よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

成果獲得のためのフレームワークISME(導入、定着、機能、進化)とは

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 PDCA
は、普遍的な成果獲得のためのフレームワークです。

各組織は大小さまざまな目標を設定し、PDCAサイクルを回します。活動の結果として成果を獲得し、また次の目標を設定し、というように組織は成長していくのです。

 もちろん、個人においても課題解決のためにPDCAを回す、ということを意識下、無意識下で行う人も多くいます。

 

 しかし、当たり前はありますが、PDCAは成功を求めるフレームワークの一つであり、これだけで組織マネジメントを行うことはできません。

 

やろうと決めた何かを徹底したり、組織運営を行いながら得られたナレッジを組織の資産とする仕組みづくりを行うときに、留意しておかなければならないことがあります。

 

組織運営における実施必要事項の段階(フェーズ)を捉えることで、組織を挙げて最適行動をとるマネジメントを行うための枠組みが必要です。

 

導入、定着、機能、進化のフレームワークがそれらです。これを、導入する(Introduce)、定着させる(Settle)、機能させる(Make work)、そして進化させる(Evolve)の頭文字を拾い、ISME(イズミー)と言っています。

 

何かを始めたときに、始めたけれどもうまくいかない。なので次はこれ。これでもダメなら、次はこれ、という中途半端な動きをしている組織は求める成果を永遠に得られません。

 

PDCAサイクルを回しながら、物事を進めるプロセスを管理するとしても、成果を必ず得るために、常に実施必要事項のフェーズ管理を行い、決めたことは機能させる、さらに、よりよいものに進化させるという取り組みを行わなければならないのです。

 

そのために、このフレームワークを使います。

 

ここで導入とは、何かに取り組み始めたフェーズです。戦略実行のため方法や仕組みを考え、さまざまな機会を捉え、組織にあることの周知を行う段階を示しています。

 

例えば新しい制度を導入するときに、その制度の説明会を開き質問を受付け、一定程度納得してもらう活動を行ったのち、実際に運用が始まります。

大げさな話ではなく、通達で、こんなルールにします、といった対応で済むこともあるし、現場レベルで、今度からこんなやり方にしましょう、と話し合い決めることもあります。

 

物事の質や量に関わらず、何かを組織内で始めるとき、いまは導入期にある、だからこれを徹底しよういう意識をもつことが大切です。

 

次に定着です。定着は、決めたことが組織内で認知され遵守されてきたとか、行動が変容してきた、業務が変わり始めた、コミュニケーションが活発になった、〇〇が増えた、あるいは減ってきたね、という段階です。

 

100%求められているものは100%が到達点ですし、できるだけそうなって欲しいというものは、おおよそのスケールで評価が行われることになります。

定性的ですがマネジメントのなかには、定性から評価され定量での検証が追認的に行われるものもあり、その領域も含むという意味で説明しています。

 

機能は、進めようとしている事項が目的としているものや成果が得られるようになること、結果がでることを意味しています。

何かを導入し、工夫をしながら定着させ、さらに改善を行い、やろうとしてきたことを達成する、という状態を以て、機能する、機能させると捉えるのです。

 

卑近な例で考えてみましょう。

働き方改革の柱として、あるいは新型新型コロナウイルス感染症をきっかけとして導入した組織が話題になっていますが、テレワーク(ICTを活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方)の実施必要事項のフェーズ管理をみると分かりやすいと思います。

 

・当社はテレワークを積極的に、もしくはいたしかたなく仕事に取り入れた

・さまざまな課題がみえてきた

・補完的に〇〇のやり方も行おうと決めた

・やり方も〇〇に変えた

・実際に工夫を重ね、状況に応じた対応を行いながら、日常業務の多くでテレワークを進めてみた

・組織構成員の30%から始め、摘要可能範囲の最大値に近い50%までテレワークに変えることができた

・やっとテレワークが定着してきた

・十二分とはいかないものの、仕事の成果が従来のやり方と比較して遜色ないことが見えてきた

・ケースによれば出社するよりも生産性が挙がることが分かった

・テレワークは初期の目的を達成し機能しているね

というストーリーです。

 

何かを行うときに、組織構成員すべて、とりわけリーダーは実施必要事項を意識し、組織におけるそれらの運用状況が、いまどのフェーズにあるのかを見極めたうえで、行なうべき何かへのコントロールを行います。

判断を間違えると、次のフェーズに進めず成果を得づらくなるからです。

 

導入だけで終わり定着させることを怠れば必要実施事項は失敗に終わります。このレベルで終わってしまった取り組みがいかに多いことか。

 

新規事業も含め、新しいことを進めるとき導入で終わっていないか、いつまでに定着させるのか、定着しない原因は何か、本当に機能しているのか、機能していないとすればどこに問題が隠されているのかを発見し、都度手を打っていかなければなりません。

 

導入、定着、機能のフェーズを意識し、その段階に合致した取り組みを行うこと、導入したものが機能するまで徹底的に取り組むガバナンスが必要になります。

 

そして、さらに進化のフェーズに辿り着けるのかを考えなければなりません。

 

目的とした仕組みづくりを機能させ成果を享受したうえで、そこまでのプロセスで経験で得た知見や学習して得られたナレッジを、さらに高次に設定した目標達成のために活用するフェーズです。

当初の目的を凌駕して、新たな目的を得るための取り組みを行い、成果を得ることが、「進歩する」ということです。

 

当初の取り組みを深堀することもあるし、別の追加的な仕組みづくりを行うこともあります。

 

テレワークの例でいえば、

・ルールを追加してより働き易い環境を提供すること

・効果的なあシステムや機器を採用しテレワークの質を向上させること

・個々の自宅に組み立て型テレワークボックスを設置し働く空間設備を用意すること

・スモールサテライトオフィスを多数設置し、近隣に居住する者が交通機関を使わず集まり、縦ではなく組織横断的チームでのワークを行うこと

などが進化に該当します。

 当初の目的を超えて、明らかに新しい価値創造を行えたフェーズです。

 

 進化させるところまで誘導することができて、やっと該当する実施必要事項に対するマネジメントがひと段落すると考えています。

 もちろん、進化させたことを定着フェーズに戻して、定着→機能→進化→定着→機能…というISMEサイクルを回し続けることになるのはいうまでもありません。

 

 成果をあげるためにどのようなマネジメントを行えばよいのかを常に振り返る。

そのきっかけとしての、成果獲得(及び継続)のためのフレームワークであるISME(イズミー)、すなわち、導入する(Introduce)、定着させる(Settle)、機能させる(make work)、そして進化させる(evolve)サイクルを忘れてはならないと考えています。

 

リーダーは、何かを始めたとき「成し遂げるのは誰か?」と問い続けなければなりません。

そして答えます。「それは自分です(It is me!)(ISME)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行動最適化のためのスケール(知る、理解、受容、率先)

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  PDCAサイクルを廻し、目標達成を行うとき、職員の行動をしっかり見極めることが必要です。職員が目標に対し、どのようなポジションで仕事をしているのかを、「知る」、「理解」、「受容」、「率先」というスケールでチェックします。

 

 上司が合目的的行動をとろうとするとき、部下が目標を単に知っているだけで行動しているのか、理解して行動しているのか、あるいはこれは自分の仕事であり、自分の役割であると受容して仕事をしているのか、そしてそのうえで率先して仕事をしているのか、常に状況を見極める必要があるのです。

 

 「分りました!」とキラキラ輝く瞳をして、颯爽と仕事に取り掛かっていた部下が実は何も分からず、えーぇ!という結果で終わる仕事をしているケースは山のようにあります。

 

知ってはいるけれど、分かっていないのか、それとも面従腹背しているのかを見極め、その理由を明確にした取組みをしなければ、「頑張ってるんです」という言い訳を免罪符に、結果を出せないで終わる危険性があります。

 

単に知って仕事をしているのと、仕事の内容を分かって仕事をしているのでは、成果が大きく変わることはいうまでもありません。知っているだけで理解していないまま仕事をスタートさせてしまうのは、上司の部下への関わりが不足していたり、能力や教育の仕方に問題があります。

 

 心から理解して仕事をしているのかどうかの検さ証を常に行い、足りないところをしっかり指導していかなければなりません。

 

もちろん、分っているけど仕事をしない、面従腹背している場合にも成果はでません。なぜ、彼らは私の指示を受け止めないのか、日々の行動を反芻し、働く環境を分析する必要があります。

そこには様々な要因が潜んでおり、解決するのは一筋縄ではいきません。

組織の勢いや、リーダーに対する意識、職場の風土、人間関係、組織の制度等々ここではすべての検証を行うことはできないほどです。

絡んだ糸を解すように、障害を取り除いていくことになります。

 

仕事を自分の成長の機会と捉え、また、仕事は自分の生きがいの一つとして捉え、やりがいをもって仕事に向い合う者は、仕事のありかを知り、内容を理解し、そして自分の役割を受容れ、その達成のために行動します。

 

こうなると、仕事で成果を挙げることが彼らの達成感を生むことが動機になり、他者も巻き込みながら懸命に結果を出そうと活動してもらうことができます。目標を受容し、行動してもらえるよう、一人ひとりを承認し、彼らのやりたいことと組織目標の擦り合わせを行ったうえで、目標達成を支援する必要があります。

 

目標を受容する職員がどれだけいるのかにより、組織の盛衰が決まると強く思っています。結局は、こうした職員を生む組織をつくれるかどうかは、マネジメントの巧拙に依存します。

明確な方向を示したうえで、制度整備や仕組みづくりをしっかりと行い、適切なリーダーシップをもって合理的な目標を提示、その達成に向けた職員のコミットメント(公約)を得られるよう取り組まなければなりません。

 

なお、率先して仕事をする、という意味は、ここでは目標を凌駕して創造的に仕事を行う層の職員を指しています。

 

目標達成のみでは飽き足らず、さらに自己実現を目指し、意見具申を行いながら、超能動的に活動する者達です。

彼らは目標を受容し達成するばかりではなく、組織の未来をつくり出すエネルギーを生むことができます。

時代を超えて次の世代を担い、組織継続に貢献するこのような人材をどれだけ採用、育成できるのかが、トップマネメントの能力であると考えています。

 

多くの成功した組織は、常に行動のチェックスケールをもち、職員の行動をどのように高次のレベルに引き上げていくのか、日々腐心してきたのだと思います。

 簡単にはいきませんが、時代を超えるために、各組織は、知る→理解→受容→率先というスケールを以って、現状を見直してみる必要があるかもしれません。

 

 

業務改善は職員の4つの生き方に依存する

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業務改善とは、文字通り「業務の改善を行うこと」をいいます。日頃の仕事、改善とは、簡単にいえば、よりうまく、よりはやく、より安く仕事ができるようにすることです。経営資源を一定として成果を高める、すなわち生産性向上を目指していることが分かります。

 

改善には4種類あります。

  1. 自分で変えられること、
  2. 自部署で変えられること、
  3. 他部署の協力がなければ変えられないこと、
  4. 組織が決定しなければ変えられないこと

がそれらです。

 

今の仕事は完璧ではない、と考えるところから改善は始まります。

 

同じ時間で仕事の質を上げるためにはどこに留意して仕事をすればいのか、同じことをより短い時間でにはどうすればよいのか、コストを下げるための方法はあるかという、着眼を持たなければなりません。

 

常にその視点をもち仕事ができれば、生産性が向上し、組織や自分に時間が生まれます。さらに評価され、利益貢献ができるし、何よりも自分が成長し、組織貢献できることは社会人のプライドだと教える必要があります。

 

但し、経験上、業務改善提案は制度化しなければ継続できません。

  • 一定数の提案を行うことは仕事であると決める
  • 職員が提案できるように仕組みをつくる
  • 提案提出を啓蒙する
  • 組織がしっかりと評価する
  • 組織が改善に介入し、積極的に改善を推進する
  • 各部署のリーダーが率先して提案活動を行う
  • 適切な改善をした者に報奨を与える
  • 改善提案を管理する仕組みづくり

といった取り組みが必要です。方向→啓蒙→教育→評価→介入→報奨というプロセスを構築しなければならないのです。

  

業務改善提案制度には、次の特徴があります。

  • 全職員が参加できる創造活動である
  • 当初は無理やりでも、自分で考え行動する癖をつける機会
  • 提案者は制度にのって自らの貢献をアピールできる
  • 誰かの提案は、ベンチマークによる他部署への影響を与える
  • 部署間コンフリクトを解決する機会
  • 自分で何かを改善し評価されることで達成感を得られる

組織は、改善提案を制度を整備し機能させることに注力しなければ、組織の活力を引き出せないと考えています。

                                                                                            

ところで、改善提案活動は職員により行われますが、私は、職員の仕事に対す姿勢、もっといえば職員の生き方により活動の質や量が大きく影響を受けると考えています。 生き方や価値観が改善提案を受け入れなければ、制度に魂は入りません。一人ひとりの生き方に切り込み、提案を促す必要があります。 

 

場面場面で個人の考え方は変わる可能性がありますが、分かりやすいように私は職員の生き方を4類型に区分しています。

 

  • 「与えられた仕事をすればよい」という生き方(与えられた仕事ができない人については別途の対応が必要ですが)(1類型)
  • 「自分が仕事を通じて成長したいが余り他人との関係を持ちたくない」(2類型)
  • 「自分が仕事を通じて成長したいし他人とも積極的に関係を持ちたい」(3類型)
  • 「自分が成長するプロセスにおいて、自分がやりたい事を組織を通じて実現したい」(4類型)

というものです。

 

お分かりのように1類型では何かを変えようという動機がないため、提案活動は行われないと考えます。また、2類型では、チーム内やいわんや自部署以外のメンバーとのコミュニケーションがうまく進まないため、改善提案のうち自分でできる階善に制限される可能性があります。それほどは多くならない可能性があります。3類型がノーマルな社会人モデルであり、提案制度が機能すればしっかりとした提案が生まれ、成果もあがってくると考えます。 

 

この領域にどのように職員を引き上げていくのか、そのための文化・風土、職場環境をつくり上げていく必要があります。

 

そして4類型ですが、いわゆる、やり手の人です。実際に、こういう職員がいるクライアントがあります。「現状の課題はこれだ」「それを改善することでオペ1件当たり40分の時間節約ができるし、熟練がいらない」「年間6,500件のオペがあるので、年間4,000時間以上の節約と人員不足解消」そのためには大きな投資をするが2年で回収し他の数年間は大きな利益」といった提案をしてきます。

 

購買の責任者である彼は、投資のない案件も含め、有用な提案を少なくとも年数回行います。彼は自己実現のために、とにかく組織改革をしたい、そのための案件を目を皿のようにして発見します。高い創造性や問題解決能力をもった職員であり、このような人材が多数いる同院は長い間成長し続けてきています。

 

同じような医療機関は数多くあると思いますが、最終的にはこんな職員が多く育成されることを、改善提案制度の目的としています。

 

なお、ここで提案活動は職員の生き方に依存するという説明をしており、仕事の姿勢に依存するとしていないのは、仕事には本人の生き方が色濃く反映すると考えているからです。

 

前向きな挑戦を生き方としている人が、「与えられた仕事をすればよい」という思いで仕事をするはずがありません。仮にそうであれば、その嫌な仕事を離れられない事情があるはずで説明がつかないのです。生き方と仕事の取組みは他の制約がない限りイコールであると考えています。他の制約は社会情勢や特殊な事情、短期的には組織の状況に影響を受けます。

 

いずれにしても、1類型、2類型の職員には仕事への取組み姿勢をどのように変えていてもらうのか、よって社会人としてどう生きるのかを考える機会を提供するとともに、リーダーが、職員としてのあるべき生き方を示せるよう行動しなければならないと考えています。


 

病院改革のための取組み

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 病院を変革することは、課題を解決することと同じ意味です。病院をどのようにしたいのかが明確であれば、現状との間に必ずギャップがある筈です

 こうしたいのにできないという問題点です。問題点を解消するためにはこうしなければならない、という課題があります。課題を解決することにより、思い通りの病院をつくりあげることができます(もちろん、こうしたいという思いがなければギャップは生まれないので、改革も始まりませんが!)

 

 思い通りの病院をつくるために病院変革を行うことを職員全員が受け入れることから変革が始まります。この部分が腑に落ちていないと、笛吹けど踊らず、ということになりがちです。

 

 なぜこんなことをやらされているのだろうという思いは、こんな病院をつくりたいという思いが浸透していないことが原因です。浸透することは、誰かがこんな病院をつくりたいといっているというレベルではなく、自分もそう思う、自分もそうしたいという段階に到達することを意味しています。

 

 病院の進む方向、到達する状況を誰もが共有することが理想です。もちろん個人の価値観は多様であり、全員が100%同じ意識になることは不可能でしょう。

 しかし、仕事をしていくうえでの大よその部分で同じ思いをもつ、ということが重要です。多くの職員がそう思っていればそれは組織の文化となり引き継がれていきます。

 

 その思いが風化したり、劣化しないように常に組織は働きかけをしていきます。

マーケティングを怠らない、戦略をつくり続ける。その達成のために事業計画を立案し、医療と財政のバランスをとりながら、常に課題を発見し解決することで、意識をもって事業計画をそれを達成しようと努力する。

 目標管理制度や評価制度、教育のシステムがなければなりません。形式ではなく実質的にそれらが活きるためにはすぐれたリーダーが必要です。中間管理職教育を制度化していかなければなりません。誰かが制度をつくり、仕組みを整備し、それを導入して運用する。機能させる、進化させるプロセスを管理します。

 

 思いだけではなく、具体的な手法が必要です。経営学は産業革命以来進化してきた社会科学です。形式を真似するだけだったり、思い付きの経営をするのではなく、しっかりしたロジックをもっての対応が必要です(ガバナンス、可視化、増患、生産性向上[コスト削減、医療の質向上]などが重要です)。

 

 ここで最も重要なことは職員のコミットメント(公約)です。職員が能動的に行動できるよう、目標と彼らの思いをすり合わせ、支援を受けながら組織目標を達成することがやりがいにつながる仕組みを導入しなければなりません。

  ここではロジックを実践し、経験を積み重ねていく時間も必要です。

正しいマネジメントを行えるリーダーの活動を継承する人材が育成される。そうして病院改革が継続されます。職員の教育を怠ってはなりません。

 

 病院それぞれの課題を明確にする、その解決のための手法を開発する、仮説を立てて徹底して実践する、評価して修正する、その連続のプロセスに評価される病院が生まれます。                        

 どのような病院をつくりたいのか。しっかりと考えを整理し対応する必要があります。

 

地域密着型診療所のあり方

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診療所には、さまざまな診療科がありますが、基本は初期の診療を行い、対応できなければ病院への紹介を行うことが診療所の機能です。

 

地域密着型診療所とは、文字通り地域に密着し、浸透する診療所をいいます。密着しかつ浸透することは、地域住民から頼りにされ、何かあればそこに相談に来るなど、「地域になくてはならない存在」になることを意味しています。

 

単にプライマリーケア(初期の医療)を行うという役割だけではないのです。

 

診療所の医療圏は500mといわれていますが、曜日や時間により診療圏は広がる可能性があります。地域に日曜や祝日、夜間に診療を行う診療所が少なければ、他の地域からも患者を呼ぶことができるからです。

 

ここにいう自院の周辺の「地域になくてはならない存在」になるためには2つの活動が必要です。

 

1.地域活動

まず、院長やスタッフが地域住民によく知られていなければなりません。診療所のなかで活動するだけではなく、院長やスタッフがあらゆる地域活動に参加し、地域に貢献することが必要です。

 

自治会に参加する、お祭りにデスクをつくり万が一に備える、近隣の校医になること、イベントに診療所として参加すること、講演会を開き地域住民の健康管理に資すること、レストランとコラボして「生活習慣病と食事」などのセミナーを行う、健康クラブを組織し、会員をあつめながら地域住民の知名度を高めていく、ことなどなどがそれらです。

 

2.診療の質向上

もちろん、診療所の信頼を得るためには、スタッフ教育に力を入れるとともに、待ち時間を短くする工夫や適切な診療、円滑な業務フローをつくることが不可欠です。

 

業務の棚卸をしたうえでマニュアルを作成し、また教育を徹底して行い、業務改善を行い、クレームがあれば直ちにそれを糧として活動し、より高い質の活動につなげること。

 

結果、健康で豊かな生活を送れる地域住民をどれだけ増やせるのかが診療所の機能であり最終的な役割だと思います。

 

診療所での医療の質を高め、いつでも頼りになる診療所だという思いをもってもらうとともに、患者を待つだけではなく自ら進んで地域にでて、疾病予防や健康管理を積極的に行うことが、地域に溶け込み、地域から必要とされる地域密着型診療所となるための有効な活動だと理解しています。

 

成果を出しやすいCIMとは何か

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 組織におけるあらゆる階層において随時の意思決定が行われています。トップマネジメントが行う意思決定を経営意思決定といいます。

 

 トップマネジメントは常に組織運営に必要な決定を行い、結論を出さなければなりません。経営意思決定を行うことは彼らの重要な役割の一つです。それでは組織トップ は、どのように決定を行えばよいのでしょうか。

 意思決定による管理方法にはトップダウン、ミドルアップ、ボトムアップといった方法があります。

 

 しかし、トップが独自で意思決定を行い下位に指示を行うトップダウンメソッドでも、中間管理職が軸になるミドルアップメソッドでも、そして現場の意見をもとに意思決定を行い行動するボトムアップメソッドでもなく、トップマネジメントが着想し、現状分析→情報収集→仮説立案→情報収集→仮説検証→情報収集→仮説立案…というサイクルを繰り返しながら確信がもてたところで意思決定を行い下位に落とす、形をとることが有効です。

 

 トップマネジメントが現場や中間管理職と「コンスタントにやり取りをしながら意思決定を行い管理する方法」を、私はCIM(コンスタントインターチェンジメソッド=シム)と名付けました。

 

 CIMでは、意思決定を行うトップマネジメントが情報収集を行い、自分の考えを整理したうえで、情報を下位に流す。そしてその考えが正しいかどうかを情報を収集し、検証作業を行い判断を行う。そしてまたその考えが間違っていないか、情報収集により確認し…という作業を納得いくまで繰り返し、最終的に意思を決める、というながれをつくりだします。

 

 決めたことをいきなり落とすトップダウンでもなく、現場の意見を尊重し判断をするといった意思決定ではなく、一端ボトムに落とし現場の情報を得て、検証し結果をミドルに落とし、彼らの持つ情報を判断するというプロセスを何度も繰り返しながら、さらにマネジメント層と議論し考えをまとめる、といったトップマネジメントと組織内を行き来する(ギザギザした)やり取りのなかで、最終決定を行うものです。

 

 この方法による意思決定は、既に現場の事情や意見を汲んでいるし、中間管理職の考え方も聞いた結果なので、トップマネジメントから、ある決定による指示が行われたとき、組織に受容れやすい。なので皆が同じ方向を向いて行動することができ、成果を出しやすいというメリットがあります。

 トップマネジメントが何かを決めるときに必要以上に時間がかかるのではないかという懸念は必要ありません。時間があるものはじっくりと、ない案件については効率的にCIMプロセスを廻すことができると考えています。

 

 CIMを採れば、組織構成員に「この件については現状や自分達の思いを反映している」、という安心感があります。もちろん、トップが現状を把握して回るというのではなく、例えば経営企画などの部署や、皆を集めて意見を聞く、ということでもよく、実は、トップダウンメソッドにもこうした領域は含まれている、と感じる方もいるでしょう。

 

 しかし、敢えてCIM(シム)と定義することで、明示的にトップマネジメントによる意思決定には、各階層を行き来しながら主体的に情報を集め、、仮説検証を繰り返し徐々に意思を固めて、最終的に意思決定し組織に落とす、という意思決定プロセスを採っている、ということを組織内に明らかにすることができます。

 

 あるときにはCIMっぽいプロセスを経るがそうでもないときもある、というのではなく、常にこの組織では、経営意思決定はCIMで行う、という組織における共通認識が必要という考え方です。

 

 ないとは思いますが、トップマネジメントは、誰かの情報を鵜呑みにしたり、思いこみにより最初に得た情報をそのまま信じ何かを意思決定してしまうことは避けなければなりません。

 決めなければならないことに対し、責任をもって経営意思決定を行うためには適切な仮説を立て、検証行動をとりつつ、情報を得たり質問をしたりする信頼に足る、また信用できる情報網をもち活用することが必要です。

 

 自ら常に研鑽し情報を収集するとともに、内外ブレーンを情報収集を行う領域に配置し、テーマ設定→仮説設定→現場訪問→状況を把握→情報聴取・掌握による仮説検証→再仮説設定→次の階層→…というながれで活動します。

 

 トップダウンメソッドでもない、ミドルアップメソッドでも、ボトムアップメソッドでもない、経営意思決定方法、CIM(コンスタントインターチェンジメソッド)を意識したうえで、率先して行動する。これがあるべき経営意思決定を行い、管理するための重要なポイントだと考えています。このテーマは以前にも扱いましたが、最新特に必要性がある事案が散見されるので、再度の記事にしてみました。

 これからも円滑な組織運営のためのCIMについて、研究を重ねていきたいと考えています。

 

すべての仕事の源泉とは

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どのような仕事でも、目的を達成するための方法や手順があります。 

 

人が道具をつくり、機械装置をつくり。システム開発により生産活動を行い、改善を重ねながら量を増やしコストを引き下げ、質をあげる積み重ねてきたことにより、経済が成り立っています。

 

先達が長い時間をかけて、発明し、開発し、改善し、進化させてきたことにより、現代に生活する人類は便利で豊かな生活を送ることができています。私たちにとれば所与であっても、振り返るとすごいことだと考えています。

 

医療においても同じことがいえます。医療は血のにじむ多くの基礎研究や臨床エビデンスにより裏打ちされているし、医療機器や薬剤、医療材料や医療消耗品も日々な献身的な研究開発により生まれています。

 

医療は積み重ねられてきた知見や道具、システムにより成立しているのです。しかし、これらを利用して成果をあげるのは人です。

 

医療機関の職員が現場で一定の情報にもとづき、時間を管理しながら、合理的にカネを使い最適なモノを得て、医療を提供することで治療が行われます。

 

医師、薬剤師、看護師、検査技師、放射線技師、ME、テクニシャン、事務職等々さまざまな職種のプロフェッションが日々業務を行っています。

 

そこで必要なのが、業務のながれを明確にすることです。どのようなエビデンス、そして方法や手順により医療が行われているのかをしっかりと整理して標準化することが必要です。

 

標準化されていない業務があると、大まかには同じであっても、職員によりやり方が微妙に異なることもありえます。

 

ある人は早くうまく業務を行うことができるけれども、ある人はできるけれどもうまくいくのに時間がかかる、ということがあれば、医療の質を担保することは困難です。

 

リスクマネジメントは業務をできるだけ標準化することが着眼にあるし、クリティカルパス(治療の工程表)も業務を医療のエビデンスに沿って、もっともよいやり方で標準化することを目的としてつくられています。

 

また、看護の提供も観察、診断、計画、実施、記録、退院要約のプロセス(看護過程)で合理的に管理されています。個々の業務についてはマニュアルが整備されているので、安心して看護を行えると理解しています。

 

人材育成についても仕組みがあります。

 

職能等級制度を軸として考課方法が標準化され、職務基準がありマニュアルがあるために、また、目標管理があり業績の正しい掌握と考課を行う仕組みがあります。さらに整備された賃金テーブルがあるために、公平公正で平等な処遇を行うことができるのです。

 

業務フローが確立していない病院は、いつも曖昧な、そして納得できないことの積み重ねのなかで人のスキルに強く依存し、目にはみえないかもしれませんが、蛇行するように運営されています。

 

人の関係や、仕事のやり方、患者や家族からのクレームへの対応に多くの時間を割かなければなりません。

 

再度自院の業務が正しく管理されているのか、道具が整備されているのかについて病院トップは反芻する必要があります。

 

人材育成や改善活動も含んだ医療における網羅的な業務フローがあるべき形になることで、人が育ち、仕組みが見直され、より高いレベルでよい医療を提供することができるようになるからです。

 

なお、これらの考え方は全ての業種においても同じことが言えますが、医療はより安全に提供されることを仕事の原点とするため、他の業種よりも些細な手順を踏むことがあります。その意味で学ぶところも多くあります。

 

すべての事業のリーダーは、一度自組織の現状を見直し、課題を整理してみると良いでしょう。