よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

患者さんの治療原価について(1)

つ、ついに、原価計算か…。DPC(Diagnosis Procedure Combination;診断群分類)に基づく,医療機関別包括評価による医療費の定額支払い制度(以下,包括支払い制度)が導入されていますが、そうすると単純にいえば、同じ疾病では、どのような治療をしても患者さんの点数が同じになってしまいます。ということは、一定の適正利益を確保するために、患者さんの治療に関わる原価を把握していなければなりません。
この原価を患者別疾病別原価といいます。

原価をコントロールするためにアメリカではカレンザンダーさんが1980年代に作成したガントチャート(工程表)を原型とするシート(クリティカルパス)で種々の定義はあるようですが「入院後の指導・予定検査・食事指導・安静度・理学療法、退院指導などの予定を、時間軸を横軸、ケア内容を縦軸にして、スケジュール表のようにまとめたもの」であるといわれています(参考文献:平成11年2月13日号 日本医事新報・質疑応答コーナー)。

これは、医療の標準化、チーム医療、平均在院日数短縮のために利用される医療ツールですが、もともとは原価のコントロールという側面があったことを見逃すことはできません。

きたるべきDPC(というかすでに20万床以上がこの方法で診療報酬を請求しています)時代に合わせ
患者別疾病別原価計算を実施することにより、医療の質を高めながら一方で治療原価を低減させるという二律背反のテーマを探求しなければならない時期が到来したのです。

患者別疾病別原価計算のためには、診療行為の原価を計算し、それを集積して患者さんごとの原価を算出するといったことが必要ですし、また間接費を算出するためには部門別損益計算を実施しなければならないといったロジックがあります。

これらについてこれからシリーズ、ドキュメント方式でみなさんにお伝えします。わくわくどきどきの番組にしていきますので(?)ときどき覗きにきて下さい。
なお、患者さんの治療について原価を計算することの是非論は、病院を生産工場、患者さんを製品になぞらえているのではないかという疑念に基づいて議論されることがありますが、超ナンセンスです。

あくまでも医療の治療を的確かつ無駄なく合理的に行いながら、しかし、医療保険が破綻しようとしているなかで、できるだけ医療の質を高めて効率を向上させ、不必要な医療行為をなくし、的確な医療をしていこうという前提にたっての議論であるべきです。

実際、どんぶり経営をしている病院はかならず経済的に淘汰され、破綻し、結局ながく地域に医療を提供することができません。意味がありません。良い医療を行なう良い経営を確立し、ながく地域医療に貢献する病院をつくりあげていくこそ、いまの医療制度を維持し、どのような経済環境においても医療の基盤を崩さない、といった結果を得ることができます。

多くのすぐれた病院は、病院原価計算の導入に着手しています。
医療行為の質と、行動の結果をモニタリングするための病院管理会計のための一部として患者さんの治療原価を計算しなければなりません。

その方法を概説していきます。