よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

患者さんの治療原価について(5)

セラピストレーサーさんのトラバに『診療報酬の財源、すなわち医療保険の財源枯渇、というよりも国家予算歳入不足による財源確保の困難性の問題と病院のコストのは密接に関係しています。限定的な収入でやりくりできない病院は淘汰されます。

一方、必要な人に必要な医療を…というこの記事の指摘は、限られた病院という社会資源を有効活用しよう…。本来必要でない人には、自由診療でという議論、大切だと思います』と書きました。

私たちは、今国家予算40兆円程度、マイナスになっていることに何の驚きも感じていません。
国がそれだけを国債でまかないながら、国を運営しようとしまいと無関係の世界で生活しています。勿論国家公務員の方も医療従事者としていらっしゃるでしょうし、自治体病院の方もいらっしゃるでしょう。

独立行政法人化された病院や自治体病院は赤字であっても、税金や補助金での優遇や填補によって病院を運営し続けることができます。地域になくてはならない存在であることもあるからです。しかし、病院自体が努力して利益を出す体質にしていかないかぎり、結局は資金を回すことができず淘汰される運命にあることは皆が知っています。

しかし、例えば自治体病院はトップが下からではなく横滑りでトップになりますし、また幹部スタッフがやはり医療以外からよこすべりで3年程度のあいだ病院に来て、また去っていきます。いろいろな自治体病院の幹部の方とお話しましたが病院のこと、医療のことを知る前に転勤があり、結局マネジメントしていないということでした。

合理的な医療、医師やスタッフを活かす医療を行うためには、やはりマネジメントの支援が必要です。冗費をなくし、精一杯限られた資源のなかで成果をあげるというマネジメントができないわけはありません。埼玉県はその一つの例でしょう。まず一つ一つの病院がコストを厳格に考え、経営資源を有効活用することが必要です。

国や自治体自体がまず、マネジメントを徹底的に推進し(誤解がないように説明すると独立行政法人は結構必死に以前から厳格なマネジメントを志向しているところが多いです)、コスト管理を行うことで一つ一つの病院経営を確立すれば、税金や医療保険の適正運用を行うことが可能です。国民一人ひとりが必要な医療を受ける、必要でない者が医療を受けないという視点とともに、こうした視点が議論される必要があります。

歳入が40兆円で、歳出が80兆円、マイナス分は国債。数年後には1400兆円の預金資産に債務がならび、そして超す。債務超過国への転落が起こります。そこから先の日本がどうなるのか誰もわかりません。しかし、国レベルで財政改革がつまりムダなコストの削減が行われれば、その時期を先延ばしすることができます。

医療保険下においても、繰り返しになりますが、一つ一つの病院がまずコストを削減し合理的な組織運営を行える体制をつくり、多くの国民を支援できる体制をつくりあげること、そのことによって(治療効果を高めたり、余計な治療をしないといったことにより)少ない保険資源で多くの医療支援を行なうことができれば、医療保険を確保しながら現状体制を維持していくことが可能です。

勿論トラバした記事のように、国民一人ひとりの意識変革のもと、医療はコストがかかっているという理解をしたうえで、健康管理に留意し、自らの責任で自らの身体を守ることを前提とした医療のあり方を考える。

医療的要請がない場合には、保険の範囲を超える場合には自らの負担で医療を受ける(但し、医療が必要な患者さんには十分な保険対応ができる)、そんなながれをつくりあげていくことができれば、現状あるさまざまな課題を解決する糸口がみつかると思います。

国も自治体も、独立行政法人自治体病院も、民間病院も、医療にコスト意識やマネジメントの発想をより取り入れ、経営資源の最適化を図るとともに、最大の成果があがる医療を提供できるよう努力する。

そして国民や患者も健康管理を自己責任で推進するとともに、医療は自己負担以上にコストがかかっているものであることを十分認識し、社会資源としての医療を皆でうまく利用していくための方法を常に考え行動する、といった活動が行われることによって、皆がそれぞれの目的を達成することができると考えています。