よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

介護第二世代への移行がなかなか進まない理由

 

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 官民一体で血のにじむような努力を繰り返しながら、日本は海外の範となる介護サービスを確立しました(従来の介護サービスを提供する介護を「介護第一世代」とよびます)。 

誰も経験をしていない超高齢化社会を迎え、日本には従来の介護を強みとして新たな産業をつくる使命があります。施設や在宅での介護を高齢者マーケットの入り口として、新市場を開拓し、高齢者にやさしい、安心できる、信頼される社会をつくらなければならないのです。

私は、一般企業が、介護を通じて高齢者マーケットに深く浸透し、新しい価値を生み出す介護を「第二世代の介護」と名付けました。介護第二世代では、一般企業が介護現場に入り、社員が、彼らの家族のための介護研修の場として活用したり、高齢者の動態調査を行い、生活に不可欠なシステムや商製品サービスを開発します。

既に徘徊防止マットやセンサー、所在確認用のカメラ、多様な介護ロボット、排せつ支援機器などが市場に出されていますが、例えば耳に触れるだけで家族と話せるTV電話や、地域の高齢者のコミュニティづくりを支援するシステム、嗜好に合わせて必要な画像が映し出される装置、趣味を楽しめるバーチャルリアリティ、行動が容易になる装着用のロボット、さらには高齢者の生活支援システムなどが開発対象となります。

介護スタッフ行動管理用GPSや音声による利用者属性分析装置やAIを活用したワンツーワン介護への取り組みも行われます。

介護施設を、現場で創造された価値を外部に広めていくためのプラットホームとすることで、高齢者の生活を豊かにする試みです。これらは国内で消費されるだけではなく、高齢化を迎える海外にも輸出されます。

介護施設は、商製品サービス販売から得られる収益の一部を得て運営され、保険に依存しない介護を行えるようになるのです。介護第二世代の到来です。最終的には介護事業は企業の一部門となり、企業の商製品サービス開発収入で運営コストが賄われるようになることを想定しています。

ただ、現実はそれほど甘くありません。なぜ、そうならないのかを真剣に考えなければなりません。

国内では、社会が付加価値コストを負担できないこと、企業も介護マーケットの意味を捉え切れていないこと、高齢者の生活支援について高齢者や介護側のニーズが拾い切れていないことが挙げられます。

高齢者がより積極的に行動する、また活躍できる環境をつくりだす社会が成立しなければ介護第二世代への移行は進まないかもしれません。

ただ、そうこうしている間に、日本経済はさらに疲弊し、社会保障費抑制の要請を受けた介護事業が、コストを重視した工場のような、ただ量をこなせばよいというような無機質なものにならないか、海外での介護が盛んになり日本の介護の座る場所がなくなるのではないか、と心配しています。

介護をつくりあげてきた多くの献身的な人々の思いを結実させるためにも、介護をどう残し、進化させていくのかをしっかり考える時期がきたと私は考えています。