組織や人は自分だけで存在しているわけではありません。言うまでもなく関わりのある他者との関係性のなかで何かを行い何かを得ています。自分や相手のことをよく理解した上で、他者となんらかの関わりをつくり、積極的に何かを生み出すことが有益です。
ところで、孫氏の兵法で有名な、「彼(かれ)を知り己(おのれ)を知れば百戦(ひゃくせん)殆う(あやう)からず」すなわち相手の状況を知り、また味方の実力を知り、両者の比較の上で戦略的に行動すれば戦うに危険はない、という教えがあります。
ビジネスにおいては関係する他者はすべて敵か味方かではなく、各々の取組みより社会の効用を高めていくことが組織や人の使命であるとすれば、成果を最大化するために皆ができるだけよい関係をつくり行動することが必要です。
人でもほぼ同様のことがいえますが、以下組織(会社)を対象として説明します。
まず「自社は何者なのか」を知ったうえで、自社の領域で活動する他社と自社の関係を定義します。次に「相手がどのような考えで行動しているのか」を掌握し、自社にとっての共通点や受け入れられる点、さらには自社にとり有益なポイントを明らかにします。そして現状の関係から、本来はこんな関係になれる筈という仮説を立て、よりよい関係をつくりあげるための行動をとります。手順は
- 自社分析
- 他社リスト化
- 他社分析
- 有益ポイント抽出
- 取組み対象会社決定
- 活動開始
となります。
他社と自社との関係を整理するには他社を
- 競合(competitor)
- 協調(collaborators)
- 補完(complementer)
- 創造(creator)
の4分類で管理すると分かりやすいですね。我々はここでいうビジネスリレイション(仕事における関係性)分類をbusiness4C=B4C分類とよんでいます。
ここで競合(competitor)とは、のちに説明する7つのファクターが異なるか同質かは別として、争いがあり共に前に進めない関係です。何かが影響を与え一緒に何かをしよう、つくりあげようという関係にありません。
また、協調collaboratorsは、利害や立場などの異なるものどうしが協力し合うことをいいますが、広義には互いに協力し合うことをいいます。すなわち利害や立場が同じ領域にあっても協力し合うことも含んだ概念だと理解しています。
補完complementerは、お互いに足りない部分を補って、完全なものにすることをいいます。仕事の領域は同じでもそうではなくても不十分なところを補足し合い価値を創りあげることを意味しています。
創造creatorは、お互いのリソース(資源)を活用し、まったく新しい分野での協力を行いながら今までにない価値を創り出す関係をいいます。同じ領域で同じ仕事をしていてもしていなくても、新しい何かを創りあげる関係を持つ対象をいいます。
それでは自社と関係のある他社は、競合関係なのか、協調関係なのか、補完関係なのか、創造関係にあるのかを、どのように判断しB4C分類を行えばよ、いのでしょうか。
拠り所になるのは、
- 属性や哲学
- 思想や思考
- 目的や目標
- 商品やサービス
- 品質や価格
- 市場やエリア
- 戦略や行動
です。
これらを「7つの要因(factor)」といいます。他社を4分類にマッピングするためには、
関係する重要な相手先をすべてリスト化し、A社は競合関係、B社は協調、C社は創造、D社は競合、E社は補完、F社は…と現状の関係を定義したうえで、それぞれ7ファクターの分析を行います。
4分類のどこかに位置付けられている相手先をじっくり観察すると、例えば何かの事情により現状は競合になっているけれど、7ファクター分析をしてみると実はB4Cにおける現時点の分類は、別の関係に移行できるのではないかと気付くことがあります。
今は競合であっても協調できるし、補完できる。また創造にも取り組むことができる、という仮説です。
属性や哲学、思想や思考がどうしても相いれないということ以外は、自社と他社との状況により、この領域では協調できる、この商品では補完できる、このサービスでは創造者としての関係をつくれるということが見えてくるのです。
振り返ると、何かのタイミングで競合だった会社が業務提携や資本提携を行うことは日常茶飯事です。自社を知り、他社を知り何らかの取組みを各社が行うところから新しい価値が生まれていることを再認識しなければなりません。
このような動きは大きな会社だけの出来事ではありません。
私たちは回りを見渡し、現状考えている他社との関係が適切なのかを常に検討し、そうではないポイントに大きな誘因があれば、積極的に活動して良い関係をつくり、新しい価値を生み出していくことが求められています。
とりわけ同じ方向に進みながら自社には不十分だが他社には十分であるファクターと、逆に他社には不十分で自社には十分なファクターがあり、双方にメリットがあるケースにおいては補完を行う必要があります。補完関係を探索することが成長への大きな命題の一つだし、両社に受け入れやすいと考えているのです。
なお、前述したように人においてもほぼ同様のことがいえます。
自分の周りにいる社内外の相手をB4Cで(要因を人仕様に多少変更した)7ファクター分析を行い、彼らとはどのような関係にあるのか、どのような価値を生む関係づくりを行えばよいのかについて検討を行うことが重要です。
競争相手(競合)がいたときに、胸襟を開いて本来のあるべき関係をつくるために相手に対し協調者、補完者、創造者としてのポジショニングを行うことができれば、そこから様々なことが見えてきます。
それぞれの相手とのあるべき人間関係をつくれるよう、仕事に対する姿勢や態度を見直し日々経験を積み、力をつけ、彼らから求められる自分づくりに励むことが必要と気付くのです。
B4C分類及び7ファクター分析を行い、会社においても自分においても従来の仕事から一歩前に踏み出す取り組みができるよう活動していくことで、他者とのよりよい関係をつくり新しい価値を生みだせると考えています。
自己を活かし他者と連携して前に進むことの大切さを再認識しなければなりません。