よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

最強のスタッフマネジメント

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最近、コロナがひと段落したこともあり、講演会やウェビナーを含め、リアルにおいても医療機関の理事長や院長と話す機会が増えました。そこで、多くの診療所にスタッフマネジメントへのニーズがあることが分かりました。

 

会計事務所のクライアントである様々な業種の企業幹部からも、社員の扱いについて相談を受ける機会が多くありますが、とりわけ資格保持者が多く、失業のリスクが少ない医療従事者は売り手市場に身を置いているため、マネジメントが難しい傾向があります。

 

しかし一方で多くの医療従事者の心底には患者を救いたい地域貢献をしたいという思いがあり、一般企業の社員に比して医療機関のミッションとスタッフのベクトル(進む方向)が自然に合致しているケースが多いのも事実です。それは明確な受容できるトップマネジメントの方針さえあれば、行動の一体化ができる可能性が高いことを意味しています。

 

必要なことはスタッフ個々の思いを実現させる戦略明確化、そしてその実行であることが分かります。

 

スタッフをやる気にさせるためにはどうしたらよいか、という質問に対し私は以下の答えを用意しています。

 

まずは、

  1. どのような診療所や病院をつくりたいのか
  2. どのような医療を行いたいのか
  3. どのように医療介護に関与するのか
  4. 時間軸への執着のために事業計画は立案したか
  5. どのように集患するのか
  6. どのようなマネジメントを行うのか
  7. どのような内外スタッフを用意するのか
  8. どのように運営していくのか

を院長が考えたうえで、

  1. どのような役割をもった内外スタッフを採用するのか
  2. どのような属性のスタッフを採用するのか
  3. 決めたことをどう実現するのか(統治方法の明確化)

にフォーカスし行動し、組織の運営方針を目標化し提示したうえでのOne on oneミーティングにより、

  1. 一人ひとりの属性や能力、思いを評価する
  2. 個々に明確な役割を付与する
  3. 達成に対する約束(Commitment=コミットメント)を行う
  4. 達成を支援する

ながれ(コミットメントサイクル)をつくります。

 

そもそも、スタッフは、ハーズバークの二要因理論にあるように、承認、責任、適正な評価、昇進、達成感(以上:動機付け要因)によりやる気になり、給与、福利厚生、同僚や上司との人間関係(以上:衛生要因)は悪いと不満になるけれども良くてもそれほどのやる気につながらない、という傾向にあります。

 

スタッフの人心掌握を行い、やる気になって院長と一緒に動いてもらうためには、彼らが率先垂範しリーダーシップを発揮するとともに、上記のながれを確立し適切な処遇を行うことが有効です。

 

そもそも人にとって達成感を得続けることが成功であり、その場を提供することが組織の役割であり責任です。

 

そのことを念頭に、

  • 組織適合できない人を見つけるための採用基準を設定する
  • 採用時に失敗しない
  • 上記コミットメントサイクルづくりを怠らない

ことがスタッフマネジメントをうまく行うことだと理解しなければなりません。

 

戦略や行動計画立案や目標設定、(人間力と技術力)評価・教育、コミットメントサイクルの適正化等々においた議論しなければならない詳細な課題は数多くありますが、まずは上記の枠組み(Framework=フレームワーク)を意識し行動することを怠れないのです。もちろん、診療所のみならず病院においても、一般企業においても同様のアプローチが重要であることはいうまでもありません。

 

事業の盛衰は、時代、環境、ドメイン、戦略、仕組み等により影響を受けますが最後はトップマネジメントを含む社員の質に大きく依存します。

 

傲慢かもしれませんが、事業を通じて人がどう生きるのかという命題に対する示唆を与えられるマネジメントを行なうことがリーダーの重要な仕事の一つであると私は考えています。