よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

アジアの病院ビジネスをめぐる熱い戦い

 朝まで生テレビに出演した、北海道ベンチャーキャピタル社長の松田一敬氏からの寄稿です。彼は、シリコンバレーだけではなく、海外に多くの投資を行っていますが、これからも日本やアジアにおいてバイオ関連を中心に活躍していきます。


パークウェイ・ホールディングズというアジア有数の病院グループがある。

パークウェイは、シンガポール3病院、マレーシア11病院、ブルネイ、インド、中国にそれぞれ1病院ずつ、全3400床の病院グループである。大手ファンドTPGは2005年に同社に投資、23.9%を保有する大株主であったが、その保有株式をインド病院大手フォーティス・ヘルスケアに2010年3月、約600億円で売却した。


同社は2008年に第一三共が約2000億円で買収した後発医薬品メーカーであるランバクシーのオーナーであったシン家が設立した病院グループで、ランバクシー売却益を元手に病院ビジネスを急速に拡大している。つまり日本の資金が同社の病院ビジネス急拡大の資金源となったのである。

フォーティスの目論見では、パークウェイとフォーティスが統合されれば、68病院、売り上げ規模で1000億円のアジア有数の病院グループが誕生する。フォーティスはこのグループを支配するつもりであった。しかしここに伏兵がいた。

マレーシアの政府ファンド(SWF)はパークウェイ株式23.3%を保有する2番目の株主だった。このマレーシア政府ファンドが、なんとパークウェイ株式の過半数を保有しようとTOBをかけた。これに対し、フォーティスは買収合戦に応じ、過半数といわず全株を買収するという策に出た。

この段階で当初の見込みに比べ必要資金は跳ね上がった。過半数の取得が全株になり、かつ株価も上昇したのだ。

しかし、マレーシア政府ファンドはさらに高値攻勢に出た。結局、インドのフォーティスは政府ファンドには勝てないと買収をあきらめ、保有するパークウェイ株式を売却した。ちなみに売却益は約80億円だったと推定されている。

シン家はアジアをまたぐ病院グループの夢はたった半年であきらめざるを得なかったが、しっかり利益を上げたのある。

日本とアジア、病院ビジネスを取り巻く環境も大きく異なる。日本以外ではこれがグローバルスタンダードになっていく。良し悪しは別にして、医療の世界もガラパゴスなのかもしれない。