よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

背中はその人を伝える

f:id:itomoji2002:20210409215822j:plain

f:id:itomoji2002:20210409215342j:plain

よく、背中をみて育て、と言われます。

 

背中を見て育つ、といわれても正面を向いてコミュニケーションをとっていないのに、なぜそれができるのかということを考えます。背中というのは、その人そのものの行動を意味していて、いつも背景から何かをみるのではないということなんですね。

 

ある人が、意思をもって行動している。信念をもって、情熱をもって成果をあげていることすべてをみて、コミュニケーションをとらなくても、何かを感じ、自らを振り返り、自分もそうなりたいと願う結果として、その人から多くを学び、成長して育つ、ということなのでしょう。

 

しかし、背中は背中で、その人の思いを伝えるものであるということが最近分かってきました。その人の精神は、かたちとして背中に現れるという仮説です。

 

例えば、何か自信がないことがあれば背中を丸め、うなだれるし、また自信があれば胸をはった帰結として背中はまっすぐ伸び、そして顔は少し上を向き加減で歩いている様が背後からも感じられると思います。

 

また、何か怪しい気持ちがあれば、それは背中全体が動き、揺れ、心に迷いがあれば、また気持ちが身体に現れるということです。

 

ある空港で、前を行くスチュワーデス(アテンダント)の背中をみていました。彼女たちは歩幅を大きく、そして談笑しながらも活気をもって、ゲートに向かっていました。

 

これから搭乗し、多くの顧客の世話をしながら到着地まで私たちが誇りをもって彼らを守ります、という気持ちが身体全体を支配しています。背中からみても、それは十分に伝わってきました。我々乗客は、パイロットやアテンダントが自信をもって行動してくれると安心できます。

 

意識が姿勢に現れるのは彼らだけではありません。思いや意識を持ち行動すればそれは他に伝わることを学びました。

 

先日事務所から銀座を通っての帰り道、怪しい人物が、ビルの陰に隠れながら様子をうかがっているのを発見しました。よく見るとブロンズのキューピット。

 

靖国通り沿いの時計屋のビルで、いつもこうして、何かを待っている姿を見ることができます。

 

何か、ずるがしこいことを考えているのか、または誰かを驚かせようとしているのか、はたまた、愛のキューピットとして矢を誰かの胸に射ようとしているのか。背中をみれば、何を考えているのか何となく想像できます。ほのぼのしていますね。

 

ここでも背中の大切さが、あらためて解りました。常に背中を見られていることを意識し恥ずかしくない、誰から見られても、自信をもって自らが行っていることを誇れる自分になる必要がある、と再度気付くことができました。

 

自らを律することはなかなか難しいことですが、折に触れて自分を振り返る機会があることはとても幸せです。

 

ところで、組織において従業員は上司の背中を見ながら育ちます。

 

無意識のうちに上司がリーダーとしてどのような振る舞いをしているのか、どんなリーダーシップをとっているのかを見ながら自分の行動に反映させています。

 

部下が育つには、自らの経験7に対し、上司からの指導2、研修1の比率での機会提供が必要と言われています。経験の機会を提供するのも上司の役割とすれば、上司のリーダーシップがいかに重要なものか判ります。

 

上司は率先垂範し成果を挙げるとともに、部下の環境整備を行わなければならない理由がここにあります。

 

背中を見せる機会は数多くありますね。

 

リーダーは、背中を見せても恥ずかしくないように、行動しなければなりません。

 

世界を動かすリーダーは何を学び、どう考え何をしてきたのか(Dマイケル・リンゼイ著)には、アップルのスティーブジョブスの行動が紹介されています。

 

「ジョブスのようなリーダーは組織のストーリーを語らない。ジョブスの人生そのものが組織のストーリーになるのだ。優れたリーダーは、言葉で表現するのではなく、自分自身で表現するのだ。

 

企業や業界、そして社会に大きな変化を生み出そうとする強い熱意をもつリーダーは、言葉だけではなく行動や習慣を使って周囲の人間や組織の人々のやる気を引き出す」として、リーダーの行動、背中の重要性を説いています。

 

リーダーのみならず、部下も上司や仲間が見ていることを意識すれば日々の的確に行動し、いつ背中を見られてもよいようにしておく必要がありそうです。

 

日頃からの鍛錬が求められます。

 

私も常に前を向き顎をあげ足元に気を配り、でも少し未来を見つめながら、また明日も一日歩いていきたいと思います。