先日、病院で看護部長と職務基準についてミーティングしました。
職務基準とは、部署毎の職務分担一覧表で、
- ひとくくりにした仕事とその内容を明らかにして、
- 困難度や等級に応じて区分し、
- 個人がどこまでそれらができればよいのかの組織の期待
を明らかにした規程です。平易にいえば、ある部署のある等級に属する人は、この仕事をこのレベルで実行して欲しい、という仕事の水準を表すものです。
よほどのことがない限り、個人差はあるものの実務で経験を積めば、仕事はできるようになります。それぞれの職種で上司が部下に教え、個人がどのように仕事をするか習得、それを現場が理解し次々に伝承していくことで仕事が進んでいくのです。
仕事は日進月歩であり日々さまざまのやり方が生まれ、さまざまな仕事がそこここで行われるようになります。あるときに誰かがつくった仕事は誰かに引き継がれ、進められます。
振り返ると、なぜこの仕事をしているのか、仕事の意味や目的が忘れられ、形式だけが継続されることもあります。職場には無秩序に仕事が溢れ、個人のスキルもまちまちのなかで、
- 本来行われる仕事が行われなかったり
- 必要ではない仕事が続いていたりするのです。
- 結果として忙しいのにダブりがあったり、漏れがあり
- 人も育たない
- 仕事の成果があがらない
- 無駄がある
- ミスが起る
といった不幸が生まれる、といったことが起こります。
職場には
- どのような仕事があり、
- 誰により
- どのレベルで
その仕事は行われなけれないのかを明らかにしておく必要があるのです。
結局は職場に職務基準がなければ、自分はどんな仕事をどの程度の能力で仕事をすればよいのかが曖昧になります。自分でも今の仕事を今のやり方で続けてよいのか、また目標とする質が分からないし、適切な仕事ができているのか客観的にも評価ができません。
自部署のひとくくりの仕事(課業)をすべて洗い出し、それらが必要なのか不必要なのか、どのレベルで成果を挙げればよいのかについて議論し、この仕事はどの等級、もしくは職位の者がどのレベルでやればよいのかを決めます。職務基準の出来上がりです。
部署間での業務の切り分けや連携もここで検討し、漏れなくダブりなく職務内容を明らかにした基準をつくります。廃止する仕事や追加する仕事も移管し合う仕事もありますが、自部署で行う仕事やその進め方の枠組みが明確になります。
ただ方法についてや手順、ノウハウまでは職務基準では取り扱わないために業務マニュアルを並行して作成すると、仕事の内容がよりリアリティのあるものになることはいうまでもありません。
決められたことが決められたように行われるよう仕組みを作ったうえで、職務基準やマニュアルを使い個人の評価や教育を行います。
病院がまずは仕事の一定の質を担保し、そのうえで仕事の質を向上させていくためには、病院の期待値としての仕事の標準、具体的な仕事の方法を提示することが適当です。
病院は職務基準やマニュアル、教育制度を通じて個人の技術技能の向上を図り、仕事の仕組みの見直しを行うなかで病院の質を高めブランド構築を行います。厚生労働省が提示した医療制度構造改革の方向は病院病床削減。機能分化と平均在院日数短縮がテーマです。これらは
- 戦略明確化による
- 医療の質向上
- 結果としてのブランディング
- 増患活動
なしには成し遂げられません。
職務基準、マニュアル、教育体系の整備、そして評価制度の整備が必要です。
職務基準はマニュアルとともに、守るべき仕事の質が定められた段階まで到達できるよう職員を誘導する病院の憲法として扱われる基準です。職務基準が仕事の「道しるべ」である所以です。
- 患者や地域を守るために自らが成長する
- 成長しつつある職員によりチームが機能する
- 病院が成果をあげる
- 地域貢献する
- 地域に残る病院となる
というながれを早期につくりあげるために職務基準を整備運用することが必要です。
なお、既にお分かりのように一般企業に於いても職務基準の作成は必須です。欧米では職務の目的や具体的内容、必要なスキル、権限などを明示した職務記述書(Job description)により採用社員の職務を決めています。入社後のミスマッチ回避や適切な人事評価のためには職務基準を基礎として作成した職務記述書を活用しているのです。
日本ではまだまだ組織や社員の仕事のスキルや期待に対する意識が薄く制度整備が一部を除き進んでいません。各組織のリーダーは職務管理のあり方を一度見直しをしなければなりませんね。