よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

教育システムはどこにあるのか

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 教育には3つの柱があります。
 
 一つは職場内教育であり、二つ目は集合教育、そして最後が自己啓発です。

例えば看護部におけるプリセプティングは職場内教育であり、しっかりとしたチェックシートによって行われますし、卒後研修やラダーなどで、現場で必要な事項が教育されます。同じようなことはマニュアルやチェックシートを使い、コメディカルでも実施されていることが多くみられます。
 
 もっとも教育ができていないのが事務部です。たとえば受付業務についてはマニュアルが整備されたり、接遇についての学習が一人ひとりに行われたりしますが、基本的にマニュアルもあまり整備されていないことが通常です。

こうしてみると、患者さんに接点をもつところにおいてはより繊細な対応が求められるため、また、特に技術を要する部署においては間違いが命取りになるためマニュアルが整備されたり、教育のシステムができていることが分ります。
 
 情報管理やシステム、経理や総務、営繕や購買、経営企画といったところでは、患者さんに直接関与するものでもなく、したがって意外と一子相伝のようなかたちでノウハウが引き継がれていくといった傾向があります。

しかし、実際には標準化できる業務も多く、また事務部でも高い技術を要求されることが多数あり、他部署のスタッフに自部署の業務を理解してもらうことをも含め。マニュアルやチェックシートによる職場内教育が徹底されて行われることが必要であることはいうまでもありません。
 
 たとえば購買ですが、単にオーダーがでて何かを購入するのではなく、担当者には取引先の選定の準備や、在庫経済発注点分析、基準在庫の設定に関する理論が必要ですし、集中購買や分散購買によるメリットを科学的に管理することが求められていたりします。
 
 さらに在庫管理においては実態調査によるアイテム絞り込みや、消耗品の場所別使用制限や質を見たうえでの使用管理、もっといえば場所別帳簿在庫の管理、棚卸による差損や無駄の排除といったところにまで指導を徹底する必要があります。
 
 これらは生半可な知識ではなく、しっかりとした考え方を理解したうえで、具体的な行動管理に結び付けて行く必要があり、ナレッジをしっかりと伝えていくためにも体系的な教育が求められるものです。

営繕においても、部門別損益計算との兼ね合いによる物品、設備の適切利用誘導や、外注先管理、業務の進捗管理および開示、現場教育によるコスト低減などの業務を行うことが求められています。
 
 同じように総務でも経理でも、いわんや経営企画においても、まさに機能セクションとしての技術集団なりの教育が徹底されなければなりません。
 
 そして集合教育は、何かよいセミナーがあるから聞いておいてといった類いのものではなく、職場内教育で不足する知識やノウハウを、院内で徹底して習得してもらうために実施されるものであったり、病院としての導入が必要であるため組織として体系的に学習し、ナレッジ化するため、あるいは具体的な行動に結びつけることを前提として外部のレクチャーを受けるものです。
 
 院内の集合教育は職種間での交流や知識の共有のために実施される側面もあり、コミュニケーションを組織単位で考えたうえでの組み立てが必要だといわれています。

ある医師が留学していた病院で、医局以外の他の部門の集合教育のタイトルやコンテンツが常に掲示されていて、他の職種に参加を求めるためのコメントが提示されていたと述懐されていましたが、このように職種を跨いだ学習の機会を組織が意図的に提供することが必要です。

我々はそれをカフェテリアプログラムと呼んでいます。さまざまなレベル別時間帯別ノレクチャーを院内で設け、職員に参加を促すものです。
 
 参加者にインセンティブをつけて相互教育を促すということだけではなく、学習機会を多くもち、力をつけた職員を評価し処遇に反映している病院も散見されます。

いずれにしても、外部集合教育の資料を以て報告会を開催するだけではなく、それを敷衍化し、どれだけ院内に徹底できるかといった視点での教育を行うべきであるし、また、そのための外部研修を企画しなければならないと理解する必要があります。
 
 そして自己啓発。職場内教育を体系的に行い、そして不足するところを外部や内部の集合教育のカリキュラムで学習。さらにそれらを自分のものとするために自己啓発を行うというストーリーがあります。

したがって、自己啓発のテーマは自分で設定するのではありません。

病院として必要なテーマを個人個人の学習必要性に合わせて設定し、そのうえで個人の技術技能レベルを高めていくという方向で、自己啓発を捉える必要があります。
 
 自己啓発は自分で主体的に取り組むものの、客観的な目で自分に不足するテーマの選定支援を受けるという考え方を採用しなければならないのです。

このような3つの教育が正しく整備されているのかについて十分に検討することが求められています。
 
 なお、教育は評価の帰結であり、標準と現状の乖離を埋めるための組織活動であることを忘れてはなりません。

したがってマニュアルにしても、リスクマネジメントにしても、あらゆる活動や業務改善、職務基準、職能要件にしても、そして目標管理であってもすべて標準(到達点)と現状の差を発見(評価)し、それらを解消するために教育が行われるという考えかたをもたなければなりません。
 
 標準や評価がない教育はありえません。病院として、組織として職員に、どこまでの知識やスキルの習得を行ってもらう必要があるのか、どのような人材が必要であるのかといったところが設定されていることが教育の前提であり、その観点から教育システムが構築されなければなりません。

自院に、病院として企図された教育システム、それを担保する評価システムがあるかどうか、見直しをしてみる必要があります。