よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

医師が組織マネジメントを学習すれば鬼に金棒

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医師は組織マネジメントを学ぶべきです。
  1. 医師は医療のリーダー
  2. 何かを習得する能力に長けている

からです。

 

マネジメントを修得した医師が医療機関の運営を行えば鬼に金棒です。そもそも医療は労働集約的知的産業であり、明確な戦略立案、職員に役割を与え、定量目標を設定。毎月達成状況確認、不足事項は支援しながら職員ともに成果を挙げます。組織がロジカルに動く必要があります。

 

我々の関与事例には、医師によるマネジメントさえしっかりできていたら、こんなにはならなかったどろうという病院や医師が動けばここまでやれるんだという病院があります。
 
最近の事例は以下のものです。
  1. トップの医師が懸命に医療を行い、結果として病院がうまく運営できていたが組織が時代についていけずツケが廻ってきた
  2. 事務部長がうまく機能していない
  3. 医師のなかにトップに反駁し、いじめをする医師がいるため医師が辞める
  4. 組織のガバナンスがきかないので、職員がトップのいうことをきかない
  5. 診療報酬体系が変わったことについて誰も検討できていない
  6. 戦略を決めるための提案をしてくれるスタッフがいない
  7. 医師が新しいことをするのを嫌う
これらの原因は明らかです。
  1. 医師が組織マネジメントに興味がない
  2. 事務方の人材育成をしてきていない
  3. 病院統治(ガバナンス)をきかせていない
  4. トップがなんでも自分でやりすぎてしまうし、任せてこなかったので指示してもできない
  5. 経営企画や医療事務のスペシャリストをとっていないで外部に丸投げしてき
  6. 目先の課題をクリヤーするだけで日本の未来やこれから、社会保障費がどのように推移するのかに頓着してこなかった
  7. 職員のモチベーションを高めるリーダーシップが発揮できていなかった。コミュニケーションも不足している
 
といったことが理解できます。
 
実際にうまくいっている病院は、上記のすべて逆をしてきています。この10年間でそうした体制をつくってきた病院は環境を先読みし、変化に柔軟に対応できているため業績を伸ばし続けています。
 
医師の確保にちても紹介会社を使わず、一本釣りで、数年かけて準備をするといった活動を行っているし、営業体制を整備し、場合によれば営業担当者もおき、自院の特徴、売りをより広く喧伝しながら、また他の医療における異なる分野への進出を図り、知名度をさらにあげて集患している病院もあります。
 
結局は内外スタッフの力を借りて、病院マネジメントを徹底的に浸透させようと努力したトップマネジメントと、その発想すらないトップマネジメントの差がここにきて露呈しているということです。
 
病院マネジメントという領域が確立されていないとしても、社会科学として発展してきた経営学をしっかりと理解し、そのなかで病院の特性を活かしたマネジメントを行っている病院とそうではない病院では大きく差がついてしまうということの証左です。
 
診療報酬だけに対応していればよい時代ではない、ということについて、多くの病院が気付き始めています。組織をどのように活性化していくのか、という観点から、自院の組織マネジメントの課題を抽出し、次のステップに進んでいくことが必要です。
 
この傾向はいずれ病院全体に周知されるでしょう。利益を出さない病院は淘汰されます。利益は患者評価の証であり、適正利益にアプローチできない、また計画的にそれを得ていけない病院は、早晩医療のなかから消えていくことになるのです。
 
「利益は患者評価の証」という言葉を胸に、どのように医療の質をあげれば、もっと多くの患者に来院してもらえるのかについて職員全員で考える。その文化がある病院が成果を挙げられます。利益を計画的に確保できる組織マネジメントを、医師であるトップマネジメントや組織を支える医師が習得し、組織や仕組みをつくり、その運営をしっかりと行うことが大切です。