よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

俯瞰と凝視

f:id:itomoji2002:20210401224318j:plain


物事をみるときに、全体をみる、あるいは部分をみる方法があります。上から全体を見ることを俯瞰する、部分を詳細に見るときには凝視するといいます。

 

俯瞰では全体は理解できますが、詳細についてはよく判りません。凝視すれば詳細は分りますが、全体を把握することができません。以前、函館空港に降り立つ前に、五稜郭をみて全体を認識したうえで五稜郭に行き、詳細なつくりを見ることができました。

 

俯瞰することで、函館市のどこにあるのかの確認、五稜郭の名は体を表すという事実を理解できました。

 

後に五稜郭公園に入り砂利を踏みながら歩き、お堀を覆いつくした藻をみることで歴史を思い、芽吹く木々の枝ぶりや匂いに空気の質を、そして復元された箱館(函館)奉行所跡や施設をよくみることで五稜郭を肌で感じることができました。

 

両方の見方を経て初めて五稜郭の存在や、稜堡=りょうほと呼ばれる5つの突角をもつ星形五角形の外観から五稜郭という意味が腑に落ちたし、また自然の美しさや五稜郭タワーの凛とした姿勢をみて五稜郭の多くを理解できたのです。

 

ここで、ふと気づいたことがあります。それは、いつも何かをみるときに、こうした双方の視点をもって対処しているのだろうか、ということです。

 

俯瞰や凝視ではなく、どこかの一部に触れて得た情報により、一方的な判断で何かを決めてしまうということがないのか、全体を把握したうえで、検討すべきところに目を向け、しっかりとその内容を捉えているのかを見直す機会になったのです。

 

事実、いろいろな企画や事業に取り組み、物事を一面でしか捉えることをせず、思い込みで何かを始めてしまったことを後悔することがあります。

 

経験を積むごと注意深くなり、多角度的に検討できるようになったとは思いますが、まだまだ完全にはできていないかもしれないと確認できました。

 

今でも小さな決断ができないために大きなロスを出したり、熟考しないで行動した結果、期待していた成果を得られないことがあるからです。

 

マネジメントにおいては、何か判断をしなければならないとき、フレームワークを使い決断の一助とします。フレームワークは、「論理的思考のために共通して用いる考え方や枠組み」をいいます。

 

俯瞰と凝視についても物事をみるときの考え方の一つとし、具体的にどう対処するのかのフレームワークをリストに載せておく必要があります。

 

考え方が近いものにMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive=ミーシー)があります。MECEは、お互いに重複せず、全体に漏れがない=漏れなく、ダブりなくという意味をもっています。

 

何かを考えるとき、ある部分が重複していたり、逆に抜けてしまったりすることを避けるための意識を持つという意味では、俯瞰と凝視と似ています。

 

併せて利用するとよいと思います。俯瞰と凝視を意識しながらMECEで物事を考える、というアプローチです。

 

どこに視点を置くのかにより、SWOT、4C4P、ロジックツリー、マインドマップ、AIDMA、ASCS、PDCA等、使い慣れているフレームワークを活用しますが、前段として俯瞰と凝視、MECEを意識すると有益ですね。

 

何をしたいのかを明確にしたうえで、多角度的に物事をみる、判断をするということがいかに大切なことであるのかを再確認することができました。