よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

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さて、今日は中国地方に来ています(一昨日北海道、昨日東北、今朝東京と下ってきました)。病院で事務長と組織についてミーティングをしました。

現場にはマニュアルがあるが、人事、総務、医事、地域連携、営繕、経理等々事務系にはマニュアルがない、ということでした。
何年間も言い続けてきたがマニュアルができないため、新たな組織編制(組織リニューアル)をするということでした。組織を変えるということは、個々人の仕事を変えるということであり、個々人に仕事の引継ぎ書を書いてもらうという話をされました。引継ぎ書としてマニュアルを作成するとのこと(なるほど…)。

病院はISOをとっていますから、ISOのフォームで作成するんですよねとお聞きしたところ、ISOの委員に説明を受けながらISOフォームで作成とのことでした。
大掛かりな組織再編成であり、ほとんど全員の担当を変えるということでしたので、きっと事務長の思いは達成されるでしょう。

しかし、ISOのマニュアルは業務フローと手順が中心です。
品質管理のためには、工場であれば決まったことを決まったとおりに実施するということがまず優先されます。品質を一定にするためには、標準化された業務を着実に実施する必要であるからです。

基本的に生産方法を決定したとき、や機器を設置したときにナレッジが活かされ、大半が決定しています。まれに多能工化といったかたちに転換することで、資本集約的ではありながらモラールアップを誘導するという生産方式では、さらに品質保証のための新しいノウハウが開発されるといことがあります。

しかし、KAIZENはあるにしても、私がさまざまな工場で監査を行ってきた経験では、多品種少量生産工場で、製品毎に金型を変更する、工程を短縮化するというケースを除き、生産方法を頻繁に変えることは稀です。

病院は違います。組織、制度、人の配置及び能力等によって、仕事のやり方は大きく変わることがあります。労働集約的な業態において、資本集約的な工場と同じシステムがすべてなじむわけではありません。生産工場から生まれたISOは、目標志向をクリヤーしたうえで、ナレッジ志向へ展開していかなければなりません。

病院マニュアルは手順だけではなく、また留意点といった限られた範囲の記述だけではなく、ナレッジを明確に収集し、共有化し、創造活動へ誘導することで、組織全体のバリューを高めていく道具になる必要があります。

うまいやり方、コツ、さらには失敗したこと(インシデント、アクシデントをも含む)といったものを収集しマニュアルを常に改訂することや、それを意図的に職場内教育の標準化された道具として利用することで、教育、評価制度とのリンクをはるといった利用をしていくことが必要です。

病院はプロフェッショナルな人の志と、執着、そして能力によって成り立っています。
病院で働く職員の方々の力を最大化し、最適化するためには、組織として何をすれば良いのか。

マニュアルもISO的なものを乗り越え、リアリティのあるナレッジマネジメントのツールとしてそれを利用する職員のスキルを高める道具として進化する必要があります。事務系マニュアルも病院マニュアルの一部として単なる手順書や業務フローから脱却し、ナレッジ化されることにより職員の能力を最大限引き出すことができます。