よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

禁断の上長評価項目、ご紹介します

 

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 360度評価を行うべきだとよく言われます。360度評価は、通常の上司からの評価に加え、同僚や部下からも、評価対象者の人事評価を行う多面評価のことをいいます。

 

 確かに現場では、この上司には評価されたくない、という社員、職員が訴えてくることがあります。

 

 そもそも上司の評価者訓練を行うとしても評価の前に注意を促す程度の訓練であることが多く、余り意味がないなという印象はあります。

 また、評価者訓練は評価の仕方を確認するものであり、上司が上司の役割を果たしているのかを確認するものではありません。

 

 なので、評価する側についても一度評価を行い、評価側の日常行動における課題を出しておくことが必要なのかもしれません。

 

 今回は、そんな背景の中、我々が開発した「部下が上長を評価する」上長評価システム(Superior evaluation system=SES)をお伝えします。

 

    普段評価されている上司を部下から評価するときに、どのように評価すればよいのかを明らかにしています。

 

 上司というのは、ある個人にとって自分より上の役職者ですが、上長はもう少し広い範囲の職位の上の人、といいった意味からすれば、ほぼ同じ概念です。

 しかし、自分の直属ではない上司まで評価するとしたときには上長と呼ぶ方が適切であり、ここでは範囲が広い上長を使います。

 この評価は、上長が仕事を行うにあたり、どうあるべきかということを示すものであり、部下にとってみればこんな上司や、上長であって欲しいという意味をもっています。

 

 なかなかこの評価項目を使えないと考える組織が多いことから、禁断(ある行為をかたく禁ずる)というタイトルにしています。

 

 なぜなら、ほとんどの上長がこの評価項目=設問にイェスと答える活動をしていないので低い評価しか得られないから、この評価を使ってはならないと考えているのではと、推測されます。

 

 少なくとも、私が提案した大中小の病院では、これを隠れて行ってみるところはあるものの、なかなかオープンにしてできない病院が大半でした。

 

 これをやろうと決定した幹部も含め、明らかに厳しい要求をされていると考えてしまうからなのだと思います。

 私は、ここで問われる問題にイェスと言えない原因はひとり上長だけの責任ではなく、マネジメンとの問題もあると考えています。仕組みがない、中間管理職教育をしていないことがその理由です。

 

 組織自体がここにある上長像を描き、彼らがリーダーシップを発揮できるように環境整備をしていなければ、上長の属性に依存した管理をしなければなりません。なかなか、ここにある項目を「地」でクリアーできる人は少ないのではないかと思います。

 

 さて、評価は50の設問からなっています。それでは設問がどのようなものか見ていきましょう。

 

 1.方針

・組織の方針や目標を理解しているか

・そのうえで部署の方針や目標を設定しているか

・部署の方針や目標を理解できるように部下に説明しているか

・説明した内容を部下が実行できるよう支援しているか

・方針達成や目標達成のため部下と話し合う機会を多くもっているか

 

2.環境整備

・部下が行動しやすいよう環境づくりをおこなっているか

・部下の失敗を自分の責任と捉えフォローをしてくれるか

・部下の成功を自分のことのように喜べる風土をつくりあげているか

・部下の時間を大切にし、計画的な指示を出しているか

・部下の時間を大切にし、適切な行動が行えるよう支援しているか

 

3.コミュニケーション

・部下の意見に対し肯定的に耳を傾けているか

・部下の意見に対してアドバイスをするか

・部下の意見に対するアドバイスは適切か

・感情を出して叱責せず、冷静に話し合うことができているか

・部下の意見を評価し、ときには採用する度量をもっているか

 

4.指導力

・コミットメントに基づく部下の期待を考慮して、彼らが行動しやすいように具体的に充分指導するか

・部下の行動に対しアドバイスをするか

・部下の行動に対するアドバイスは適切か

・部下の成長課題を発見しその達成に対しアドバイスをしているか

・課題達成のためのアドバイスは適切で、期待される成果を誘導しているか

 

5.教育

・仕事の多くを部下の育成に使っていると感じられるか

・部下に仕事のなかで勉強の機会を計画的に提供できているか

・部下の知識や経験の到達点を設定しているか

・部下の到達点に到達するための教育の機会を提供しているか

・教育の機会の提供は公平にすべての部下に与えられているか

 

6.評価

・仕事の成果を求めるが次につながるプロセスをも評価しているか

・部下の取扱いは分け隔てなく公平公正に行われているか

・部下に対する評価は公平公正であるか

・裏方で成果をあげている者を評価しているか

・部下を正しく評価し立場も理解して指導をしているか

 

7.態度

・部下の話をよく聞くか

・外部との取引に対し誠意をもってこれを行っているか

・自己の上司に対して正しい報告をしているか

・自ら課題を持ち、前向きに行動し成果を挙げ範を示しているか

・一方的な押し付けをせず、納得できるように指示をしているか

 

8.姿勢

・責任感はあるか

・仕事に対する情熱をもっているか

・仕事に対する使命感をもっているか

・仕事に真剣に取り組んでいるか

・生活態度は安定しているか

 

9.規律

・部下に間違いがあれば、それを納得のもとに瞬時に指摘できるか

・仕事のプロセスにおいて厳格なコンプライアンスを求めているか

・外部との取引において不正はないか

・信賞必罰についてよく理解しているか

・仕事のプロセスにおいて違反があったときに丁寧に指摘し修正を促しているか

 

10.人間性

・誰に対しても誠意をもって接しているか

・人として尊敬できるか

・仕事の仕方について尊敬できるか

・横柄ではなく常に適切な態度で接することができるか

・言葉遣いは乱雑ではなく丁寧か

 

 これらは、各項目別に

1まったくできていない

2できていない

3ふつう

4できている

5よくできている

 

で部下から、スコア化され、レーダーチャートと共にどこに課題があるのかをチェックされます。

 

 もちろん上長も自己評価を行うので、そのギャップがどう出るのかにより、上長の指導対象となる事項が明確になるというつくりになっています。

 

 各項目をよくご覧になって下さい。個々の解説はしませんが、上長として求められる項目で満ち溢れていると考えています。

 200にわたるチェック項目から推敲して、50に絞りましたが、仮に私が評価されたら、結構できていないことがあるだろうなと思ったりします。

 ただ、優れた組織においては当たり前のように行われていることであることも事実です。

 

 これらの設問に皆高いスコアがでるように、何をしていけばよいのかを考えなければなりません。

 

 組織のマネジメント力やマネジメントシステムの良し悪しが問われることになります。