実現されることを心から期待しています。

 

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主観と客観について

 

主観とは、人が対象について認識・評価などを行う意識の働きをいいます。客観とは、自分の立場から認識や評価などを行うのではなく、第三者としてこれを行うことをいいます。客観には、データ、公平、公正、事実などといった事柄がかならず付随しています。これらのスクリーニングを経て初めて客観が担保されます。

 

何かを行うときには常に客観をイメージし、自分の考えや思い込み、価値観だけで行動することは戒めなければなりません。主観ではなく客観を常に軸に行動することが成功の要諦なのです。

 

しかし客観が真実ではないことがあります。あるものに対するデータ、公平、公正、事実などが、客観を用いる者の主観により決まってしまい、必要とする事実が完全に網羅されたなかでの結論を確保できないからです。

例えばマーケティングが良い例です。消費者のニーズや環境、競合、当該対象となる商製品サービスの適正な価格、量、時期、要素などについて客観データを以て結論を出そうとしても、調査の範囲や抽出するデータの着眼、種類、深さなどの判断は主観で行うし、その結論を公平、公正に評価するのも主観、そしてマーケティングの結果が事実であると確認するのも主観なのです。

 

となると客観ではなく、客観的という言葉の「的」に意識が向きます。「~的」は「~に近い」「~のようなもの」の意味であり、まさに「~そのもの」を指すわけではないことに気付きます。なので、客観的にみて、というのは客観そのものではなく、客観に近い、客観のようなものという理解を以て「これは客観的な結果です」という使い方をすればよいことになります。

 

同じように「~的であること」を意味する「~性」についても「これには客観性があります」という使い方をすることで客観を取り扱えばよいということが分かります。客観的や客観性、という言い方で、我々は行動している、という結論です。

 

なお、主観についてもそれがいつもブレない不動のものではなく、信頼に足る地位を確保しているわけではないことから、客観に対し常に同じ影響を与えるものではないとすると、導かれた結論が客観であることはより困難になるという見方もできます。

 

なぜ、このような検討を行ったのかということには理由があります。

 

最近、ある会社の役員で尊敬している人が「何かを始めるときにはかなり用意周到にマーケティングを行い本当に可能性のあるものしか予算を付けない。さらに練りに練った対象にチームの全パワーを投入することにしている。ただ、それでもうまくいくことは稀で、ほとんどが失敗する」と話していたからです。

 

何かを始めるときには始めからうまくいくこととはなく、仮にMECE(漏れなくダブりなく)を意図しロジカルに手順を踏んで行動を開始しても、当初の思いや調査への信頼を100%としてはいけない。試行錯誤を繰り返し、仮説、検証の蓄積のなかに到達点への道筋が見えてくることを再確認しなければならないのです。客観的、客観性の限界を知らなければなりません。

 

私も振り返ってみると採用してきたいくつもの戦略や戦術の過去は「死屍累々」という状況であることが分かります。そのなかに「地道に行うべきことを行い続けることで、何とかできた」ことがほんの少し残っているという状況がみえてきます。

 

当たり前の議論ではありますが、何をするにしても、自らの思いや信念を以て主観的に到達点を決め、現状分析を行い両者のギャップを発見し、そのギャップを埋める方法を客観的に網羅し、短いスパンでPDCAに乗せて行動する。それらを繰り返し行うなかで、方向を修正したり行動を見直し、またプレイヤーを代えるなどの対応をしていくことが大事だと理解できます。

 

いまも複数の新規事業が遡上に乗り準備を始めていますが、厳しい時代を迎え自分や組織行動を反芻し客観のトラップ(客観を大事にすればうまくいく筈と思い込む罠)に留意し、行うべきことを行うなかで既存事業の成長を継続しながら新しいことに挑戦していきたいと考えています。

コスト削減の本質

事業を行うときには、要約して言えば、事業計画を立案して資金を調達し、建物を賃借し若しくは保有し、人を雇用し給与を支払います。業種に応じた生産や仕入れ活動を行い、サービスを提供したり商品を販売します。生産や仕入には原価が発生します。職種に合わせ人が活動し成果を挙げるために活動します。資金調達コストを支払い余資を預け運用益を出すこともあります。

 

当たり前のことですが、こうした活動のなかでコストを発生させ収益そして利益を得ることが事業の目的の一つです。ここで事業を成功させるポイントはできるだけ少ないコストで収益を挙げることです。利益から営業キャッシュフローが生まれるため、コスト管理や削減は事業を行ううえで大きなテーマになります。

 

さて、コスト削減には二種類があります。コスト絶対額削減と単位当たりコスト削減です。コスト絶対額削減は、購入コストや消費コスト、管理コストそのものを削減すること、そして単位当たりコスト削減は一人ひとりの生産性を高め、時間当たりコストを削減することを言います。

 

コスト絶対額削減はコストそのものの直接的な削減であり物やサービスを購入しない、使用を制限する、使用しないということや購入の価格を引き下げることで達成できます。現状使っている物やサービスが本当に必要なのか必要ではないのかについての判断を行うことや必要であるとしても使い方や併せて価格が合理的であるかについての検討を行うことが適当です。

 

ただ、コスト絶対額の削減には限界があります。物やサービスの購入を0にすることや価格を極端に低くすることは困難だからです。また、怖いのはコスト絶対額の削減が、必要な経費を使わないことや使用を延期して成果が出たことにされたり仕入先に無理をさせて成立する事です。禍根を残すやり方です。

 

なお、最も価値を生む余地のあるコストは人件費です。とはいっても人件費を直接引き下げることはナンセンスです。

 

人の生産性、すなわち時間当たりの成果を高めることで時間(単位)当たりのコストを引き下げる方法が有効です。例えば8時間で10の仕事をしていた人が8時間で20の仕事をこなせるようになることは1時間で倍の仕事を行えるようになること、すなわち生産性を2倍にしていることを意味しています。

 

単位当たりコスト削減のためには、

  1. 一人ひとりの目標明確化
  2. スキルを高める
  3. 業務フローの見直しを行う
  4. 組織間のコンフリクト(衝突)をなくし(=協力体制づくりを行い)働き易い環境をつくる

ことが必要です。

 

上記の達成は多くの取組みを必要とするため簡単なようで簡単ではありません。例えば明確なパーパスの元でのBSC(バランストスコアカード)の導入やOne on oneによるコミットメント(公約)の仕組み、評価・教育ツールの開発や業務フローの見直し、改善、DX化、現場の協働に関する課題解決、リーダーシップの強化が必要となります。要は人が能力を発揮できる組織は生産性が高くコストが低減しているという結論です。

 

この視点からみてマネジメントが確立し多くの自立したリーダーや従業員が組織内外で連携し成果を挙げる組織は間違いなく収益性の高い事業を行うとともに高い生産性を維持し成長し続けていけることが理解できます。

 

コスト削減というテーマは、リーダーや従業員が合目的的に活動できる文化や風土、仕組みを持った組織づくりを志向するマネジメントのなかから解決できることが確認できました。

自立した人の転職による成果

以前から説明しているように、ISM(Independence Stage Management)は、組織の人、企業であれば社員の自立の状況を4つのステージに区分し、それぞれのステージにいる社員に適切なマネジメントを行い、できるだけ多くの社員に自立を促す考え方です。

 

組織への依存度を縦軸にとり、独立度を横軸にとった場合、低依存度・低独立度をハンモック、高依存度・低独立度をベッド、低依存度・高独立度をチェアー、高依存度・高独立度をスタンディングとして各メンバーのステージを測定します。 

ハンモックのステージにいる社員は「リゾート社員」です。ハンモックは南国のイメージ。ハンモックに身体を委ねるとリラックスできゆったり過ごすせます。自立でいえば、面従腹背してやらない、言われたこともできない、向上心もない、現状を気にしないという気楽な状況です。

 

ベッドのステージにいる社員は「ぬくぬく社員」です。組織目標達成のために、それなりの姿勢や態度をもって行動し、一定の成果を挙げている社員です。しかし、結局は指示通りに仕事をして、同じことを続けることから抜け出せていません。「なんとなく一生懸命にやっているのでいいだろう」という安心感や心地よさをどこかに感じながらも変われない自分に気づいていません。

 

チェアーのステージにいる社員は「腰かけ社員」といわれます。ここにいる社員は、独立度を評価すると高いポイントを付けられるけれど、どこか組織のベクトルと合っていない社員ですが、これをやりたいという信念をもち、将来を見通した目標を持ち自分の進むべき道をはっきりさせています。ある分野で高い能力もあり行動しますが、この組織のためには働きたくないと考えています。

 

スタンディングのステージは文字通り「自立した人(An independent person)」です。企業に依存しても同時に独立心を持ち、率先して自ら価値を生むことができる社員です。組織とフラットな関係にあります。常に使命感や向上心をもち、プロフェッションとして求められる技術を身に着け、人から求められる社員です。人としての気遣いや思いやりをもち常に進歩しています。また、改革を進め高い生産性向上や価値創造を行ない進化しながら組織貢献し結果を出し達成感を得続けていく社員です。

 

彼らは社内から頼られるだけではなく、仕事を通じて社外からも評価され頼られる人なので他の分類にいる社員よりも多くの学びやネットワークを持ちます。この人は仕事が出来ると実績を伸ばしたり紹介も受けられるため更に成果を挙げられる人材として社内で認められるなど社内外でのループをつくりつつ成長していける社員です。

 

ベットはともかく、ハンモックやチェアにいる人は組織への貢献は期待できず、そのままにしておくことは組織の障害になる可能性が高くあります。本人も成長の機会を逃しあたら人生を無駄に過ごす事になりかねません。

 

組織がスタンディングの人を数多く生み出すことで高い成果を得られることは間違いがありません。組織はスタンディングの人をつくるマネジメントを強化すること、そして組織に帰属する人はSIMのステージにおける自分の位置を確認し自立に向けて行動すすことで大きく成長できることを理解しなければなりません。

 

さて、一般的に自立した人とフラットの関係にある組織は高い成果を得るため、当人の思いに合致した適切な役割や権限や報酬を提供し、当人を組織に引き留める努力をします。当人も自分の思いを達成できる環境がある限り組織の思いに呼応し、組織に貢献します。

 

そうはいっても、自立した人が帰属する組織にはもう自分の思いを達成できる環境がないと考えることもあります。転職をすることもあるかもしれません。自立して組織とフラットの関係にある人が転職を決断したときには、組織側にもいくつかの判断が生まれていたことが想定できます。

 

  • 組織でも当人が必要がなくなった
  • 組織では当人が必要だが留めておくことを諦めてもよい
  • 組織では当人が必要だが留めておけなかった

がそれらです。

 

必要がなくなった、という背景には、当人の代替ができる他の人が生まれたか、当人の行っていた業務からの撤退や縮小があります。当人もそれを理解し自分を求める組織に転職するのは自然です。

 

必要だが留めておくことを諦めてもよいという判断には、仮に当該業務に当人の代替ができる他の人がいるか、当人の行っていた業務からの撤退や縮小という背景があったとしても他の業務において当人の力を借りたいという思いがあります。ある分野で自立した人の属性から、彼らはどのような職種に就いたとしても成果を挙げられる能力を身に着けていることが多いからです。ただどうしても残って欲しいほどではないため当人の転職を了解したともみてとれます。ここまでの状況では組織にとっても当人にとってもマイナスの状況にはありません。

 

一方、組織にとしては必要だが留めておけなかったという状況では、組織と当人の関係は良好ではない可能性もあります。「これだけの条件を提示しても辞めるなら勝手にしろ」という状況です。もちろん、当人の転職したい思い>組織の思いの結果として組織が最終的に「君のためになるなら仕方ない」と了承し、良い関係を保持しているケースもあり一概に関係が悪いということではないかもしれません。

 

いずれにしても転職元の組織にとればさまざま理由はあるとしても、何らの分野で高いスキルを以て自立した人が退職することによる有形無形のデメリットはあります。しかし、人が組織で力をつけて自立した後、良い関係を保ちながら次の組織に転職することができれば、当人、転職先の組織にとってはいうまでもなく転職元の組織にもいくつものメリットがあるのも事実です。

 

転職先が同業であれば微妙な問題もあるものの、そうした制約がないとすれば、

  • 仲間や上司との交流を通じて転職元の組織のメンバーの知見を高められる
  • 転職元の組織とのコミュニケーションにより、当人が転職後得た知見を活用できる
  • 転職元と転職先組織の交流を通じて新たな価値創造が得られる
  • 転職先でさらに力を付け自組織に戻る可能性がある

がそれらです。

 

多くの組織が自社で自立する人を育成し、彼らが組織間や事業間を行き来(人材流動化)することで必要な事業への人材を確保できたり、組織に新たな価値を生み出すことができます。

 

最近ではいくつもの組織が転職者の交流会を組成して上記のメリットを得ようとする動きがあると報道されていました。また、積極的に副業を推奨し他の組織との関わりを促し、本人や組織をの成長を得るための学びを生み出そうとしています。

 

自立した人が組織間を移動しながら帰属する組織に新しい価値を提供する存在になることには大きな意味があります。

 

各組織は自社のメンバーが現状どのような状態にあるのかを測定し、できるだけ多くの人がそれぞれの思いを信念や情熱に変え組織のなかで成長し力を付け、どこからも必要とされる、自立した人(スタンディング)となれるようマネジメントを強化していく必要があると考えています。

 

また人は、自分は何をしたいのかを明らかにするとともに、その達成のために最も有効な組織を選択する、あるいは帰属する組織のなかで、

  • 自分の得意なことや
  • 好きなこと
  • 評価されること

を見つけ、それらにフォーカスしながら自分の力を付けるために努力する。そのうえで自分はISMのどのステージにいるのかを常に認識し、スタンディングできるよう行動を見直さなければなりません。

 

組織にいるからこそ得られる経験や知見を得て力をつけて自立し、自分の思いを達成するという意識をもち、「どこからも求められる人」にならなければなりません。

 

人は、自らを律しどこに身を置くとしても組織を最大限活用できる自分をつくれるよう活動することが有益です。

あるべき組織と人の関係性

目的を達成し易くするために人が組織をつくります。業種や仕事の内容にもよりますが、事業を始めた人が仕事を進めるとき、自分一人で目的や目標を達成することが難しいとき、その都度に必要と思われるスキルをもつ人を確保します。

 

当初からの必要があり、メーン業務において仕事の質を高めたり、量をこなすために人が採用されます。さらに、当初はメーンの業務でスタートしても、事業規模に合わせてメーン業務を支援する業務充実への要求が高まり、システム化や外注化の選択肢とともに人員増が図られることも通常です。経年により組織が成長していく過程です。

 

そうして拡大する組織においては、ボード、マネージャー、スタッフ(以下メンバー。自立はあらゆる階層に求められています)問わず経験を積み知見を得てスキルを向上させていきます。周りを見たり過去を振り返ると修羅場を経験したことが多い人ほど力を付けている印象があります。

 

彼らは個として自立し、環境変化に柔軟に対応できる人が単に同じ組織でやり取りしながら一緒に働く(形式的連携)だけではなく、各々の分野における高いスキルを持ち、役割や機能を果たすとともに、連携し、相互学習や不足を補い合うことで改革や新たな価値創造(実質的連携)を行います。

 

ここで自立とは、他からの支配や助力を受けず存在していることをいいます。常に向上心をもち、必要な技術を身に着けるとともに、常に改善や改革を進め生産性向上や価値創造を行ない、他から求められる人、が自立の要件を満たしています。

 

支配や助力を受けずに自立し組織とフラットな相互関係をつくる力のあるメンバーを数多く生み出し、メンバー間、社外間の実質的な連携を誘導することで組織はどのような環境においても成長し続けることができると考えているのです。

 

メンバーによる自立と(実質的な)連携の帰結として、事業の質が向上し、さらに量の拡大が起こるという循環が生まれます。組織に帰属する人が自立し協働がうまくいけばいくほど高い成果は得られ、組織成長の速度は高まり、組織も人も多くのベネフィットを享受できます。

 

組織の自立したメンバー相互の連携で得られる成果は、組織がないときと比較すると大きなものがあります。

なお、組織があっても

  • 自立したメンバーが少ない組織
  • 自立したメンバーがいなくても連携はとれている組織や
  • 自立したメンバーがそこそこいても連携が生まれづらい組織

があり、自立や連携を促すマネジメントが重要です。

 

自立したメンバーが少なく、連携もとれないときには、限られたメンバーによる成果により組織が牽引される傾向にあり、自立したメンバーの属性に経営の動向が大きく影響を受けます。

 

また、自立したメンバーがいなくても連携はとれている組織では、自立していないメンバーでも連携という形式はとれ一定の決められた範囲内で一緒に仕事はできるものの、自立していないメンバーからは感化や啓発や鼓舞もされず、ひらめきや刺激も与えられません。連携によるルーチンはうまく進んだとしても、決まったことの繰り返しを行う現状から脱却できず、環境変化への対応が難しく事業の持続性への確率が低下します。

 

さらに、自立したメンバーがそこそこいても連携が生まれづらい組織では、数多くあるエンジンが大きな成果を生む可能性は高くなるものの、エンジンコントロールに多大な労力を消費するとともに、彼らからのシナジーや相互支援による価値創造や革新を生みづらい傾向にあります。

 

自立のためのマネジメントや連携を促すマネジメントが必要な所以です。

 

  • 組織あり方や目的をミッションやビジョン、バリューにより内部に明らかにするとともに、外部にも自社の戦略をパーパスとして示し共感を得ること
  • 業務フローの見直しや生産性向上の取組みを継続すること
  • 明確な組織目標を設定、フィードバックを前提としたガバナンスを怠らず、組織目標達成のプロセスでコミットメント(約束)により掘り起こされた「一人ひとりのやりたいこと」の達成支援を行うこと
  • 各リーダーは率先して信頼と協調を生む組織文化を醸成すること

といったマネジメントが必要です。

 

人は一人で事業を行うこともできますが、組織に帰属することで多くのことを学び成長できます。

  • まずは自分が何をしたいのか、そのためにはどのような経験やスキルが必要なのかを想定し、組織で活動しながら依存せず、自立できる自分をつくる
  • 信頼を得て実質的な連携を行い成果を得る
  • そのプロセスにおいて得たすべてを以て組織に還元する

ことが人として成長できる最も効果的な方法であると考えています。

 

組織と人の関わりには、一つの組織でステージを高めながら成長することや、また、力をつけて求めるもののためにあるときには組織を移り、さらに自立し人から求められて他の組織で活躍する、といったステップを踏んでキャリアを積み自分の目的を達成すること、そして起業の道を選択することなどさまざまなバリエーションがあります。人にとり、組織が如何に大切な存在かがよく理解できます。

 

そこで必要なことは、組織にいながら面従腹背したり、漫然と組織に従属し何もしなかったり、またはできる範囲で仕事に関わり楽をして時を浪費するのではなく、どのような仕事も厭わず率先して実践し、常に自立して実質的に連携しながら組織や社会に貢献しつつ、自分の思いを達成していくこと。これからも挑戦を続けていきたいと考えています。