よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

レポートの作成について

 病院の企画室には、さまざまなレポートを作成する機会があります。
 
 毎月の予算実績比較についてのレポートや診療内容についてのレポートがそれらの一部です。予算実績比較についていえば、現状どのようになっているのか、原因は何か、そして対策はどのようなものか、といった3つの視点から報告書を作成する必要があります。
 
 多くの病院で現状を記載して、大まかな原因、そして雑駁な対策を記載して終わりというレポートが散見されます。
今月の〇〇はこのようになっていました。これは××の原因です。これに対しては〇〇を行う必要があります。
といったものがそれです。これは一見、外形的にはレポートの条件を満たしているようにはみえますが、行動につながる深みをもっていません。すなわち、掘り下げがたりないため、各部署や職場で行動に結び付けることができないものとなっています。
 
 今月の〇〇はこのようになっていますした。という部分についても、現状を一面的にしか伝えなければ事実すら伝わりません。たとえば稼働率を病院として出すのと、病棟別に出す、といったことだけでもずいぶんと見え方が異なりますし、外来は患者数が減少しました、ということについても、診療科別に推移や予算比を出すことにより、どこの診療科がどれだけ減少したのか、また、場合によれば増加している診療科と減少している診療科のネットで減少している。それを発表しているということもありえます。これはあまりにもシンプルで、そんなことは当院はしていないということなのかもしれませんが、よくみているとそのようなことは多数あります。
 
 もっとも懸念するのは収益で比較をしてしまうことです。DPCでも同様ですが、ベンチマークを収益ベースで行ったとしても病院ごとに費用が異なるのですから、必然的に同じ収益をあげていても利益は異なります。もっといえば患者別利益を出すとして、稼働率が異なるだけで、利益は固定費の配賦を通じて影響を受けるし、また間接費についても、無駄な消費をしている部署は当然患者さんの利益は影響を受けます。同じ配置をしていたとしても、人件費は病棟別に異なるので、どの病棟に入院したのかによっても、患者さんの利益は影響を受けるといったこともあります。少し詳細に入りすぎたのでやめますが、いずれにしても多面的にみなければ正しい表現は、できないということです。
 
 そして原因です。現状の把握が詳細になればなるほど、原因の数も増加します。できるだけたくさんの原因が分析されることのほうが、おおまかな原因であるよりも解決の糸口が見つかりやすいのはいうまでもありません。詳細な単位で現状把握、その結果原因分析も詳細に実施できる。ということになります。
 
 原因分析がうまくできたとしても次は対策立案です。ここが一番難しい。どうすれば現状を脱却できるのかということについていえば、間違いなく原因が特定できることだけではなく、考える者のスキルや創造性がkeyとなります。柔軟な発想で、従来行ったことのないことであったとしても、果敢に挑戦し、トライしてみることが必要です。もちろん、ここではベンチマークも有効です。いずれにしても対策が具体的であり、行動に落とせるものであることが必要であり、そのためには現場が何をすることができるのか、何ができていないのかについても一定の情報をもって、対策を立案することがよいと考えています。
 
 待つ医療から出向く医療。単に営業活動を行うということではなく、予防にしても講演会にしても、論文発表にしても、地域イベントや地域ボランティアにしても、産業医にしても、校医にしても、介護事業にしても、多角化にしても、ありとあらゆるかたちをもって外にでていくことが求められている今、あらゆる対策をとり、地域浸透を図りつつ地域に貢献することこそが、多くの地域住民や患者さんに評価されることの対策につながるとも考えています。もちろん、医療の質を常に向上させるための院内改革や教育を行うことはいうまでもありません。
 
 レポートの作成、そして行動につながるよう、対応していただくことを期待しています。