よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

思いと信念が成功の条件

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人は、誰でもうまくやりたいと思って行動しています。やりたいことや、やらなければならないことがあるからです。どのようにすれば、うまくやれるのか、満足できるのか、そして達成感を得ることができるのかを考えることが大切です。

 

まずは、何をしたいのか、しなければならないのかについて、これをやる、これしかないという強い思いをもつことが必要です。ただ「思った」だけでは何も解決しません。思いを信念に変えることが必要です。これは自分にしかできない、私がやるんだという信念に基づく執着が伴う意志がなければ行動につながらないからです。これをやらなければと思い続けても行動につながらなければ物事は達成しません。

 

なので、思いの次に信念が必要であると覚えておかなければなりません。次に何かをするときには技術が必要です。技術を身に付けなければなりません。技術にはどのようなものがあるのかについては様々です。何をしなければならないのかにより当然変わります。それらを列挙して一つ一つ、身についているのかをチェックしなければなりません。さらに重要なのは、人間力です。

 

人は一人で生きているのではありません。多くの人に支えられて、またあるときにはこちらが助けながら何かを行い生きています。ですから、どれだけ相手のことや社会貢献を考えて行動するかにより大きく成果は異なります。何かを成し遂げるときの人間性がとても大切になるのです。

 

なお、技術や人間力を身に付けるときには第三者とコミュニケーションをとらなければなりません。さらに何かを伝えるときにもコミュニケーションが求められます。コミュニケーションがうまくできなければ事は成就しません。

 

成功のためには、思いと信念、技術と人間力、そしてそれらをコントロールするコミュニケーションが必要だという結論です。結果、満足を積み重ねながら成果を挙げて、達成感を得る。思い、信念、技術、人間力、コミュニケーション、達成感を6つの成功の条件としています。

 

しかし、これらを日常的に活用するためには、自分の行動に容易に反映させる方法を考えなければなりません。そのために、サイコロを道具として使います。サイコロは1から6までの数字が振ってある正六面体ですが、あるとき、サイコロの目を一つひとつたイコロは遊具ではなく、我々を成功に導くための道具であったという仮説です。

 

上記の6つの成功条件を表すことができることを発見しました。これをサクセスキューブと名付けました。何かをしたいとき、しなければならないとき、サクセスキューブを頭に思い浮かべます。サイコロの1を底面として一つひとつ振られた目にそって、1、思い→2、信念→3、技術→4、人間力→5、コミュニケーションとサクセスキューブをつくりあげていくと、正六面体が作られる過程において満足が溜まり、キューブが完成したときには、6の達成感がつくられ蓋が閉まりキューブが完成します。

 

人の器もキューブであり、もってうまれた箱(器)に日常のキューブ(サクセスキューブ)を埋めながら生きています。自分の器を大きくすることも、せっかく持って生まれた自分の器にサクセスキューブを埋めきれず、器を使い切らずに最期を迎える人もいます。自分の器をイメージし、日頃からたくさんの思いをもちながら行動し成果をあげ続けていく必要があると考えています。

 

もちろん、うまくいかないことも、凹むときもありますが、サクセスキューブ、そしてキューブの6条件を常に思いうかべて行動することが人生を充実して生きるポイントです。

 

実は、人もキューブのかたちをしていて、思いは足に意識し、信念は背中に現れます。そして左腕は技術、右腕は人間力を表現しています。君は私の右腕だ、というときにはたいていその人の人間力を買っています。また顔や胸、腹など正面はコミュニケーションを図る面であり、達成感は頭で感じるものだという組み立てです。

 

基本的に人間はキューブを表しているという結論です。鏡を見ながら、また意識をしながら自分がキューブであり、いくつかある思いについて、どこまでキューブができているのかを考え、不足するところを見つけて45°目線で行動につなげるように自分を鼓舞していくことが有効です。

 

思いを達成するためにはキューブの概念を覚える、そして自分自身がキューブを化体していると、受け容れることが重要です。

 

さて組織もキューブと捉えることができます。職員が一つ一つ、仕事の成果を挙げて、やらなければならないこと、やりたいことのキューブを完成させ、トップマネジメントの器で設立された組織のキューブに入れていく活動が日々行われています。キューブを完成し、組織のキューブに入れて積み上げていくことで、組織も当初の器を大きくして組織を成長させることができます。

 

もちろん、せっかくの組織の器がありながら、器を使い切れずに終わってしまう組織もあることでしょう。

 

組織のトップマネジメントは、ここでいうキューブづくりをしっかりと理解して戦略立案を行い、計画を立て、リーダーシップを発揮し行動しなければなりません。

 

現場においても成功には何が必要なのかを理解し、率先垂範するリーダーや、行うべきことを行いながら自立して自ら改革を誘導し成果を挙げる職員が多ければ多いほど、組織が大きくなることがよく理解できます。

 

成功のために思いと信念がいかに重要かを考え、それらを源泉とした組織活動を直ちに開始しなければなりません。

 

(拙著「サクセスキューブ」 幻冬舎より一部抜粋)。

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ブルネイの医療

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ブルネイ王国は、マレーシアとインドネシアの共有するボルネオ島の北部に位置します。おおよそ46万人の人口しかいないイスラムの小国です。 ASEAN10ヶ国の一員であり、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピンとともに海のASEAN5ヶ国を構成しています。

 

ASEAN9ヶ国の病院すべてを視察し、(コロナで閉院した)ベトナム・ホーチミンンシティでのクリニック運営を開始する前に、最後の国として2016年12月にブルネイの首都バンダルスリブガワンを訪問して病院視察を行いました。

 

なぜか記事を書きながらブログにアップしていなかったので少し古くなりましたが、ご報告します。

 

まず、王族が設立した国立リパス病院を視察しました。設備も新しく日本の一般的な病院にある設備はすべて備えていました。最近新しくした病棟もあり、また産婦人科と小児センターを日本の飛島建設で建設したばかりで全体として余裕のある病院でした。ただHPも出していない病院であり、病院全体のブローシャーもありません。誰もが知っているということなのでしょうが、患者に情報開示ができていないころは残念です。

 

なお、リパスでは2013年に、国立病院や診療所すべてで同じデータを扱う電子カルテ(BruHIMS=Brunei Darussalam Healthcare information and Management System)を入れました。現地の人はPACSと呼んでました。画像システムも含まれているからでしょうか。

 

システム導入により患者情報の管理がトータルでできるようになったものの、ガイドに聞いたところ、以前と比べて入力が遅く待たされる時間がながくなったということでした。導入当初はあるあるですよね。

 

ブルネイでは酒もたばこも販売していないなか、甘い食事や米食が肥満による糖尿病、高血圧の患者が多くなり、死亡第一位は癌ではなくて心疾患であると聞きました。いたるところに、OBESの看板があり、チームのなかで私が黄色か赤かで話が盛り上がったのでした。

 

次に訪問したのは国王のポロのグランドや遊園地がある、ジュルドンパーク(ジュラシックパークではありません)メディカルセンター(JPMC)110床です。JPMCは実はグレンイーグルス、すなわちパークウェイグループでした。JCIもとっている優秀な病院で、国立病院とは異なり、マーケティングマネージャーへのコンタクトもOKになりました。

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以前KL(クアラルンプール)のグレンイーグルスを視察したときには、ICUや病棟も回り、一日何十万円もする病室やNICUもみせてもらうなどの歓迎ぶりでしたがさすが民間病院です。なお、グレンイーグルスはコタキナバルにも病院を開設しており、パークウェイの親ファンドがマレーシアのファンドだけのことはあるなという印象です。

 

シンガポール最大の病院グループ「パークウェイ・ホールディングス」は、マレーシア第2位の病院グループ「パンタイ・ホールディングス」とともに、マレーシアの国策投資会社「カザナ・ナショナル社(カザナ社)」が保有するアジア最大の病院持ち株会社「インテグレイテッド・ヘルスケア・ホールディングス社」の傘下にあります。

 

グレンイーグルスは、最近ヤンゴンにも病院開設するとのことで、陸のアセアンはバンコクグループのサムティベイトが、我々が訪問したプノンペンのロイヤルホスピタルやヤンゴンで訪問した2病院と提携をしていたので、パークウェイは海のアセアンを攻めていると思っていましたが、陸のアセアン、それも外資の病院進出を許可していなかったミャンマーに展開するとは驚きです。

 

なお、隣接するJPMCのハートセンターは40床で医師7名(非常勤含む)ということでした。増加する心疾患への対応を行う貴重な病院だということが分かりました。

 

ブルネイには4県(東京でいえば区のようなもの)がり、4つの病院があります。我々が行かなかったのは、クワベライト病院(本当はPengiran Muda Mahkota Pengiran Muda Haji Al-Muhtadee Billah Hospital→王族の名前)183床と、テンブロンにある病院50床です。前者は首都から107kmで諦めましたし、後者は内科、小児科、産婦人科、歯科があるものの、たぶんプライマリーに近いのではないかという思いがあり、行くのは止めました。

 

トゥトング病院138床は、その一つであり、比較的小ぶりな病院です。やはりHPはなく、内科、外科、小児科、産婦人科、耳鼻科、精神科という標榜をしています。とても、オープンな感じがあり、徐々にベッド数を拡大する方向にあるとのことで活気があります。この病院は一般的な処置はできますが、救急体制はあるものの、二次急という機能はなく、1.5次というイメージでしょうか。大きなオペ以外では日本と同じ医療レベルであるとの話を聞いています。

 

なお、医師がブルネイで600人弱であるなか、この病院にどの程度医師が関与しているのかが不明です。もし、外国人医師が含まれていなければ50%の外国人比率なので、1200人の医師ということになります。1000床+国立診療所6ヶ所やヘルスセンターがあり、また民間の診療所が幾つもあるので、どのように分かれているのかは不明でした。

 

豊かな石油資源に支えられたブルネイでは1ブルネイ$を負担すれば家族の渡航費も含み海外で受けた医療費はすべて国が負担する医療制度になっています。海外に治療に出ていた患者を海外に出さないようにするために設立したブルネイ癌センター(TBCC)(ベッド数未定)、を視察しました。TBCCは、2016年6月に80億円(B$100M)をかけて建設した施設でオフィシャルにオープンしていないため、院内をみせてもらえず残念でした。

 

セキュリティーの担当者はNARUTOのファンで、快く政府とNGOの病院と教えてくれましたが、まだ正式な開業日は分からない(来年の1月1日に国王が来てオープンするかも)とのことでした。ブルネイ大学にはPAPRSB健康科学研究所が医学部の役割を果たすものの、医師は英国でトレーニングを受けて帰国するということでした。

 

医療のレベルはまだまだということで、医師は海外からの供給に依存しており、前述のように外人の医師が5割近く従事しているとのことでした。外国人は、医師国家試験の合格が条件ではなく、保険省の面接審査によりブルネイで働くことができると聞いています。日本人医師は0人と聞いていますが、誰かがチャレンジしてもいいと思います。

 

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何れにしてもすごい施設で、海の真横に建設されており、良い治療環境だと思います。なお、PJMCと廊下がつながっているのは、たぶんパークウェイがコンサルティングしているのではないかと思います。私が上海国際医療センターのジャパンデスクの支援を行っていたときにも、彼らが表に出ずにコンサルティングをしており2億円の年間コンサルフィーをとっていました。ということでまた来年以降、この病院がオープンしてから来てみようと思います

 

ブルネイにはマレーシアKLからのブルネイ航空のフライト、2泊3日の強行軍での訪問でしたが、やはり現地に来ると大まかですがリアルな医療の構造が分かります。

医師が組織マネジメントを学習すれば鬼に金棒

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医師は組織マネジメントを学ぶべきです。
  1. 医師は医療のリーダー
  2. 何かを習得する能力に長けている

からです。

 

マネジメントを修得した医師が医療機関の運営を行えば鬼に金棒です。そもそも医療は労働集約的知的産業であり、明確な戦略立案、職員に役割を与え、定量目標を設定。毎月達成状況確認、不足事項は支援しながら職員ともに成果を挙げます。組織がロジカルに動く必要があります。

 

我々の関与事例には、医師によるマネジメントさえしっかりできていたら、こんなにはならなかったどろうという病院や医師が動けばここまでやれるんだという病院があります。
 
最近の事例は以下のものです。
  1. トップの医師が懸命に医療を行い、結果として病院がうまく運営できていたが組織が時代についていけずツケが廻ってきた
  2. 事務部長がうまく機能していない
  3. 医師のなかにトップに反駁し、いじめをする医師がいるため医師が辞める
  4. 組織のガバナンスがきかないので、職員がトップのいうことをきかない
  5. 診療報酬体系が変わったことについて誰も検討できていない
  6. 戦略を決めるための提案をしてくれるスタッフがいない
  7. 医師が新しいことをするのを嫌う
これらの原因は明らかです。
  1. 医師が組織マネジメントに興味がない
  2. 事務方の人材育成をしてきていない
  3. 病院統治(ガバナンス)をきかせていない
  4. トップがなんでも自分でやりすぎてしまうし、任せてこなかったので指示してもできない
  5. 経営企画や医療事務のスペシャリストをとっていないで外部に丸投げしてき
  6. 目先の課題をクリヤーするだけで日本の未来やこれから、社会保障費がどのように推移するのかに頓着してこなかった
  7. 職員のモチベーションを高めるリーダーシップが発揮できていなかった。コミュニケーションも不足している
 
といったことが理解できます。
 
実際にうまくいっている病院は、上記のすべて逆をしてきています。この10年間でそうした体制をつくってきた病院は環境を先読みし、変化に柔軟に対応できているため業績を伸ばし続けています。
 
医師の確保にちても紹介会社を使わず、一本釣りで、数年かけて準備をするといった活動を行っているし、営業体制を整備し、場合によれば営業担当者もおき、自院の特徴、売りをより広く喧伝しながら、また他の医療における異なる分野への進出を図り、知名度をさらにあげて集患している病院もあります。
 
結局は内外スタッフの力を借りて、病院マネジメントを徹底的に浸透させようと努力したトップマネジメントと、その発想すらないトップマネジメントの差がここにきて露呈しているということです。
 
病院マネジメントという領域が確立されていないとしても、社会科学として発展してきた経営学をしっかりと理解し、そのなかで病院の特性を活かしたマネジメントを行っている病院とそうではない病院では大きく差がついてしまうということの証左です。
 
診療報酬だけに対応していればよい時代ではない、ということについて、多くの病院が気付き始めています。組織をどのように活性化していくのか、という観点から、自院の組織マネジメントの課題を抽出し、次のステップに進んでいくことが必要です。
 
この傾向はいずれ病院全体に周知されるでしょう。利益を出さない病院は淘汰されます。利益は患者評価の証であり、適正利益にアプローチできない、また計画的にそれを得ていけない病院は、早晩医療のなかから消えていくことになるのです。
 
「利益は患者評価の証」という言葉を胸に、どのように医療の質をあげれば、もっと多くの患者に来院してもらえるのかについて職員全員で考える。その文化がある病院が成果を挙げられます。利益を計画的に確保できる組織マネジメントを、医師であるトップマネジメントや組織を支える医師が習得し、組織や仕組みをつくり、その運営をしっかりと行うことが大切です。
 
 
 
 

診診連携から生まれる価値

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診療所は、外来医療を中心として通院で治療できる疾患か、入院治療や専門治療を必要とする病気かを判断する役割をもっています。また診療所は、地域住民の身近にあって、初期の治療(プライマリーケア)だけではなく、地域健康管理や予防医療においても機能をもつことも期待されています。診療所は、地域住民が健康で豊かな生活を送るために必要不可欠な医療機関であり、地域の健康維持や管理を一手に引き受けているといっても過言ではありません。

 

もちろん地域住民がセルフコントロールを行い、自らの健康は自らが守るという姿勢をもつことが前提ではありますが、心身の不調があったときに近くに診療所があれば、地域住民は安心して日常生活を送ることができます。自分の健康状態を理解している「かかりつけ医」は、地域住民にとって頼りがいのある存在であることは間違いがありません。

 

多くの診療所は、来院した患者のみならず地域住民全体の健康管理を行う役割があることを十分に認識して地域活動を行っています。ただ、たとえ複数の標榜を行っていたとしても、それぞれの診療所には専門領域があり、一つの診療所ですべての治療への対応ができるわけではありません。

 

そこで診療所と診療所との連携である「診診連携」が必要となります。診察した患者の病状に、自院だけでは対応できない診断したときに、他の医師の診察や他の機関での治療を促すことは医師の日常的な活動の一つです。病院でも他科へ受診を促すことを常態としていますが、診療所においても他の診療所に対し同じ活動が行われます。

 

患者にとり、近くの他科診療所に紹介してもらえることは、かかりつけ医が地域の医師と連携して自分を診てくれているという思いや、信頼をもつことにつながります。このようなかたちで複数診療所の連携が進捗することで、地域住民の健康が高い確率で守られ、健康に懸念なく社会生活を営むことができます。これは地域住民による地域活動を活発化することでもあります。

 

症状によってはダイレクトに病院へ紹介する病診連携が必要ですが、まずは診診連携を相互に行うことが有益です。近隣もしくはモール内にある専門診療を行う診療所への紹介により、地域住民の健康維持及び管理そして地域経済活性化を通じて、地域そして自院において大きな価値を生むことを理解しなければなりません。

 

なお、ゆくゆくはいきなり病院への紹介をせずに内科、耳鼻科、泌尿器、皮膚科、眼科、整形など複数診療所が協力し、あたかも一つの医療機関のように一人の患者をケアできるようになると、より一層地域住民の健康管理に深みが生まれます。電子カルテのクラウド化や情報共有の仕組みがシステム化されると加速度的に進むモデルであると思います。

 

我々は離れている複数診療所が一体となることをユニット化といっていますが、近い将来そこここに多くのユニットが生まれ地域医療を守る時代が必ず来ると考えています。

 

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勢いをつける

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勢い(盛んな意気、元気)は、どのようなときにも必要です。勢いがあればどのようなことにも積極的に取り組んでいけるし乗り越えることができるからです。

 

勢いをつけるためには心からの情熱が必要です。もちろんん、切羽詰まった時に懸命に頑張るといった状況でも大きな力を出せますが、それは埒外とします。

 
勢い、という言葉には「前向きな」という意味を含んでおり、こうした「切羽詰まって」といるときに前向きな意識をもてるケースは少なく、なんとかしなければダメだといった追い詰められた気持ちからの頑張りになることが多いからです。
 
であるとすると勢いをつくるためには、
  1. いま自分は何をすべきなのか、
  2. それをしなければならない理由を考え、
  3. 強い思いや意欲をつくり、
  4. それを信念に変えて、
  5. 絶対に達成するために期日を決めて行動する

ことが必要です。しっかりとした基礎のある本来の勢いが意味をもちます。思い付きでの勢いはその状況を長持ちさせることはできないし、また結果を正しく得られません。

 
本来の勢いをつけるためにどのような手順を踏めばよいのかを熟考し、勢いを意図的につくりあげていくことが求められているのです。
 
組織において「ある期日までに成果を挙げなければならない」といった目標があるときには、勢いを付けることを考えなければなりません。勢いを付けるためには上記で説明した「準備」を行ったうえで情熱をもち、大きなながれをつくるのです。
 
なお、個人個人がいくら前向きになったとしても、それを阻害する組織であれば意味がありません。組織が個人の意欲を削ぎ、勢いを抑える方向に進むからです。組織構成員が勢いをもつための活動を行うとともに、阻害要因をどのように排除していくのかについても、しかりと考えておく必要があります。
 
勢いの阻害要因としては、
  1. 仕事の仕組みの瑕疵、
  2. スキルのない個人
  3. ネガティブな個人、

があげられます。

 

とりわけリーダーシップをとるべき者がネガティブであったり人間性に課題があるといったケースはダイレクトにマイナスの影響を与えます。

 
トップマネジメントは常によい組織文化を醸成するとともに、個人のやる気を削ぐ原因を一つ一つ取り除かなければなりません。組織を勢い付けるための取組みを連続的に行いうまく継続できるよう現場をウォッチする。トップマネジメントは、そんな肌理の細かいマネジメントを行えるようにしておく必要があります。
 
  1. マネジメント力を磨くとともに、
  2. ビジョンを掲げ、
  3. (これが肝ですが)明確な内外戦略を立案し、
  4. 行動計画や目標管理を実施する、
  5. スキルの高いスタッフを配置し、
  6. 適切な判断ができるよう情報収集を怠らず、
  7. 指示した事項が思い通りに実行されているかチェックする

など、行うべきことを的確に行わなければなりません。掲げた項目は奥が深く実践は大変ですが、まずはトップマネジメントが勢いをつけるために行動しなければならないという帰結です。

 

組織の誰もがやる気になり自己実現できる仕組みづくりやマネジメントを行うこと。トップマネジメントの強いリーダーシップが勢いの源泉になることを忘れてはなりません。

 

 

 
 
 
 

リーダーで職員は変わる

 

 

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人がやる気になるのは、なぜなのか。とても難しい問題です。全ての人がやる気になることができる方法があれば、誰もが感動し採用する事でしょう。

ご承知のように動機付け理論や、動機の喚起に対する考え方は沢山あります。ここでは、それらを列挙して検証することはしません。結論からいえば、あまり複雑に考えないことがポイントです。

職員がやる気になる要因を私の経験に基づく考えをカテゴリー別に説明します。


【リーダー・シーダ―シップ】

  1. 魅力的な人間性
  2. 懸命に医療に取り組む姿勢
  3. 高いマネジメント能力
  4. 仕事に対する厳しさ、真剣さ
  5. 戦略の正しさ
  6. 適切な事業計画
  7. 実行力
  8. 潔(いさぎよ)さ
  9. 思いやり
  10. 礼儀正しい言葉遣い
  11. 豊かな表情
  12. 弾む明るさ


【組織風土・文化】

  1. よい医療をしようという意識、執着
  2. 業務改革に対する意欲
  3. ダメだと思うスタッフを支える厳しさと優しさ

 

【職員】

  1. やりたいことができている
  2. やらなければならないことが腑に落ちている
  3. 上記を実行するための阻害要因が排除出来ている


これだけです。しかし、こんなにあります。一つ一つの項目の奥行は深く実現させるためには議論すべきことはいくつもあります。とりわけ【職員】3.「(前向きな行動に対する)阻害要因が排除出来ている」については、公私にわたる多様な阻害要因があるため組織としてはコントロールが困難な領域です。

 

しかし、少なくともここで示すリーダーや組織があれば、職員は自分の思いを遂げ、この組織は楽しい、やりがいがあると、阻害要因が排除できる可能性を強く感じてやる気になります。

 

ルールや詳細な仕組みは、その中で自助的にでき上がってくるし、また人も育ちます。新しい仕事や環境変化にも柔軟に取り組んでいくことができます。さらに、皆が常に合目的的に動くことができるようになるのです。

なお、ここで提示したリーダーがいたり組織がどの組織にもあるかないかといえば、それは0か100ではありません。どのような組織も良いところを持っているものだし、幹部のなかにも上記を地でいく方々も少なからずいます。各職場のリーダーも同様です。

要はここでいう状況をリーダーが志向し続けているか、あるべき組織をつくろうとしているかどうかが職員のやる気に大きく影響する、ということでしょう。

 

そのことを理解し、理想の状況に少しでも近づくよう努力することが大切なのだと思います。

昨日も、ある会合で分野の異なる魅力的な四人の方々と語り合いましたが、さすがにそれぞれ組織や事業のトップとして、成果を挙げているだけのことはあると感心しました。上記を体現しているリーダーたちであり、多くの示唆を受ける時間を過ごせました。

少なくない数の組織が、持てる力を最大限発揮し組織や職員の生活そして日本経済を支えています。職員が前を向き頑張っている証左です。そうではない組織がなくなるよう、優れたリーダーシップの発揮により職員全員がいつも「やりきっている」という満足を得られる組織が少しでも増えるよう、願っています。

クリティカルパスの使命を再度確認しよう

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医療における業務改革のツール、クリティカルパスについて説明します。一般企業でも仕事の標準化により工程管理を行なう事例は多数見受けられます。なのでパスの考え方を理解することには意味があります。

1980年代に米国の看護師カレンザンダーによって、工場の工程管理からヒントを得てコスト削減を意識しながら開発されたといわれるクリティカルパス(重要な経路)は治療の工程表です。もっとリアルに言えば医師の指示書、少なくとも入院診療計画書、業態によれば地域連携情報提供書として医療の標準化やチーム医療のためのツールの役割を果たします。

しかし、パスは究極的には業務改革の機能をもつツールです。

先ずカルテやレセプト(医療機関が健康保険組合に提出する月ごとの診療報酬明細書)から現状の診療内容がどのようになっているのかを、日々及びカテゴリー別に整理し可視化するという手続きを経て作成します。これを一次パスといいます。この段階で他のパスを見たり、ガイドラインや論文をたどり、自院の治療が適切か根拠に基づく医療(EBM= evidence-based medicine)かどうかを再度検証する医師もいます。

 

そして次に、診療報酬の仕組み上在院日数を決められた期間に合わせるために(包括医療費支払い制度では入院期間を三期間に区分し長く入院すれば報酬が下がる方式を採用しています)は何を変えれば良いのかを検討しパスを改訂します。これが二次パスになります。

パスは、日常の検査や入院に使われますが、定めた日数で退院できない場合には、標準からの逸脱として、バリアンスが測定されます。正と負のバリアンスが4つの原因により分析され、業務の改善が行われます。因みに正は、期日より早く退院したこと、負は期日に退院出来なかったことを示しています。

バリアンスの原因は、システム要因、医療従事者要因、患者要因、社会的要因です。これらは更に分析され、詳細な改善に役立つよう活用されます。

 

なお、アウトカム(指標:診療後の患者の状態など医療の結果・成果を表す指標)のバリアンスの管理も必要になります。そもそも、毎日のアウトカムが書かれていないパスが散見されますが、ナンセンスです。

アウトカム自体が定量、定性的に管理されることでなぜ成果が出なかったのかといった振り返りがあり次の改善に繋がります。なお、熱発などによるパス外の対応を行った場合の変動もその経緯や経過を知るためにアウトカムのバリアンスに含めるほうがよいと考えます。


そして、DPC制度においては在院日数短縮が継続し、2025年に基本的に9日を切ることが想定されているなか業務改善を通じた積極的な在院日数短縮のための三次パスが作成されます。


高齢者が激増していくなかで、医療の質に起因する早期退院阻害要因への対応だけではなく、増患体制、稼働率管理、医師と看護師の連携、退院支援、地域連携など総体として医療の質を担保するマネジメント全体の工程管理ができるよう、業務改善を行いつづけていく必要があります。


パスにまつわる事項は奥深く、ここですべてを語り尽くせるものではありませんが、高齢化が進み医療従事者の負担が増加するなか合理的で質の高い医療を行わなければならない、ということを受容すれば、自ずといま何をしなければならないかが解ると考えています。