よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

ブランドな病院の時代と医療制度改革

 地域で患者さんが集まる病院には、マネジメントの側からみて、いくつかの共通点があることは、すでに説明しました。ここで再度確認します。
 ①トップマネジメントによい医療をしたいという強い思い入れがあること
 ②トップマネジメントに優れたリーダーシップがあること
 ③トップマネジメントが柔軟であること
 ④トップマネジメントが職員から尊敬されていること
 ⑤明確な戦略を立案していること
 ⑥職員を活かすことをいつも考えている
 ⑦戦略達成のための改革を計画的に進めていること
 ⑧改革を行うポイントを掌握していること
 ⑨優先順位を判っていること
 ⑩改革を実行するブレーンがいること
ということがそれらです。

 すぐれたマネジメントが行われている病院は、医師やスタッフ、そしてオペレーションが優れており、結果として患者さんの目には次のように映ります。
 たとえば外来においては、
 ①総合相談窓口の看護師さんが丁寧
 ②受付のスタッフがとても親切だ
 ③受付に時間がかからない
 ④外来の待ち時間が短い
 ⑤あるいは待ち時間を短く感じさせる仕掛けがある
 ⑥外来医師が患者さんの顔をよくみて話しを聞いてくれる
 ⑦専門的な話しをやさしく噛み砕いてしてくれる
 ⑧いろいろな可能性をも含め、これからの診察、診療の方針を提示してくれる
 ⑨検査の説明が詳細
 ⑩十分な情報を提供したうえで患者さんの判断を促す
 ⑪検査や撮影が円滑
 ⑫結果をできるかぎり迅速に出してくれる
 ⑬プライバシーが守られているという印象を受ける
 ⑭外来看護師さんがてきぱきしており、思いやりをもって接してくれる
また、入院においては、
 ①入院期間についての説明がある
 ②どのような治療をするのかについて明確な説明が医師からある
 ③スケジュールが提示される
 ④スケジュール通りに治療が進む
 ⑤費用がいくらかかるのか、退院したときにはどのようなことが困るのかについての説明をしてくれる
 ⑥患者さん自らが治療に立ち向かう勇気をもたせる言動がある
 ⑦スタッフが患者さんの立場に立って医療看護をしているという気持が伝わる
 ⑧どの看護師さんがベッドサイドに来ても情報が共有化されているという実感がある
 ⑨スキル的に不安がなく、また第三者によって常に医療看護が確認されている
 ⑩なぜそうするのか、なぜそうしてはいけないのかといったことについて納得するまで説明してくれる
 ⑪短い期間であっても親身になって医師やスタッフが対応してくれる
 ⑫患者さんが医師やスタッフとの信頼関係を築けたという意識をもつことができる
 ⑬退院後についても医療及び介護を通じたケアのプランを示してくれ、具体的に説明してくれるため、安心して入院できる
 ⑭入院期間すべてを通じてコストについて常に説明があり、選択肢をもって対応することができる
 ⑮治療が早期に進み、他の病院と比較して入院期間が短くてすんだ
 ⑯社会復帰が円滑にできるバックアップ体制のなかで、希望通りの社会復帰ができる  

 このような特性が、地域住民や患者さんからみた優れた病院の姿です。
 患者さんからみれば、常に患者さんがこうして欲しい、こういう医療サービスを受けたいと考えていることが、考えている通りの状態で提供される病院とそうではない病院について、自然に比較を行い選択が可能であれば、自分にとってよい病院を患者さんは選ぶことになります。信頼し、信用し、安心する病院、ブランドな病院として扱われることになります(以上拙著ブランドな病院の時代から抜粋)。

 さて、厚労省医療制度改革大綱であげているキーワードに次のものがあります。
「安心・信頼の医療の確保」

 私たちは、大綱を大綱としてみるのではなく、具体的に何をしなければならないのかについて、詳細を
議論することが必要です。ベッド数の削減や、マクロでみたときの前提としてのDPCや個々の病院の平均在院日数の短縮ばかりに議論が集中し、身近なかつ意味のある行動への議論がなおざりにされていることがないようにしなければならないと考えています。