よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

可視化は何のために行うのか

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 よく可視化、見える化が必要だといわれます。見えなければ変えられないからです。

 

 しかし、世の中には可視化をしただけで満足をしてしまうケースが山のようにあります。可視化したものが必要十分であるかも分らずに、また、どう使うのかも決めず、ただ可視化をして終わりでは何の意味もありません。

 

(1)自分は、組織は何をしたいのかを明確にする (写真はバンダルスリムガワンのRIPAS hospitalに掲示されていたビジョンとミッション)

(2)合目的的に目に見えないものを可視化する

(3)可視化したら分析する

(4)分析したものから傾向を見出す

(5)目的を達成するために、当該傾向からどのような解を見いだせばよいのか検討する

(6)解を実行するための計画を立案する

(7)PDCAサイクルのなかで計画を実行し。修正をしながら目的を達成する

 といった流れをつくる必要があります。

 可視化はあくまでも、目的達成、問題解決のために行うことを肝に銘じる必要があります。

 

 いろいろな指標を網羅的にとり、表にして推移をみる、ということで傾向が分かることはありますが、実は大まかな傾向をみても、より詳細なデータがなければ見えないことがあります。医業収益の詳細は診療科別収益、その推移をみると患者数と単価の推移に、患者数のうちオペ患者の推移と術式の推移、医師別の患者数、患者属性毎の推移とオペ件数の推移といった具合にどんどん実態が明らかになります。

 

 しかし、ここで、ではオペ件数をどう伸ばすのかといったことが目的であるのに、ここまでガラス張りにして終わりという病院がよくあります。

 

 結局患者をどう集めるのか、入院経路分析や個々の経路別の増患対策、地連のみならず病院のプロモーションや連携、医師の活動の仮説を立てて計画を立案し、行動するところまで進めなければ膨大なデータをとっても何も生まれないことが分かります。

 

 この病院は何をしたいのか、どこに向かっていくのか、どのように地域貢献するのか、どうすれば職員の求心力を集められるのか等を明らかにするなど、上記のプロセスを経て可視化に入らなければならないことを理解しなければなりません。

 

 なお、決めたことを実行するためにはガバナンスが必要です。管理者の意識、組織の仕組みをつくり、決めたことは必ず達成するという文化を醸成していくことが求められています。個人においても同じ。決めたことは必ず実行する。なかなか難しいものの、可視化の前提として心にとどめておく必要がありそうです。