よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

DPC時代をどうクリヤーするのか(1)

 今年も、もう少しで終わりです。

 医療業界といえば混乱に継ぐ混乱という状況でした。それは医療制度改革が原因です。しかし、よくよく冷静に考えてみると、混乱の原因は日常にあることがよく理解できます。
 
 突然、降って沸いたように今の病院の問題が生まれたわけではありません。医療制度改革により、経営の舵取りが難しくなりつつあるなかで、これは大変だ、ということであたりを見回したらびっくりする状態になっていた、ということが真実であると考えます。

 多くの病院におけるDPCの導入が目前になり、
出来高でいったらどうなるのか」
「PETを入れたのにこれがまるめになったらどうしよう」
DPCを本当にうちで採用することが正しいのか」
「そうしなければどうなるのか…」などなど、あらゆる議論が起こりました。
そのなかで、
「在庫はどうするのか」
原価計算はできないよね。部門別の配賦計算でもめるからね」
「疾病別しなければDPCで原価わかんないでしょう、利益も管理できないよ」
「リスマネジメントに問題があるんだよ、うちは」
「看護部長、また○○病棟でいじめがありました…」
「看護部の退職をどうしたら減らせるのか、頭痛いよ」
「また事故かよ。これで今月でかいのが3件もあるし」
「どうしたら固定費を削減できるのか」
「良い医者はいませんかね。また一人辞めちゃうんですよ」
「はっきり言って、やる気ありませんから、私」
「いやびっくり。救急車の断り率がすごく減りました。インセンティブで…」
「なぜ東京から来て看護師を根こそぎ持っていくんだよ」
「いまこそ賃金体系を変えなければ」
「あのさ、うちは急性期なんだよ、バリバリの。パスがこれしかできていないなんて、どうするのよ」
「マニュアルをつくってどうするんだよ。え~時代錯誤でしょ、マニュアルはEBMの基本ですよ。ところで、EBMってなに…」
「看護に患者の顔がみえなくなってきたんです…、患者=疾病という見方になってきた気がして…、少し心配です。っていうかアナムネ用紙から患者属性欄が削除されているのはどういうこと…だから患者のことわからなくなってきているんですね…」
「診断ツールがないんじゃね、もういちどヘンダーソンにもどりましょうか…」
「接遇ができないからクレームがこんなに多いんだよ」
「でも、増患しないと、紹介だよ」
「逆紹介だよ。でも逆紹介したら患者が減るじゃん」
「紹介といっても医師が断るからどうしょうもうない。紹介してくれた先生に顔がたたないですよ~」
「在宅療養支援診療所なんか手あげしたとたんに、点数さげられるぜ…」
「地域連携といっても24時間なんか無理無理」
「ディスチャージちゃんとしてよ、包括患者こんなになちゃうじゃん」
「入院時にちゃんと患者家族看護支援してくださいね、で、アナムネデータも下に下ろしてください」
と、毎日私たちがおじゃまする病院で交わされる話は、さまざまで、きりがありません。

 やるべきことをやる、という姿勢が大切ですし、それは今急に必要となったことではないのです。いままでは右肩上がりの診療報酬体系のなかで隠れていただけにすぎません。

 毅然とした態度で医療に立ち向かう医師をリーダーとして、的確な戦略立案、事業計画の策定、目標管理、現場が働き易い医療ツールの作成及び運用、正しい評価制度、実績をウォッチするための管理会計、部門別原価計算、疾病別原価計算、といったものをどのように導入し、適切に運用するのか、そのうえで医師や看護師、そしてコメディカルや事務部が働き易い環境をつくりあげることが必要です。
 
 そして、誰からも尊敬されるリーダーによるリーダーシップが求められています。

 来年はさらに大きな変革の時代が来ると思います。気持を引き締め、さらに成果をあげられるよう行動できればと決意しています(続く)。

「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」