よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

営業キャッシュフローとは

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先日、ある組織で、簡単な財務のレクチャーを行いました。そのなかの一つキャッシュフローについての資料です。

『キャッシュフロー(cash flow、現金流量)とは、お金の流れを意味し、主に、組織活動によって実際に得られた収入から外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れのことをいう。現金収支を原則として把握するため、将来的に入る予定の利益に関しては含まれない。

「損益は意見であり、現金は事実である」という言葉がある。損益は会計処理により異なるが現金は常に変わらないことをいっている。基本的には、利益がでていても、

  1. 支払いが早い(できるだけ支払いは遅く=ただ、誰も物を売ってくれなくなる危険がある) 
  2. 在庫が多い(できるだけ在庫はもたない=JIT=ジャストインタイムの実施)
  3. 回収が遅い(売掛金が回収できなければ致命的)

といったことによりキャッシュは減少する。粉飾している以外では多くのケースで黒字倒産が起こる理由はここにある。


キャッシュフロー会計(cash flow accounting)とは、組織の経営成績を現金・預金の増減をもとに明らかにするという会計手法のことである。

  1. 営業キャッシュフロー(営業活動により、キャッシュをどれだけ獲得したのか)
  2. 投資キャッシュフロー(投資活動により、どれだけキャッシュを使ったのか。営業活動以外での資産に関わる全ての資金の動きを示す。主に固定資産の取得や資金の貸付による資金の増減、他社への資本投資に関して記載する。
  3. 財務キャッシュフロー(財務活動により、どれだけキャッシュを確保したのか。主に借入金による調達や返済の増減や、自社の株や債権に関する発行益・配当金支払・買戻・返済などを記載する)

の3点からキャッシュフローを検討する。


 キャッシュフロー計算書により様々な情報を入手することができる。その内容を検討することにより、企業活動について、以下が理解できるようになる。

  1. 資金の源泉がどこにあるのか
  2. 事業でのキャッシュ(営業キャッシュを生み出す力はどれだけあるのか
  3. 投資活動は営業で稼いだキャッシュの範囲で行っているのか
  4. 金融機関からの調達が過多になっていないか

がそれら。とりわけ2.が最も大切。表向き資金繰りがうまくいっていても、営業キャッシュフローがマイナスでは事業は立ち行かない。営業キャッシュフローの源泉は利益。顧客から評価され、利益を出すことが事業の最終目標であり、ここを忘れてはならない。


なお、海外ではキャッシュフロー会計にもとづくキャッシュフロー計算書(Cash flow statement, C/F)の作成が組織に義務付けられているし、日本でも、1999年度からは、上場企業は財務諸表の一つとしてキャッシュフロー計算書を作成することが法律上義務付けられている。

 

なお、フリーキャッシュフローの概念がある。フリーキャッシュフローとは、企業が本来の事業活動によって生み出すキャッシュフローのことをいう。ここで「フリー」とは、企業が資金の提供者(金融機関や社債権者のような負債の提供者、及び株主である資本の提供者)に対して自由(フリー)に分配できるキャッシュという意味。企業はこのフリーキャッシュフローを原資として、債権者に金利を支払ったり、債務の償還を行い、あるいは株主に配当を支払ったり、株式の消却を行うことになる』


社会人は損益やキャッシュフローについての学習が必要ですね。

 

ところで組織戦略や財務マネジメントと、現場を束ねるマネジメントがあってはじめて経営は成り立ちます。現場だけではなく組織戦略や財務マネジメントにも力を注ぐ必要がある理由です。


経営資源を最適化して、もっともよい組み合わせで成果をあげていかなければならないからです。右肩上がりから右肩下がりの時代には、とことん合理性をもった経営をしなければなりません。これは効率よくということではなく、質を上げるということです。

「質が高ければコストは低い」という趣旨のことをポーターが言っていますがその通りです。

現場をとりまとめるマネジメントの質が高ければ、間違いなく現場の質も向上し、質が高く無駄のない、必要十分な経営が行われるという仮説です。

 

これはボスコンの経験曲線の理論とも符合します。「ある製品の累積生産量が増加していくと、単位当たりのコストが一定の割合で低下していく」経験則のことです。

 

この背景には明確な戦略と現場マネジメントにより、

  1. 人の定着率を高め、
  2. 個人の技術技術の向上や仕事の仕組の恒常的な見直しなど、
  3. 日々の業務を円滑な推進による環境整備を行う

といった前提があります。

 

たくさんの組織に訪問して、それが事実であることを見る機会が多くあります。人間的にも尊敬できる経営幹部、そして信頼し合う情熱に燃えたスタッフの存在が、結果といして仕事の質を高め、コストを引下げ利益を出し営業キャッシュフローを増加させます。

組織マネジメントのロジックのうちキャッシュフローはそのなかのほんの小さな一部ですが奥が深いので、これからも掘下げていきたいと思います。