少し前に日本海沿いに二両で走るディーゼルカーで移動していたときに、減速した車両のなかから撮った日本海の写真です。
よくよくみてみるときれいな景色です。夏が近づいた今、こんなところで海風を頬に感じながら、ながれていく時間に身をゆだねたいと思ったりします。
海岸のそばの草原に横たわり、頭のうしろで手を重ねて枕にすると、地球が自分のものになった気持になることができます。
カモメのなきごえと、鼓膜に触れてくりかえされる波の音を聞きながら、そっと目を閉じると瞳がオレンジ色に温まります。
鼻腔からながれこんで肺を満たした、青く澄んだ空気がそのまま体とまざると、体がふわりと少し浮いたような気がします。
海岸近くでそうしていると、自分がそこに存在しているのかいないのかわからなくなり、いつしか意識が消えて、透明になることがよくありました。
たいていは、そのあと真っ赤になった体をもてあまし、パウダーやほてりを抑えるローションのお世話になることがいつもでしたが…。
輪郭のしっかりした油絵のような風景にふれて、遠い昔、学生だったころ、遊びに行った、そんな夏の日のことをほんの少し思い出したりしたのでした。