よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

自立と不安の交点

 

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 自立は、他からの独立であり離別です。

 

  自らの思いをもち、その達成のために時間を割く、努力を怠らない、常に何かをより良く変えようと主体的に動く。という活動の延長線上に自立は生まれます。

  他と同一であれば、自立はありえません。他との一体となるところから自動的に自立は生まれないからです。

 

 自立したうえで、他と協調しながら一体化をめざすのであれば、依存関係は生まれないし、想いを一にすることができた分、強い繋がりが生まれている可能性もあります。

  単に自立だけした人と自立したうえで他と協調する人、両者は同じように見えますが、まったく異なるものだと思います。

 

 なお、社会において自立することが良いのかという議論もあります。

 

 個が一定のまとまりのなかにあり、そのことが安心を生み、新しい何かを始める力になったり、また相互関係のなかで、現状の何かをうまくやっていくためのエネルギーを生み出すことがよくあるからです。

 

 チームの大切さといわれるときに、この部分が協調されることがあります。

 

  しかし、これとて前述したように個々が自立し、価値を生み出す素地を常に維持する、あるいは創出するエナジーをもっているからこそ成り立つ仮説であり、個をもたないものが沢山存在しても価値創造は行われづらいのではないかと考えます。

 

  組織に群れているだけではとてもチームとしての力を創り出す源泉となることはできません。やはり、個で自立し力を養いつつ、自分の考えをもち、組織とベクトルを併せ、協力しながら組織や個が求めているものを創造するという図式がしっくりきます。

 

 但し、既存の何かを護るためには、着実に行うべきルーチンを行う要請もあり、すべての組織活動が創造的に行われる必要があるものではありません。

 着実に何かを成し遂げるスキルをもつ個というものも大切な資源であり、尊ぶべき存在であることは間違いがありません。

 

 もちろん創造を続けていく者にはそうしたスキルが欠落しているということではなく、逆にそうしたスキルを基礎としたうえでの自立、そして創造性の発現であるとは考えています。

 

 何れにしても、自立し群れず、創造し、自己そして組織の維持発展に尽くす職員がいかに渇望されていることか。

 

 自立しなければならない不安と、自立から得られる安心、自立してしまうことの不安が錯綜するなかで、自分をどのように造り上げていくのかが問われる時代になったのだと考えています。

 

 なお、医療は専門職により行われるため、病院は自立した職員が比較的多く存在している筈ですが、組織やお互いがそれを阻害しているケースが散見されます。

  病院は、一人ひとりの特性を認めた上で、彼らのやりたいことを明確にして、その達成を支援する形で個の自立を促す必要があります。

 個が確立されて始めて全体が成立することの今を伝え、自立のための様々な取り組みを徹底的に行う必要があります。

 でも、どの組織も同じことが言えますね。

 

 厳しいコロナの時代を迎え、個人個人に求められることは何かを、再度考えてみることが必要です。